山本真弘が二度目の世界挑戦「これがラストチャンス」=IT'S SHOWTIME

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7.21スペイン大会でIT'S SHOWTIME世界王座に挑戦する山本真弘 【t.SAKUMA】

 あの日を境に、山本真弘は酒を口にしなくなった。
「それまでは普段から結構お酒も飲んでいたけど、ほとんど飲まなくなりました。今は外食した時に口につける程度ですね」
 あの日2010年12月11日(現地時間)、ギリシャで行なわれたIT’S SHOWTIMEで山本は当時セルジオ・ヴィールセンが保持していた61kg級世界王座に挑戦した。
 結果は3RTKO負け。1Rにボディーへのヒザ蹴りで先制のダウンを奪われた挙げ句、3Rに再びヒザ蹴りで右目のまぶたを切り裂かれTKO負けを喫してしまったのだ。
 帰国直後、山本は筆者に語った。
「ヴィールセンは猛獣みたいだった」
 その印象はいまも変わっていない。しかし、いまは思う。勝者についてあれこれ語るより自分が全然ダメだったと。
「メンタル、練習量、生活面。なんで、あんな状態で世界王座に挑戦したいと思ったのか。よくあれで世界を獲るなんて大口を叩いていたものだと思いますね」

思い知らされた世界とのフィジカルの差

 アウェーで闘ってみて痛感したのは、同じ階級の選手とは思えないヴィールセンのフィジカル面の強さだった。
「2階級以上の差、僕からみたらスーパーライト級以上の選手とやっているような感覚でした。今までとは当たった時の感覚が全然違う。日本人相手だったら、当たった時にドーンと押していけるけど、ヴィールセンはガツンと当たってもそのまま止まってしまう感じなんですよ」
 IKUSA・U60トーナメント優勝、Kick Returnトーナメント優勝、Krushライト級グランプリ2009優勝。ヴィールセンの闘うまでの山本は国内で数多くの栄光をつかんだ。
 少なくとも60kg以下の契約体重で闘った時には、それでいいんだと思っていたと振り返る。
 しかし、ヴィールセンと闘って世界とのフィジカルの差を思い知ってからは、最低限相手の力を受け止めることができるだけのパワーを身につけようと心に決めた。
「それまで国内の60kg以下で闘っている時には技術だけでも良かったかもしれない。でも、海外の61kg級で闘う時には対抗できる最低限のパワーがあって、初めて自分の持ち味が活きることがわかったんですよ」
 山本は肉体改造を計るため、ケビン山崎氏が指導するトータルワークアウトに通い始めた。それから1年半、その効果は一目瞭然だ。
「自分ではわからないけど、久しぶりに会った人からは体つきが全然違うと言われます。フェザー級の時と比べ、力強さが増した。いまは61kg級がベスト。もうフェザー級で闘うことは考えられないですね」

無傷で勝とうなんて思っていたら絶対に勝てない

板橋との挑戦者決定戦を制した真弘は再び世界挑戦権をゲット 【t.SAKUMA】

 ヴィールセンに敗れてから1年7カ月、その後61キロkg級王座はヴィールセンからカリム・ベノーイに移動し、現在はハヴィエル・エルナンデスが王者だ。
 7月21日(現地時間)、山本はエルナンデスの地元であるスペイン・カナリア諸島のテネリフェ大会で61kg級王座に再挑戦する。挑戦者からの目から見て、王者は噛み合うタイプだ。
「今までの王者の中で一番いいんじゃないですかね。エルナンデスは前に出てきてくれるタイプなので。僕はムエタイみたいにカウンターを狙われると入りづらくなってしまい、変な試合になってしまうことが多いので」
 予想ではパワーはエルナンデスの方が上だが、そこで勝負しようとは思わない。
「自分の持ち味はスピードと切れ。パワーで押し負けなければ、展開は変わってくるでしょう。たぶん向こうは詰めていけば勝てると思っているんじゃないですかね。でも、中盤からエルナンデスの動きは弱まってくると思うので後半に勝負をかけたい」

 エルナンデス戦が決まるや、山本はよくイム・チビンとモッサブ・アムラーニの一戦を見ている。そう、昨年7月18日のIT’S SHOWTIME JAPANで行なわれ、イム・チビンが1Rにダウンを奪われながらも、その後モッサブの猛攻に耐えに耐え、最後は延長戦に持ち込んで判定勝ちを収めたタフな一戦だ。
 山本は、「たぶん最初は押されるでしょう」とエルナンデス戦の試合展開を読む。
「でも、単に相手の攻撃を避けるのではなく、避けながら返していき、徐々にあれ? と思わせながら最後はイム・チビンのような逆転勝利を収めたい」
 もっとも、それはあくまで理想論。今回のタイトルマッチの舞台はエルナンデスの地元。大なり小なりのホームタウンデシジョンがあることも覚悟している。
「普通に判定までいったら勝てないでしょう。最悪でもダウンを2〜3回は取らないと。頭の中では倒して勝つというパターンも用意しています」

 待ちに待ったタイトルマッチであるだけに、山本はこの一戦で完全燃焼してもいいという覚悟を持って臨む。
「無傷で勝とうなんて思っていたら、絶対に勝てない。とにかくどんな勝ち方だろうと、勝たないと意味はない。これがラストチャンスだと思って闘います」


<プロフィール>
山本真弘(YAMAMOTO MASAHIRO)
1983年5月14日生まれ(29歳)。
長崎県出身。身長165cm、体重67kg(通常時)。現在はIT’S SHOWTIMEルールで4連勝中。通算戦績53戦37勝(10KO)10敗6分。好物は日本そばとサムゲタン。

(テキスト:スポーツライター布施鋼治)

■IT’S SHOWTIME テネリフェ大会
7月21日(現地時間)スペイン・テネリフェ

<第6試合 70kg Max>
アンディ・サワー
ゼベン・ディアス

<第5試合 IT’S SHOWTIME 61kg 世界タイトルマッチ>
[王者]ハヴィエル・エルナンデス
[挑戦者]山本真弘

<第4試合 85kg Max>
マキシモ・スアレス
マーセル・グローエンハート

<第3試合 95kg Max>
セルゲイ・ラシュシェンコ
ローレン・ハヴィエル・ホルヘ 

<第2試合 85kg Max>
アミール・ゼヤダ
モイセス・ルイバル

<第1試合 70kg Max>
デビッド・カルボ
アンディ・リスティ

〜最強打撃格闘技〜 IT'S SHOWTIME59 2012・7・21 スペイン大会放送予定
7月22日(日) 05:55 〜 J SPORTS 3 生放送!!
7月22日(日) 21:00 〜 J SPORTS 2 再放送

布施鋼治J SPORTSコラム
http://www.jsports.co.jp/fighting/its_showtime/index.html

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