“脱・柏原”にこだわって敗れた東洋大=駒大OB・神屋氏が箱根駅伝を解説

構成:スポーツナビ

盤石のレース運びで30年ぶりの総合優勝を果たした日体大。前回大会の敗戦から心づくりをしてつかんだ勝利だった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 第89回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の復路が3日、箱根・芦ノ湖から東京・大手町の読売新聞東京本社新社屋(建設中)前までの5区間、109.9キロのコースで行われ、日本体育大が11時間13分26秒で30年ぶり10回目の総合優勝を飾った。予選会出場校の総合優勝は史上2校目の快挙となった。

 スポーツナビでは駒大OBで箱根駅伝に4年連続(1999〜2002年)出場し、現在は武蔵野学院大学陸上競技部監督を務める神屋伸行氏に今大会を総括してもらった。

6区・鈴木が日体大優勝への自信をつけた

 日本体育大学は安定したレース運び、自分たちの距離に合わせた区間配置、レースができて、優勝するチームはこういうレース運びをするよなというレースをしていたと思います。

 勝因は、やはり日本体育大学の心づくりだと思います。走っている姿を見ていて、どっしりと構えていて、自信みたいなものを感じました。後ろから来てもラスト勝負で勝てるぞという雰囲気もありましたし、堂々と走れていました。
 レースが始まる前にある程度勝負は決まっている部分がありますが、優勝候補に挙がっていた東洋大、駒大とも、それほど力が離れていなかったと思いますし、往路で良い流れをつかめたこと、6区の、復路の出足のところで鈴木(悠介)くんが東洋大の市川(孝徳)くんに追いつかれなかったことで、「僕らは総合優勝できるのではないか」といった優勝への自信がでてきたように思います。

 今回の日本体育大学を象徴したのが6区の鈴木くんの走りだと思います。追われる立場で、後ろが前回区間賞で下りの実績が高い市川くんということで、正直どれだけ(タイムを)詰められるかなと思っていたのですが、前半少し抑え気味だったのですが、下りに入り思い切って走っていたので、詰められるどころか差を広げていました。勝負どころの6区でしたし、チームにとって非常に大きな要因になったと思います。

駅伝の面白さと怖さが両方出た今大会

負けの連鎖で、力を出し切れなかった東洋大。“脱・柏原”を意識した区間配置も影響か!? 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 優勝候補と言われた東洋大、駒大、早大はどこもレベルの高いチームだったのは間違いないと思いますが、例えば東洋大でしたら出雲駅伝や全日本大学駅伝で取りこぼすような負けレースをしたりしていて、“脱・柏原”にこだわりすぎていたように思います。今回で言うと、往路に偏重した区間配置だったとも思います。
 その結果、6区の市川くんは力んだ走りとなり、その後の区間も追い上げるどころか最後に離されるというような負けの連鎖で、力を出し切れませんでした。

 駒大、早大、明大、青山学院大もスタートラインに立つ前に欠場者を出したり、選手たちが不安に思う要素があり、この結果の前兆を見ることができました。小さなミスの積み重ねによって、前とのタイム差が広がるような形になり、選手ひとりひとりの負担が大きくなって、遅れる区間が出てきてしまったのではないでしょうか。本来走るべき選手がしっかりそろっているかどうか、気持ちの面で優位に立てるかどうかということは非常に大きいです。

 上位にくるチームは当たり前のことを当たり前にして、厳しく練習してきているチームだと思いますが、最終的に勝てるチームというのは現代の駅伝においてはミスをしないということが1点。もう1点が1、2区で予想よりも良い雰囲気で上々ムードが出てきた方が力を発揮しやすいような気がします。

 最近は力が拮抗した戦国駅伝ですので、持ちタイムよりも、確実に流れをつかんで主導権を握ったチームと、つかめなかったチームとの差がはっきり出るのかなと思います。小さなミスが悪い方に悪い方にいく、駅伝の面白さと怖さが両方出た今大会だったと思います。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント