五輪の亡霊と戦い続けるブラジル=2年後のW杯に暗雲漂う

サッカー大国に縁遠い金メダル

ロンドン五輪決勝でメキシコに敗れ、がっくりとうなだれるネイマール 【Getty Images】

 国自体がサッカーそのものを意味し、最多5度のワールドカップ(W杯)とあらゆるユースカテゴリーのタイトルを獲得し、世界中のファンがそのプレーを堪能できる素晴らしい選手を多数生みだしてきたブラジルが、いまだに五輪で金メダルを獲ったことがないという事実は理解に苦しむ。

 1908年のロンドン五輪でサッカーが五輪の公式種目となって以来、ブラジルはこれまで23回もあったチャンスを一度も生かすことができていない。史上3度目となる英国の首都で行われた今回の五輪でも、カナリア軍団はロサンゼルスでフランスに敗れた84年大会、そして4年後のソウル大会でソビエト連邦に敗れて以来3度目となる決勝で涙をのんだ。

 新たに生まれ変わったウェンブリースタジアムでメキシコに喫した1−2の敗戦は、ブラジルにとって過去2回の決勝以上にショッキングなものだった。優勝候補の筆頭に挙げられていただけでなく、ライバルとなり得る他の強豪国が各大陸予選や1次リーグで軒並み敗退していたからだ。

 つまり自国開催で迎える2年後のW杯でも主力となるだろう強力なメンバーをそろえたブラジルは、今回初めてメダル争いのライバルであるスペインやウルグアイ、そして史上初めてイングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズの合同チームで挑んだホスト国英国(※実際はイングランド、ウェールズの合同チーム。スコットランド、北アイルランドからは選出されず)らと対戦することなく、金メダルを懸けた決勝にたどり着いたのである。ユーロ(欧州選手権)2012優勝メンバーと昨年のU−21欧州選手権優勝メンバーを組み合わせたチームで挑んだスペイン、経験豊富なオスカル・タバレス監督が率い、エディソン・カバーニやルイス・スアレスを擁したウルグアイは共に、驚くべきことに1次リーグを突破することすらできなかった。

 ブラジルが今回ほど五輪の準備に力を入れたことはこれまでほとんどなかった。五輪は南米予選から厳しく、常にブラジルは2度の優勝経験を持つアルゼンチンとウルグアイをはじめ、00年シドニー大会銅メダルのチリ、04年アテネ大会銀メダルのパラグアイらとわずか2つの出場枠を争ってきた。

 その予選で優勝した今回は才能豊かな選手を多数擁し、また十分な準備期間もあったことで今まで以上にチャンスがあると期待されていた。その期待は本大会が進み、ライバル国の多くが敗退していくにつれて大きくなっていった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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