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岩倉三恵、失望を経て叶えた海外移籍
スペイン女子サッカー界で活躍する日本人

スペインで新たな挑戦をスタートさせた日本人

アトレティコ・マドリー・フェミーナスでプレーする元浦和レッズ・レディースの岩倉三恵(右)
アトレティコ・マドリー・フェミーナスでプレーする元浦和レッズ・レディースの岩倉三恵(右)【芳川美里】

 スペインの首都、マドリー郊外の街マハダオンダにあるアトレティコ・マドリーの練習場。盆地特有の肌に突き刺すような寒さが冬の到来を告げる中、闘将シメオネ監督率いるチームがリーガ、欧州での成功をつかむために汗を流している。その地で一人の日本人女子選手がアトレティコ・マドリー・フェミーナスの選手として新たな挑戦をスタートさせた。


「海外でのプレーを考えたのは3年ぐらい前ですかね。同じチームに所属していた安藤梢選手(女子ブンデスリーガ・デュイスブルク所属)がドイツに移籍した時、自分も海外でプレーするチャンスがあれば挑戦したいって考えました」と寒さで自然と白い息がこぼれる練習場で、人懐っこい笑顔を見せて元浦和レッズ・レディースの岩倉三恵は語った。


 一部報道に出たように、岩倉は今年3月、バルセロナの入団テストを受けていた。結果はアトレティコでプレーをしていることを考えると失敗となるのだろう。とはいえ、練習初日を終えた時点で日本人選手のプレーを見たバルセロナ監督のシャビ・ジョレンスは「技術もあるし、頭もいい。セスクやイニエスタのように2列目からの飛び出しをチームでやってほしい」と岩倉に伝え、日本人選手を加えたチームのイメージを描いていた。


 獲得の合否はクラブとのチーム編成を話す必要があることから、5月まで待ってほしいと告げられた。テスト期間終了後もバルセロナでの練習参加を認めたようにシャビ・ジョレンスは日本人選手の実力を高く評価していた。だが、現場の意向だけで補強が決まらないのは男子も女子も同じ。しかも男子と違い、経済的に厳しいチーム運営が行われている女子では、天下のバルセロナでも外国人選手を補強することは決して簡単に決断できるものではなかった。そして6月、岩倉にクラブは答えを出す。「来季に関しては大きな補強をせず今季のメンバーを中心に戦っていく。獲得は断念する」。

現実になった海外でのプレー

 3月、エスパニョールへの練習参加を検討していた岩倉に「ほかのチームに行く必要はない。うちで練習参加すればいい」とシャビ・ジョレンスに言われたこともあり、入団できるという思いは岩倉の中で日ごとに確信に近いものになっていた。だが、待っていた現実は獲得断念という厳しい宣告。海外での挑戦を決めた時から覚悟していたことだが、期待が高かっただけに失望も大きかった。


 岩倉はプレーするチームがなくなった。古巣・浦和から復帰の声もかけられたが、海外でプレーをするという思いを断ち切ることはできない。シーズン開始まで後1カ月を切った8月、最後のチャンスと知人の紹介からアトレティコ・マドリー・フェミーナスの扉をたたく。


 1週間のトライアル。だが、アトレティコのディレクター、マリア・バルガスは「チームが必要なのは守備の選手」と守備的なポジションで問題ないのであればテストすると岩倉に伝える。適性とは違うポジションでのプレーを告げられたが、「今は入ることが大事。入ればきっと前でプレーさせてくれるはず」と岩倉はボランチとしてのテストを受け入れた。


 おそろいの練習着のチームメートの中、一人、自前の練習着でプレーをする日本人。アトレティコはU−19スペイン代表に多くの選手を輩出している若く荒削りなチームだ。ボールを持てばゴールしか目指さないダイレクトなサッカーをするチームメートに対し、岩倉は攻撃ではタメを作り、守備では事前にスペースに入り、相手のチャンスをつぶすなど、バランスを考えてプレーした。テスト終了後、岩倉はチームメートからアトレティコの練習着を受け取る。それはテスト合格を伝えるものであり、念願の海外でのプレーが現実のものになった瞬間だった。

芳川美里

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