上村団長「選手は自分の力を出し切ってほしい」=日本代表選手団団長インタビュー

スポーツナビ

「勝負の瞬間に最高のパフォーマンスを」

ロンドン五輪での金メダル獲得目標は15個 【スポーツナビ】

――ここまでの強化の手応えはいかがでしょう?

 北京五輪の後、各競技団体に強化プランを出してもらいました。世界5位を目標として、それを達成するために、各競技団体の立ち位置はどこにあるのか、現在の戦力は世界のどのくらいなのかを一回しっかりと検証し、目標を立て、その目標を達成するためには、どういうことをやっていかなければならないかを具体的に明示していただきました。

 そしてお互いにヒアリングしながら、皆さんと議論し、17のターゲット競技を選びました。強化予算は限りがありますので、申し訳ない部分もあるのですが、ある程度、選択と集中をする必要がありました。それゆえ、ターゲット競技を選び、強化をしてきたわけですね。毎年いろいろな大会を見ながら、仮想五輪という形で、今年五輪があったら日本はいくつ金メダルを取っただろうかと検証しながら、目標を達成したかどうかを確認しながらやってまいりました。

 昨年時点で10個から12個ぐらいの金メダルを目指せるかな、というところまではきました。でもまだ目標には足りないですよね。そのためにはどうするかについては、3月に最終のヒアリングを済ませまして、その時に非常にいい感触を得たのですね。水泳でも世界のトップとほとんど変わらない、もしくはそれを上回るような記録を出していますし、それぞれの競技団体とも、かなり上振れするという感触を得ました。そこから私たちとしては何をしなければいけないかと言ったら、選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるための環境をつくることが大事なことだと思いました。

 自分の持っている力を出して、自己新を出すようなパフォーマンスができれば、結果は必ずついてくるはずです。対人競技でも自分たちの持っている力を出し切らなかったら、結果はついてきません。そのために選手団として、チームジャパンとして、ムードづくりや環境づくりをやっていかなければならないと思っています。

――5月ごろに18個〜20個の金メダルも可能とおっしゃいましたが、可能性はありますか?

 それはすべての選手たちが最大限に力を出し切ったら、それくらいの力がありますよということですね。みんな力を持っています。その力を100パーセント出したらそこに届くと。

 ただこれは、例えば柔道ではゴールデンスコアを入れても1選手トータルで20分位の競技時間なんですね、五輪の舞台では。4年間かけてきて、その20分に自分の力を出し切れるかどうかです。競技によっては10秒しかないかもしれない、そこにいかに集中するかということが重要ですから、その時に最高のパフォーマンスを発揮したら、それくらいに届く力はあると思います。

 日本人は欧米人と比べると対格差。体力差が残念ながらあります。しかし、そのなかで自分の何を武器としてとらえるかが重要です。日本人として几帳面さ、正確さ、勤勉さ、それらをうまく組み合わせて、技で力に対抗していかなければならないと思います。欧米人と同じ技しかできなかったら、欧米人が勝つでしょう。去年なでしこジャパンがワールドカップで優勝した時、あの体格差のなか、よける、ずらす、そらす、いなすなどをうまく使いこなしたことで勝利を勝ち取ったと思いました。ぶつかって負けるのだったら、ぶつからなければいいんですから。そこをどうやってうまく身につけていくかということも、技の一つです。

 身長差や対格差が負ける理由になるのでしたら、もうその競技はやらない方がいいですよ。でもそうじゃないですよね。自分の武器はなにかと考えるなかで、小さいことを武器にできるかどうか、相手にないものは何かと考えられるかどうか。大きい人は小さくなれないんですから。そこで小ささを武器だと思えたら、新たな展開ができるんです。確かに競技によっては体格の差は大きなハンデになることもあるかと思います。しかし、それでもそのことが勝負を決する絶対的な要素ではないと思います。

 よく「心技体」がそろわなかったら勝てないと言いますよね。そのなかで一番難しいのはなんでしょうか? それは「体」だと私はよく言っているんです。「体」だけは有限で、私がどれだけ頑張っても2メートルにはなれないんですね。しかし、その「体」を「技」でカバーすることができる。一番スポーツのなかでやさしいのは「技」ですよ。繰り返し練習の積み重ねで、できるようになるはずなんです。毎日1時間やる人と毎日5時間やる人では、必ず5時間練習する人が伸びるはずです。

 そうしたら「心」は別に表現すると、「自信」なんですね。練習では最悪のことを想定して、試合では自分を信じて単純に勝負を考えなさいといつも言っています。自信を持って試合に臨み、自信を持って相手に踏み出すのと、こわごわ踏み出すのとでは、勝負の瞬間では大きな差になって表れてきます。そこはすべて「心」の分野です。

 繰り返しになりますが、体力勝負で挑んだら、力のある人が勝つに決まっています。そこに自分の良さをどう組み合わせていくか。普段からいろいろ考えて、自分の弱みは何かを理解しないといけません。自分の弱みは強みに転化できるのです。そのためには普段の練習からなぜ? という疑問をもってやることが重要です。負けには必ず敗因があるんです。それをいかに潰していくか、これを普段からやっていれば試合には自信を持って臨むことができると思います。

 選手はみんな力を持っているので、その力を出し切ることができれば結果はついてきます。選手にはよく言うのですが、自分の力を出し切りさえすれば、結果がついてくるんだから、よろこんで試合に臨みなさいと。ただ勝つべき人が必ず勝つということもなかなか難しいもので、だからこそ調整をしっかりやることが求められると。そのために現地でのマルチサポートハウスも大きな支えの一つになるはずです。

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