常識を覆す超人、ソニー ビル・ウィリアムズ=ラグビー界のスーパースターがトップリーグを熱くする

構成:ぴあ

ラグビーとボクシングと

3つの顔を持つラグビー界のスーパースター、ソニー ビル・ウィリアムズ(SBW)。現在はトップリーグのパナソニックで活躍する 【スエイシナオヨシ】

 その男は3つの顔を持つ。若くして13人制のラグビーリーグのスーパースターに上り詰め、15人制のラグビーユニオンでは世界一のインサイドセンター(CTB)と称され、プロボクシングのリングではニュージーランドヘビー級チャンピオンに君臨する。“SBW”ことソニー ビル・ウィリアムズは、スポーツ界の常識を覆す存在である。

 競技の枠を超えた活躍と言えば、サッカー元日本代表で現在、フットサルワールドカップ(W杯)を戦う三浦知良を思い浮かべる人も多いだろう。だが、SBWが驚異的なのは、キャリアハイのただ中にいること。年齢は27歳。ニュージーランド代表オールブラックスの一員として昨年のW杯で優勝し、今季南半球の国際リーグ戦・スーパーラグビーでも頂点に立った。

 ウインドウマンス(各国代表のテストマッチ期間)の11月24日(土)には、元IBF世界ヘビー級王者(のちに剥奪)フランソワ・ボタとのボクシングマッチが予定されていたが、負傷による手術のため試合は来年2月に持ち越された。今はパナソニック ワイルドナイツのCTBとして12月1日(土)のトップリーグ再開を待つ。トップリーグのシーズン終了後には5年ぶりにラグビーリーグに復帰する。ラグビーユニオンのスーパースターの座に安泰しようとはせずに、挑戦をやめようとしないこのバイタリティーはまさしく超人的だが、当の本人にその自覚はない。

「先のことを見てしまうと、いろんなことがありとても困難に見えてしまう。私は今に集中している。今できること、今やらせてもらっていること、今すべきことに集中して、日々を過ごしています。3つのスポーツを並べると、1つを選んでしまいがちだが、私はその時できることにチャレンジしたいと思っている。私にとって、13人制も15人制もボクシングもチャレンジです。今を過ごしながら、前に進んでいくことを楽しんでいる。だから自分のことをスーパーマンなんて思ったことはないですね」

トップリーグではパナソニックで活躍

“今”を生きるSBWの頭は、トップリーグのことで占められている。SBWは前半戦を5勝3敗の5位で終えたパナソニックの光明と課題について語った。
「チームとして少しずつ向上しています。パナソニックはアタックが非常にいいチームなので、どのチームが相手でもスコアできるチームだと思う。ただ、試合の中でバランスが良くなかった点があったのも事実。例えば、エリアを取るためにキックすべき局面や、ボールを持ったまま継続すべき局面で、たまに間違った選択をしてしまうことがあった。チームの課題は、正しい時に正しいプレーを正しく行うこと。そうすれば、勝てます。あと、最終的にはディフェンスがいいチームが勝利すると思っているので、ディフェンスも向上させていかないといけない」

 来日前と今、日本ラグビーに対する認識は変わった。
「トップリーグはスキルレベルが非常に高いことに驚きました。ニュージーランドにいた時は、そんなに詳しく日本のラグビーを知ることはなかった。トップリーグでは私が予想していたよりもかなりレベルの高いラグビーを展開しています。うちのスクラムハーフがスーパーラグビーに挑戦できるようになりましたが、そういった選手がこれからたくさん出てくると思う」

 スーパーラグビーのハイランダーズ入りが発表されたチームメート・田中史朗へ、スーパーラグビーで頂点に立った先輩としてアドバイスを求めると、SBWは「彼がパナソニックに帰ってきて私を助けてくれることがあれば、その時私も彼を助けるつもりだ(笑)」とジョークで切り返す。

オフロードパスの第一人者

オフロードパスはSBWの持ち味。SBWに影響されてか、今季のトップリーグではオフロードパスが増えている 【(C)2012 JRFU】

 今季のトップリーグでちょっとした変化が見られるようになった。明らかにオフロードパスが増えたのだ。各チームともオールブラックスのスーパースターを意識した結果と言えるが、オフロードの第一人者は否定する。
「確かにいろんな選手がオフロードパスを出しています。でも、それは彼らにとって使えるスキルだから、オフロードパスを使っているにすぎない。オフロードパスと言えば、SBWとイメージされるラグビーファンも多いでしょうが、私としてはみんなが持っているスキルだと思っている」

 謙虚である。さらに、オフロードパスは「チームのサポートがあって初めて成立する」と続ける。
「まずゲインラインを切ること、ラインブレークすることが先決です。ラインブレークし、その後にスペースを生かすためにオフロードパスを出す。どれだけ相手を引きつけて、周りを生かすかを意識している。オフロードが機能するには、チームメートのサポートがなくてはならない。幸いパナソニックには私がオフロードを出そうとしている気配を感じてくれる選手がたくさんいます。多くのサポートを受けていることをうれしく思う」

 オフロードパスは「本能のパス」だとも語る。
「オフロードはラグビーリーグ時代から体に染み込んだスキル。オフロードパスはこだわって出しているわけではなく、本能的なものです」

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