クラシコの緊張感を高める都市間の亀裂=マドリーが再認識したバルサへの対抗策

興味深い内容となったクラシコ

バランの台頭は、騒音が目立つようになってきたクラシコの中で、明るい話題となった 【Real Madrid via Getty Images】

 フットボールの観点から言えば、先週のクラシコには興味深い点がいくつもあった。マドリーはこの試合で、高い位置から厳しくプレスをかけて相手を窒息させる守備、そしてまだまだ改善の余地はあるものの、ボールをしっかりつないだ上で仕掛ける攻撃こそがバルセロナ戦で良い結果を得るための最善の方法だということを再認識したはずだ。

 バルセロナについては、こうしたマドリーの対策に苦しむ姿を見るたび、常に「プランB」を用意しておく必要性を実感させられる。近年バルセロナは毎シーズンのようにメッシへの依存度を高めてきた。それは彼が量産する恐ろしいまでのゴール数を考えれば理解できることなのだが、一方でフットボールには“偽センターFW”1人のみを使ってプレーしなければならない新ルールなど存在しない。

 もしメッシがうまく抑え込まれてしまった際には、ほかに攻撃をフィニッシュできる選手(=ダビド・ビジャ)が必要になる。だが、ニューヨークで病気の治療に専念するティト・ビラノバ監督に代わってチームを指揮しているジョルディ・ロウラ第二監督は、誰もがビジャの必要性を感じたタイミングでアレクシス・サンチェスの投入を決断した。それは現在のアレクシスのコンディションや精神状況を考えれば、間違った選択だったと言わざるを得ない。

 バルセロナは多くのゴールチャンスを作りながら、先制点を決めたセスク・ファブレガスも、長い距離を走った末にディエゴ・ロペスとの1対1を決め損ねたペドロも、それらを効率的にゴールに変えることができなかった。一方で多くのスペースを与えられたマドリーは、バルセロナより短いポゼッションの中でもそのパワーとスピードを生かし、ベンゼマやクリスティアーノ・ロナウドが信じられないシュートミスを犯したものの、数度の決定機を作り出している。

マドリーの未来を保障するバラン

 この試合で見られたもう1つの特筆すべき点は、ラファエル・バランの台頭だ。その才能はこれまでも垣間見ることはできていたが、この試合で彼は強く、速く、高く、そしてうまいセンターバックとして、マドリーの未来を保障する存在であることを証明してみせた。

 第2戦が行われる2月26日には、両チームがどのような状態でこの一戦に挑むかが今以上にはっきりしていることだろう。特に、すでにリーガ・エスパニョーラ優勝の可能性を失っているマドリーは、2月13日にサンティアゴ・ベルナベウで行われる、UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグ(CL)のマンチェスター・ユナイテッド戦の結果により、どのような姿勢でカンプノウでの決戦に臨むかが変わってくる。もしホームの第1戦で勝利を逃し、CLで勝ち進むことが難しい状況になっていたとしたら、彼らは今季残された最後のタイトルとしてスペイン国王杯獲得に全精力を注ぐことになるはずだ。

 ゆえにスペイン国王杯の準決勝の第2戦では、両チームに決勝進出への扉が開かれている。あとは加熱し続けるマドリーとバルセロナの対立がもたらす余計な騒音に惑わされず、彼らがプレーに専念してくれることを願うだけだ。

<了>

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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