黄金のボールがメッシのものとなった日=史上初の偉業を達成した要因は“底なしの貪欲さ”

心理学的にも珍しいメンタリティ

史上初となる4年連続のバロンドールを受賞したメッシ。そのボールはメッシのもとにあることを喜んでいるように見える 【写真:AP/アフロ】

 1月7日にスイスのチューリヒで行われたFIFA(国際サッカー連盟)バロンドールの受賞式に立ち会う幸運を得たわれわれは、リオネル・メッシが世界最高の選手と認めるだけでなく、彼が4年連続でバロンドールを受賞するという偉業まで人々が当然のごとく受け入れている様子を見て取ることができた。

 まだ25歳と若い彼がミシェル・プラティニやヨハン・クライフ、マルコ・ファンバステンといったそうそうたるクラックをあっさりと超えてしまった決定的な要因は何なのか。それはもちろん、その輝かしいプレー、そして毎シーズン残してきた衝撃的な数字の数々である。

 メッシは単に恐るべき選手であるだけでなく、自分自身との内なる戦いにおいても他のライバルと競うのと同様の高いモチベーションを維持できるアスリートだ。それは心理学的な観点から見て、非常に珍しいメンタリティである。

「フットボール史に残る時代を生きた」

 自分の能力の限界がどこにあるのか。それを知るため、メッシは過去に自身が打ち立ててきた記録の数々をさらに塗り替えるという孤独な挑戦を続けている。彼の記録を破る選手が新たに現れるまでには、きっと長い歳月を要することだろう。なぜなら、記録自体の難しさに加え、今やヨーロッパのフットボール界では多くの強豪チームと厳しい試合を多数こなさなければならないからだ。

 チームメートのハビエル・マスチェラーノが先日言った通り、もはやメッシは生きる伝説と化した。うそのようなプレーをあっさりと実現してしまうボール扱いの天才と共に、自分たちはフットボール史に残る輝かしい時代を生きた。歳月が流れるにつれ、われわれはそのことを理解していくことになるのだろう。

 だが、それだけではない。メッシは常に競い、プレーし、挑戦し続けなければ気がすまない野心を持つ、メンタル面でも非の打ちどころのないアスリートである。他に類を見ない底なしの貪欲さは、たとえ格段にレベルの劣る相手との対戦であっても衰えることがない。

決して休むことがなかった1年半

 先週木曜に行われたコパデルレイ5回戦の第2レグにて、メッシが今季初めて90分間ベンチに座り続ける姿を目撃した。カンプノウのファンは繰り返し彼の登場を求めていたものの、ジョルディ・ロウラ第2監督は彼を起用する必要はないと判断したようだった。
 アウエーの第1レグを2−0と制していたバルセロナは、2部所属のコルドバをホームに迎えたこの試合で、サブ組を多数起用したメンバー構成ながら5−0と大勝した。

 バルセロナほど多くの試合をこなし、かつハイレベルな選手を多数擁するチームであれば、このような状況下で主力選手を温存するのは当然のことである。

 にもかかわらず、メッシはそれまで1年半にもわたって招集された試合では一度も休むことなく、あらゆる公式戦でプレーし続けてきた。その事実は、彼の飽くなき野心を象徴していると言えよう。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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