上村団長「選手は自分の力を出し切ってほしい」=日本代表選手団団長インタビュー

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記念すべき大会でプレッシャーも

柔道代表勢には「勢いを付けてもらいたい」と期待を込めた 【スポーツナビ】

――金メダル17個で日本の金メダル獲得数が通算140個に届きます。

 現在、夏季五輪で123個の金メダルを取っています。これは11競技で取っているのですね。柔道で35、体操で28、レスリング24、水泳20、陸上7、バレーボール3、ウェイトリフティング2、そして馬術、ボクシング、射撃、ソフトボールで1つずつです。

 そしてこの123個は世界で12位です。上位10位の中にヨーロッパ以外で入っているのが929個でトップの米国と、163個の中国です。

 トップ10に迫るためにも、今回140個を超えなければとは思っています。目標は15個ですので、選手が力を出し切ることで、そこに届くと思います。

――メダル以外の部分では、どういう部分をアピールしていきたいですか?

 まずは選手たちが自分の力を出し切ることが一番だと思います。ベストパフォーマンスで自己新を出し、最後まであきらめないで戦う姿、最後まで勝利にこだわる姿勢が、皆様に元気や感動をお送りすることができると思います。

 そして、それができれば結果はついてくると思います。五輪に出る以上は選手たちに自分の持っている力を出して、メダルを取ってほしいし、表彰台の一番高いところに上がってほしいです。そのためにここまで苦労して、頑張って努力をして、いろいろ考えてやってきたわけですので、最終的には勝って、メダルを取ってほしいと思っています。

 それが一番選手たちにとっても大事なことだと思いますし、力を出し切れずに諦めてしまうことは非常に残念なことです。万全な準備をして、大舞台で自分の力を最大限に出し切る姿が、人々に元気を与えるものだと思います。

――大選手団を率いる団長として、プレッシャーはありますか?

 100年前の団長はどなたか知っていますか? 柔道の創始者である嘉納治五郎師範です。アジア初のIOC委員で、日本体育協会の前身である大日本体育協会初代会長を務め、講道館をつくられた方です。1912年のストックホルム五輪で団長を務め、100年後の今回、何かのご縁だとは思いますが、奇しくも柔道出身の私が団長に選ばれたということは大変光栄なことです。そして、それ以上にとてもプレッシャーを感じて、緊張もしております。

 選手にはプレッシャーを楽しむものだとはよく言っていますし、試合の時に緊張しないような試合はしてはいけないです。大一番で試合をするときには誰だって緊張するものです。緊張しなかったらいい試合はできないし、いい戦いはできないと思います。もちろん、“過”緊張になってはいけないですね。その緊張感をコントロールすることは「心」の問題で、自信の問題です。しかしその中でも、やはり最後は「切る」ということがキーワードになると思います。やり切る、戦い切る、攻め切る、力を出し切る。そして試合を勝ち切ってほしい。それが世界での戦いだと思います。私自身も悔いないように、いろいろ考えてやっているつもりです。それにしてもあっという間に本番が迫り、時間の早さを実感しています。

――松岡修造応援団長の「1億2500万人の大応援団」など、新たな取り組みも行われています。

 今回のチームジャパンをオールジャパンで応援していただけることは非常に大きな力になると思います。大変うれしいことです。応援していただける輪が広がり、街を歩いているときに「頑張って」と言われると、緊張もしますが、とてもやる気が出るものです。そしてそれに応えるためにも、力を出し切るということがすべてです。

――最後に、今大会の日本柔道についてはどう見ていますか?

 男女14階級で優勝候補もいれば、現実的に厳しい階級もあります。女子は全員を優勝候補に挙げることができるチームづくりができました。男子も力を出し切りさえすれば、メダルに届かないという選手は一人もいません。そういう意味ではすべての階級で力を出し切れば、結果がついてくる選手たちだと思っています。もちろん組み合って、たった1メートルで勝負するわけですので、その時のちょっとした弱気、ちゅうちょする気持ちが負けにつながりかねないです。勝負と思ったその一瞬に懸けるような思い切りの良さを持ってやってほしい。無謀なことと、思い切りは違いますから。思い切りの良さは自信の裏付けがあってのものです。

 男子7選手のうち4選手(海老沼匡=パーク24、中矢力=ALSOK、穴井隆将=天理大職、上川大樹=京葉ガス)は世界チャンピオン経験者ですし、他の選手たちもランキング上位の選手で、世界選手権のメダル経験者もほとんどなので、力を出し切ってもらうだけです。私が現役だった時代より、はるかにいいものを持った選手たちなので、それを出し切れるかどうかだけの問題です。

 日本の金メダルの数は柔道の結果に大きく左右されます。他競技の選手に勢いを付けるためにも、先陣として頑張ってもらいたいと思っています。

(取材日:6月25日)

<了>

※注:01年にJOCが「国際競技力向上と維持のためのシステムづくり」、「競技間連携の促進」、「オリンピック・ムーブメントの推進」を掲げてJOCゴールドプランを策定。04年のアテネ五輪後にJOCゴールドプランステージ2として「金メダル獲得数での世界トップ3を目指す」、冬季大会では「メダル総数での世界トップ5を目指す」ことを目標に揚げた。

■上村春樹
1951年2月14日、熊本県小川町(現・宇城市)生まれ。柔道家(九段)。75年の柔道世界選手権無差別級で優勝。76年のモントリオール五輪では無差別級で金メダルを獲得。引退後は88年のソウル五輪、92年のバルセロナ五輪で柔道チームの監督、2008年の北京五輪では日本代表選手団総監督を務めた。11年9月にロンドン五輪の日本代表選手団団長に就任。講道館館長、全日本柔道連盟会長も務めている。

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