『刃牙』作者が岡見vs.アンデウソン王座戦に斬り込む=UFC特別対談
グラップラー刃牙シリーズの作者・板垣恵介氏が、UFCファイター岡見勇信のトレーニングを見て、存分に語り勝った 【(c)MMAPLANET】
ここでは『グラップラー刃牙』シリーズで格闘技ファンの間でも高い人気を誇る漫画家・板垣恵介氏と、アジア人最強UFCファイターの岡見勇信のスペシャル対談を4回に渡り、お届けします。
刃牙シリーズを通して、最強を求め続けてきた板垣氏とUFCで最強を目指す岡見、他で聞くことができない深いUFC談義、第2回は前回に引き続き減量から、2度に渡るアンデウソン・シウバについて話が盛り上がった。
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板垣「早くに試合が決まるっていうのは素晴らしいこと」
有りがちな互いを持ち上げる対談でなく、板垣氏がズバズバと岡見の心の内に響く言葉を投げかけ、本音トークは熱を増していった 【(c)MMAPLANET】
板垣 試合の近くって、どれぐらいの前の時期を指すのですか?
岡見 2カ月前くらいから落して、スタミナを上げていっています。
板垣 体重を落とし始めると、快適ではなくなってしまう?
岡見 不自由は感じないですね。試合モードに入っているので。
板垣 でも、2カ月って長いなァ。
岡見 UFCは4カ月ぐらい前に試合が決まっているので、3カ月前ぐらいからキャンプに入りますから、長いといえば長いですね。
板垣 でも、素晴らしいことだよ。そうやって早くに試合が決まるっていうのは。日本の興行で問題になっていたところだもんね。そこまですると、本当に競技化するよね。それなのに選手は、ケガしちゃうんだね。
岡見 最近、急に増えましたよね。きっと今、UFCのレギュラーって多くて年間3試合じゃないですか。1試合の重みがすごいことになってきて、キャンプも長いし、そういうこともあってケガが多くなっているのではないかと。特に組み技の練習のときにケガをしてしまうケースじゃないでしょうか。
板垣 打撃よりも?
岡見 打撃の練習では、ほぼケガはしないですね。打撃だけの練習で、関節とかを傷めることはまずないので。組み技は、ヒザや腰、首、そういうところのケガが増えてきます。僕自身、ヒザのケガをして欠場したことがありますし。あの時も自分から組みついていって、床が柔かすぎてヒザを捻ってじん帯をやってしまって。やっぱり足下とか、いろいろと注意しないといけないですね。
板垣 以前、大関の千代大海(当時)の朝稽古を見せてもらったときに、土俵がコンクリートみたいに固くて驚いたんです。でも、「だからケガをしないんです。粘土のように柔らかいとケガが絶えない」って。
岡見 オクタゴンもそんなに柔らかくもないですし、元々人間は砂浜のような柔らかいところで生活をしてきたわけでもないですからね。そういう作りになっているんだと思います。
岡見「アンデウソンとは見ている景色が違っていた」
2006年1月20日、ハワイのROTRで組まれたアンデウソン×岡見01。2分33秒、禁止技の蹴り上げで岡見の反則勝ちとなっている一戦だが、ローを受けながら岡見は「これま不味いな」と感じていた…… 【(c)MMAPLANET】
板垣 もちろん、見ていますよ。だから、今日はアンデウソンとの試合の話を聞きたいなって思って。
岡見 ハイ。
板垣 フォレスト・グリフィンとアンデウソン・シウバの試合を見た時に強いショックを受けたんです。僕は力道山の頃から見てきた人間だけど、プロ同士であんなに差があるって見たことがなかった。あそこまで漫画のようにあしらうことができるのかって。
で、その選手と戦うって聞いて、日本人がそんなことデキるモノなのかって思ったんですよ。
僕はハワイで戦った最初の試合って、見ていないんですけど、アンデウソンの強さっていうのは岡見選手が想像していたのと、違ってるモノなのですか? 開始直後に何か違うって思ったのか、しばらく経ってから『アレッ、違うな』って思ったのか。岡見選手のセコンド(※磯野元さん)の人が、アンデウソンを見た瞬間に失敗したと思ったって言っていましたよね。
岡見 言っていましたね。獣みたいでおっかなかったって言っていました。
板垣 アンデウソン・シウバって、もちろん人種は違うんだけど、野性味よりも知的なモノを感じていたんですよ。それが獣のようだったってセコンドの人が言っていた。それって岡見選手も、同じように感じたんだ。
岡見 いわゆる猪木−アリ状態で、自分が寝転がっている猪木の状態だった時に、アンデウソンがピョンピョン跳びながら蹴ってきたんです。その時の彼の風貌を見ている時に、初めて味わった感覚というか、『これは不味いな』って思ったんです。本当に同じ人間ではない。これまで戦って来た相手の誰とも違う。跳びながら、宙を舞いながら襲い掛かってくる獣のように見えました。
あの姿が脳裏に焼き付いていて、UFCで再戦するときには、その覚悟はあったんです。自分が前に出て……。とにかく出ないといけないって。
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岡見 で、そこにカウンターをもらいました。ジャブだったと思うんですけど、最初のダウンを喫しました。アレ、分からなかったんですよ。見えていなかった。
板垣 あれは何度も巻き戻して、確認しましたよ。でも、ガツンって当たったんじゃなくて、『エッ、自分から倒れた?』って思ってしまうようなパンチで。アゴだった?
岡見 アゴだったと思います、あの感触は。もらった時は、分からなかったんですけど、気付いたら尻もちを着いていました。後から振り返ると、アンデウソンは自分と見ている景色が違っていたんだろうなって思うんです。
僕は前に出ることしか考えていなかった。対して彼は全く違う景色を見えるようで、あしらうように僕の動きを観察していましたね。カウンターのジャブを出したんだと思います。そこからはもう、自分のなかで分からなくなって。最後も何をもらったか分からなかったです。
板垣 フックだったよね。
岡見 あとから見返すと、フックだったと思います。あの試合は精神的な部分では、アンデウソンの本当の怖さを感じる前に終わってしまったんですけど、そういう風になってしまう相手ってアンデウソンだけなんですよ。
(この項続く)
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