大山加奈が教える、女子Vリーグのここが面白い!!=2012-13シーズン展望<女子編>

構成:田中夕子

東レの対抗は全日本の選手がそろう久光製薬

王者・東レのライバルとなりうるのが久光製薬。全日本メンバーを多くそろえ、狩野のセッター転向などもあり、話題に事欠かさない 【スポーツナビ】

 連覇を狙う東レにとって、最大のライバルとなりそうなのが久光製薬スプリングスです。新鍋理沙や、石田瑞穂、平井香菜子、岩坂名奈など代表組の選手がそろうなかに、狩野舞子がセッターとして復帰しました。リベロの座安琴希を中心にしたレセプションの安定感はVリーグの中でもトップクラスであるだけでなく、攻守両面にバランスのとれた石井優希や、東九州龍谷高で数々のタイトルを獲得したサウスポーの長岡望悠など、次世代の代表候補として楽しみな選手ばかりです。

 そして、高い能力を持った選手が集まっているチームを、今季から率いるのが中田久美監督です。テレビの解説をされていた久美さんとは、何度もお仕事をさせていただきました。最初は「話しづらい人かもしれない」と思っていたのですが、実際の久美さんはとても話しやすい、優しい先輩でした。どんな時も細かなことを気に懸けていただき、わたしも何度も救われたことがあるので、久光の選手たちにとっても「監督」というよりも、頼れる優しい先輩として支えになるはずです。

 戦力が充実しているだけに、早い段階でチームが完成されれば、今季の久光製薬は他チームにとっては本当に怖い存在となることでしょう。

 昨季から若手を中心としたメンバーで経験を重ねた結果、チームとしての力が充実してきたデンソーエアリービーズやパイオニアレッドウィングスに対し、JTマーヴェラス、トヨタ車体クインシーズ、NECレッドロケッツの3チームはベテランやチームの中心として活躍してきた選手が抜け、新たなチームとして今シーズンを迎えることになりました。
 
 特に大きな「変化」が生じるのは、長年にわたり司令塔としてチームをけん引してきた竹下佳江が抜けたJTです。リーグを迎えるたび、各チームの中で戦力変動はあり、新しい挑戦を掲げてシーズンに臨むことになる。とはいえ、やはりセッターが変わるのは大きいものです。代わって入るセッターだけでなく、攻撃をする選手も、レシーブをする選手も、チーム全体が変化を求められるシーズンです。
 
 ましてや竹下は、日本のセッターの中でも一番といっていいほど、絶対的に崩れないセッターでした。アタッカーにとっては「テンさん(竹下)が何とかしてくれる」と安心感を与えられていた分、今シーズンは不安もあると思います。しかし、その分「何とかしなきゃ」と成長するはずです。大友愛や、吉澤知恵、谷口雅美などベテラン選手もそろっていますので、チームをまとめる柱として、変化するチームを束ねてくれるのではないでしょうか。

メグが加わった岡山をカナも応援

かつて大山加奈とともに「メグカナ」コンビと呼ばれたメグこと栗原は岡山に加入。カナも応援し続けている特別な存在だ 【スポーツナビ】

 個人的に注目していて、とても楽しみなのが、栗原恵が加入した岡山シーガルズです。 ミスが少ない堅実なバレーで、相手のブロックやレシーバーの位置をよく見ながら絶妙なタッチやフェイントで得点するシーガルズ。とにかく全員がうまいので、わたしが現役だったころから「ここに大砲と呼べるアタッカーが入ったら強いだろうな」とずっと思っていました。今季、そこにメグが加入して長年の課題が払しょくされるかもしれないと思うと、楽しみという以外の言葉が見つかりません。どんなバレーになるのか、想像するだけでワクワクします。

 一緒にプレーしてきた選手には、それぞれ思い入れがありますが、やはり、わたしにとってメグは特別な存在です。わたしは現役を離れましたが、今も現役としてバレーを続けているメグを心から応援したいし、頑張ってほしい。ずっと苦しんでいた分、新天地では思う存分バレーを楽しんでほしいし、実際にサマーリーグではとても楽しそうにプレーしていたと聞きました。新しい挑戦に踏み出したメグの姿、そしてメグが加わった新しいシーガルズを早く見たいです。

 昨季は各チームが3回総当たりの「3レグ」制でしたが、今季は同じチームと4回対戦する「4レグ」となり、4月のファイナルラウンドまで約5カ月にも及ぶ長い戦いが繰り広げられます。

 戦い続ける体力を維持することはもちろんですが、長いリーグの中にはいい時も、悪い時もある。どんな時でも折れない心を持ち続けるために、精神面のコンディションも整えなければなりません。

 どの試合もすべてが大切な試合であることは間違いないのですが、精神面に余裕を持たせるためにも、最初のポイントはいかに開幕ダッシュができるか。特に監督や主力となるメンバーが変わったチームにとっては、開幕戦で勝つことはもちろん、開幕から連勝して、いいスタートダッシュを切ることが自信につながるはずです。
 
 わたしが現役時代にも、開幕からなかなか勝てず、「何かがおかしいけど、どうしたらいいんだろう」と答えがわからないまま戦い続けた結果、8位になった年がありました。おそらく昨シーズン、勝てそうな試合を勝てず、終盤になってようやく1勝目を挙げたNECの選手たちも同じような経験をしたのではないでしょうか。
 
 たかが1試合、と侮れないのが開幕戦。各チームの戦い方はもちろんですが、リオデジャネイロ五輪に向けたスタートの年でもある今シーズン、次世代の、未来の全日本で活躍する選手は誰か。新戦力にも注目して、開幕戦からファイナルラウンド、さらには4月に仙台で開催される日韓トップマッチまで、バレーボールを大いに楽しんで下さい!

<了>

大山加奈

終始笑顔でVリーグについて語ってくれた大山加奈さん 【スポーツナビ】

 1984年6月19日生、東京都江戸川区出身。小学校2年の時に地元のクラブでバレーボールを始め、小中高で全国制覇。特に成徳学園高3年時には春高バレー、インターハイ、国体の3冠を達成した。
 その年に初めて全日本に選出されると、同じく高校生でメンバーに選出されていた栗原恵(現:岡山シーガルズ)とともに「メグカナ」コンビとして人気を博す。高校卒業後は東レに入社。ワールドカップ、アテネ五輪に出場する。2007年ごろから椎間板ヘルニアなどのケガに苦しみ、10年に26歳で現役を引退。日本バレーボール機構への出向を経て、現在は東レに広報担当として勤務するほか、バレーの指導、普及活動にも携わっている。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

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