クラシコの緊張感を高める都市間の亀裂=マドリーが再認識したバルサへの対抗策

都市間の対立を深めた1戦

マドリードのメディアによって唾を吐きつけたと報道されたメッシ。メディアによる対立も激化している 【Photo:Getty Images】

 多くの人々が議論し、警告を発してきた問題が今、確かな実感を伴う現実となり始めている。レアル・マドリーとバルセロナは、何十年も前からスポーツの枠組みを超える対立関係を築いてきた。それが今、カタルーニャとマドリーの間に存在する深い亀裂の1つに加わり始めているのだ。

「マドリー対バルセロナが行われるたびに耳に入ってくるのは悲しくなることばかりだ。罵声は増す一方だし、両者の対戦にフットボール以外の問題を絡める傾向も強まっている」

 マドリーの元ゼネラルディレクターであり、フットボールとその周辺の出来事を注意深く観察しているホルヘ・バルダーノ氏は、この点について以前から警鐘を鳴らしてきた。

 彼の言う通り、両チームが素晴らしい激戦を繰り広げた1月30日のスペイン国王杯の準決勝の第1戦後、マドリーのメディアでは、リオネル・メッシがマドリーのベンチへ向けて唾を吐きつけたように見えるテレビ映像の検証が行われた。そして、バルセロナのスポーツ2紙ではメッシのほおをたたいて挑発したシャビ・アロンソとアルバロ・アルベロアについて「腹立たしく、うんざりさせる行為」との批判が目に付いた。またダニエウ・アウベスはスタンドから受けた人種差別的暴言をツイッター上で訴え、自身のふくらはぎを踏みつけたクリスティアーノ・ロナウドに警告を出さなかったレフェリーの不当な判定への不満を口にしていた。

フットボール世界を超えた緊張感

 マドリーとバルセロナの間で高まるこうした緊張感は、フットボールの世界だけに見られるものではない。徴収した税金からすれば不当に低い額しかカタルーニャに還元しないマリアーノ・ラホイ首相率いるスペイン政府に対し、カタルーニャ州知事のアルトゥル・マスはスペインからの独立を2014年にも実現すべく歩みを進めている。そして双方のメディアは、敵対する地域で起こっている不正行為をいつまでもたたき合っている。

 このような対立の構図はマドリー、バルセロナそれぞれの番記者が3時間にわたって激論を交わす『プント・ペロタ』や『フトボレーロス』といったテレビの討論番組でも見て取ることができる。

 こうした緊張感に包まれる中で行われた1月30日のクラシコにて、両チームは素晴らしい攻防を繰り広げた。1−1のドローという結果は両者に決勝進出の可能性を残したものの、2月26日に行われる第2戦ではホームで戦うバルセロナが有利な立場にあると言える。この試合ではスタンドを埋め尽くす地元ファンがカンプノウを圧力釜のような空間へと変えることだろう。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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