イチロー、ヤンキースとの再契約に至った4つの条件=“ニューヨーク物語”延長の裏側

杉浦大介

2年、年棒総額約11億円でヤンキースと再契約

ヤンキースと2年、総額1300万ドルで再契約したイチロー 【Getty Images】

 当初は期間限定と思われたヤンキースとイチローの“ニューヨーク物語”は、好評につき、その上映期間が延長されることになった――。
 現地12月19日、今オフにFAとなったイチローのヤンキースとの再契約が正式発表された。2年契約で、年俸総額は1300万ドル(約10億9400万円)と見られる。

 この期に及んで、再契約に驚きの声が上がったわけではない。7月23日にヤンキースにトレードされて以降、イチローは67試合で打率3割2分2厘、14盗塁と予想以上の好成績。プレーオフのアメリカン・リーグ優勝決定シリーズでもチーム最高の打率3割5分3厘(17打数6安打)を残すなど、大活躍を果たした。そのユニークなプレーに魅了された地元ファンの間でも、残留を望む声が高まっていた。

 イチロー本人も、シーズン中から「理想的な環境」「ここでしか味わえないものは確実に存在する」といったようなヤンキース愛を感じさせるコメントを連発。フロント内には再契約に前向きではない人間もいると噂されたが、最終的には互いの利害が一致した上で残留決定となったのだろう。

選手獲得競争に影を落としたヤンキースのチーム事情

 今オフのヤンキースは、黒田博樹、アンディ・ペティット、マリアノ・リベラ、ケビン・ユーキリス(左でん部手術で来季前半戦絶望のアレックス・ロドリゲスの代役)のベテラン4人にすべて1年契約で合計5200万ドルをつぎ込んできた。その一方で、短くない期間このチームを見てきたものには信じ難いことだが、けん伝された“長期契約を避ける方向性”は本当の様子である。

 ぜいたく税を避けるべく、オーナーサイドは2014年までに総年俸を1億8900万ドル以下に収めたい方針。必然的に複数年契約には消極的になり、おかげで残留に前向きと伝えられたラッセル・マーティンをパイレーツ(2年1700万ドル)にさらわれ、今のヤンキースにフィットする選手だった便利屋のジェフ・ケッピンジャー(3年1200万ドルでホワイトソックスへ)の獲得も失敗した。
 もちろん交渉が成立しなかった理由は金銭面だけではないのだろう。しかし、ヤンキースが選手獲得競争でパイレーツ、ホワイトソックスといったチームに遅れをとるといった事態はかつての“悪の帝国”には考えられないことだった。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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