注目はボルトvs.ブレークvs.ゲイら夢の対決だけじゃない!=記録で見る陸上競技展望

K Ken 中村

連覇に挑む選手たち

3連覇を目指す棒高跳びのエレーナ・イシンバエワ 【Getty Images】

 8月3日から五輪の華と言われる陸上競技が始まる。今回、日本でメダルが見込める選手は数少ないが、日本選手が決勝に進出していなくても、見どころは数多くある。男子100メートルでのボルトvs.ブレークvs.ゲイらによる夢の対決もその1つだが、ここでは視点を変えて、記録的観点からロンドン五輪の陸上競技の注目点をいくつか挙げたい。

 五輪で優勝するだけでも難しいのに、ましてや2連覇、3連覇となると至難の業だ。今大会では競泳のマイケル・フェルプス(米国)が2日の200メートル個人メドレーで金メダルを獲得し、競泳男子の個人種目で初となる3連覇を達成した。だが、北島康介(日本コカ・コーラ)は今大会、100メートルと200メートルの平泳ぎでメダルに届かず、3連覇を逃しており、その難しさがうかがえる。

 今回、陸上競技で3連覇に挑戦する女子選手は200メートルのベロニカ・キャンベル・ブラウン(ジャマイカ)と棒高跳びのエレーナ・イシンバエワ(ロシア)の2人。男子では、1万メートルのケネニサ・ベケレ(エチオピア)とやり投げのアンドレアス・トーキルドセン(ノルウェー)の2人がいる。

 特筆すべきは、男子ではカール・ルイスが走り幅跳びで、アル・オーター(米国)が円盤投げで4連覇を成し遂げていることだ。3連覇した選手には、やり投げのヤン・ゼレズニー(チェコ)、三段跳びのビクトル・サネイエフ(旧ソ連)、そして50キロ競歩のロバート・コルゼニォウスキ(ポーランド)らがいるが、女子は五輪で3連勝を成し遂げた選手はいまだにいない。今回のロンドン大会で3連覇に挑戦する4人、なかでも女子の2人に注目したい。

五輪でのタイトル奪回

 初の五輪での金メダル獲得から8年後に、タイトルを奪回した選手は連覇以上に珍しい。女子では1万メートルで1992年に五輪で初優勝したデラルツ・ツル(エチオピア)が2000年のシドニー大会でも優勝している。男子400メートルハードルでは、00年に第一レーンから優勝をもぎ取ったアンジェロ・テイラー(米国)がその8年後の北京大会でタイトルを奪回した。

 テイラーは今回もメダル候補で、もし勝てば400メートルハードルで神様と言われたエドウィン・モーゼス(米国)も達成できなかった3個目の金メダルを獲得することになる。もっとも、モーゼスは全盛期に80年のモスクワ大会ボイコットにより、確実と言われた金メダルが取れなかった。

 ロンドン大会では、04年アテネ五輪で優勝した110メートルハードルの劉翔(中国)、100メートルのガトリン(米国)、円盤投げのウィルギリウス・アレクナ(リトアニア)、そして室伏広治(ミズノ)がメダル候補に名を連ねており、タイトル奪回のチャンスがある。

 一方、個人の連勝ではないが、男子3000メートル障害でケニアが、そして男子400メートルで米国が、国として現在五輪7連勝中だ。3000メートル障害のケニアの連勝は堅く、メダル独占も夢ではない。
 しかし、400メートルでは米国のエースであるメリットが五輪前最後のレースを途中棄権し、体調に不安が残る。しかも、昨年の世界チャンピオンのキラニー・ジェームス(グレナダ)、双子のボーリー兄弟(ベルギー)ら強敵が多い。特に、昨年の世界選手権で3位、5位に入り、5000メートルのカストロ兄弟以来となる世界選手権での双子ダブル入賞を果したボーリー兄弟には五輪でもダブル入賞の期待がかかる。

世界ジュニア、ユースの王者の五輪金メダルへの挑戦

 一方、17歳以下の世界選手権である世界ユース選手権、そして19歳以下の世界選手権である世界ジュニア選手権で優勝し、その後、五輪でも優勝した選手は少ない。特に世界ユース選手権と五輪の両大会で優勝した選手は極めて少ないと言える。

 今回は、世界ユース選手権で過去に金メダルを獲得したベロニカ・キャンベル・ブラウンが女子100メートルで、タチアナ・チェルノワ(ロシア)が女子七種競技で、アンナ・チチェロワ(ロシア)が女子走り高跳びで、サリー・ピアソン(旧姓:マクレラン=豪州)が女子100メートルハードルで、キラニー・ジェームスが男子400メートルで、そしてジェイソン・リチャードソン(米国)が男子110メートルハードルで金メダルに挑戦する。優勝すれば、これらの種目で五輪を制した、初めての世界ユース選手権の金メダリストとなる。

 キャンベルは99年世界ユース選手権、00年世界ジュニアの両大会で100メートルを制しているが、五輪では04年の3位が最高である。しかし、10年と12年には世界室内選手権60メートルを制しているため、100メートルで勝っても不思議ではない。彼女にストップをかけるのは、女子100メートルで(タイアス、ディバーズに続く)3人目の五輪連覇に挑むシェリー・アン・フレーザー・プライス(ジャマイカ)、と米国のカーメリタ・ジェッターだろうか?

1/2ページ

著者プロフィール

三重県生まれ。カリフォルニア大学大学院物理学部博士課程修了。ATFS(世界陸上競技統計者協会)会員。IAAF(国際陸上競技連盟)出版物、Osaka2007、「陸上競技マガジン」「月刊陸上競技」などの媒体において日英両語で精力的な執筆活動の傍ら「Track and Field News」「Athletics International」「Running Stats」など欧米雑誌の通信員も務める。06年世界クロカン福岡大会報道部を経て、07年大阪世界陸上プレス・チーフ代理を務める。15回の世界陸上、8回の欧州選手権などメジャー大会に神出鬼没。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント