フットボーラーズ・フットボーラー=シリーズ東京ヴェルディ(終) ひとつの時代が終わり、次のサイクルへ

海江田哲朗

3度首位に立ちながら昇格を果たせず

今季限りでチームを去る土屋。多くの選手が畏敬の念を抱くプレーヤーだった 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 あらためて書く必要はないかもしれないが、一応けじめとして前回から現在に至るまでの事のあらましを書いておこう。11月4日、第41節の横浜FC戦、東京ヴェルディ(以下、東京V)は0−1で敗れ、昇格プレーオフ出場の可能性が消滅。最終節のザスパ草津戦は1‐0で勝利し、7位でシーズンを終えた。天皇杯は3回戦で敗退しており、これにて今季の全日程が終了した。

 感情が焦点を結ぶまでに時間がかかった。こんなあっさり味の終わり方をまったく想定していなかったせいだ。そもそも開幕前にスポーツナビ編集部と年間スケジュールを打ち合わせした際、自動昇格か昇格プレーオフの2択しか用意していなかった。当時は、シーズン終盤の切羽詰まった状況でどのようなスペシャル企画を提案しようか頭の中がいっぱいだった。夏場、急激に成績が下降し、不穏な気配が漂ってきたけれど、最悪でも6位内は確保するだろうと。3度、首位に立ったのだ。それなりに実力がともなっていなければできることではない。だが、すべては過信だった。のんきに構えすぎていた。

 昇格プレーオフの激闘を指をくわえて眺め、J1の優勝争いや残留争いをほぼ趣味みたいな気分で観戦した。週末が訪れるごとに気分がそわそわし、その度に「あ、ヴェルディの試合はもう終わったんだった」と気づいた。Jリーグの日程を作成する担当者には謹んで申し上げたい。プレーオフ新設で日程調整がややこしくなっているのかもしれないが、もうちょっと全体が終了する時期との間隔を詰めたほうがいいのではなかろうか。約1カ月も先んじてオフに突入するのは、あまりに早すぎる。

思いが結実せず、去っていく選手たち

 12月2日、全体練習の締めくくりに、クリスマスサッカー教室と15分ハーフの緑白戦(一般的には紅白戦)が行われた。今季を最後にチームを去る選手とサポーターの間に場を設けるのが主な目的である。東京Vにおいて、こういった試みは画期的だ。ぜひ毎年恒例の行事となってほしい。数年前までサポーターの要望や非難を子どもの泣き声程度にしか思っていなかったクラブの貴重な変化だ。

 土屋征夫、土肥洋一、佐伯直哉など、これまで屋台骨を支えてきたベテランが契約を満了し、東京Vを離れることになった。そして、中谷勇介、木島良輔、吉弘充志、アレックス、秋葉勇志、新井章太、竹中公基、ジミー・フランサといった選手たちも。それぞれの思いが結実することなく、流れ去っていく。限られた時間で目的を達せられなかったチームの定めだ。緑白戦のあと、土屋はサポーターのもとに歩み寄り、思いを伝えていた。

「サポーターには『ありがとう』のひと言。技術のない自分のような選手が38歳の今までサッカーを続けてこられたのはヴェルディに入ったおかげ。そのヴェルディをこれからもみんなで応援してほしい。自分にはサッカーしかないからプレーを続ける。どのチームに行くか分からないけど、遠くから見守ってほしい。そんなところですね。おれは気持ちで動くタイプだから、自分を求めてくれるものが大きければ、そのチームに行くと思う」

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著者プロフィール

1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディを中心に、日本サッカーの現在を追う。主な寄稿先に『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『Soccer KOZO』のほか、東京ローカルのサッカー情報を伝える『東京偉蹴』など。著書に、東京ヴェルディの育成組織にフォーカスしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)がある。

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