“脱・柏原”にこだわって敗れた東洋大=駒大OB・神屋氏が箱根駅伝を解説
盤石のレース運びで30年ぶりの総合優勝を果たした日体大。前回大会の敗戦から心づくりをしてつかんだ勝利だった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
スポーツナビでは駒大OBで箱根駅伝に4年連続(1999〜2002年)出場し、現在は武蔵野学院大学陸上競技部監督を務める神屋伸行氏に今大会を総括してもらった。
6区・鈴木が日体大優勝への自信をつけた
勝因は、やはり日本体育大学の心づくりだと思います。走っている姿を見ていて、どっしりと構えていて、自信みたいなものを感じました。後ろから来てもラスト勝負で勝てるぞという雰囲気もありましたし、堂々と走れていました。
レースが始まる前にある程度勝負は決まっている部分がありますが、優勝候補に挙がっていた東洋大、駒大とも、それほど力が離れていなかったと思いますし、往路で良い流れをつかめたこと、6区の、復路の出足のところで鈴木(悠介)くんが東洋大の市川(孝徳)くんに追いつかれなかったことで、「僕らは総合優勝できるのではないか」といった優勝への自信がでてきたように思います。
今回の日本体育大学を象徴したのが6区の鈴木くんの走りだと思います。追われる立場で、後ろが前回区間賞で下りの実績が高い市川くんということで、正直どれだけ(タイムを)詰められるかなと思っていたのですが、前半少し抑え気味だったのですが、下りに入り思い切って走っていたので、詰められるどころか差を広げていました。勝負どころの6区でしたし、チームにとって非常に大きな要因になったと思います。
駅伝の面白さと怖さが両方出た今大会
負けの連鎖で、力を出し切れなかった東洋大。“脱・柏原”を意識した区間配置も影響か!? 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
その結果、6区の市川くんは力んだ走りとなり、その後の区間も追い上げるどころか最後に離されるというような負けの連鎖で、力を出し切れませんでした。
駒大、早大、明大、青山学院大もスタートラインに立つ前に欠場者を出したり、選手たちが不安に思う要素があり、この結果の前兆を見ることができました。小さなミスの積み重ねによって、前とのタイム差が広がるような形になり、選手ひとりひとりの負担が大きくなって、遅れる区間が出てきてしまったのではないでしょうか。本来走るべき選手がしっかりそろっているかどうか、気持ちの面で優位に立てるかどうかということは非常に大きいです。
上位にくるチームは当たり前のことを当たり前にして、厳しく練習してきているチームだと思いますが、最終的に勝てるチームというのは現代の駅伝においてはミスをしないということが1点。もう1点が1、2区で予想よりも良い雰囲気で上々ムードが出てきた方が力を発揮しやすいような気がします。
最近は力が拮抗した戦国駅伝ですので、持ちタイムよりも、確実に流れをつかんで主導権を握ったチームと、つかめなかったチームとの差がはっきり出るのかなと思います。小さなミスが悪い方に悪い方にいく、駅伝の面白さと怖さが両方出た今大会だったと思います。
<了>
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