U−23日本代表メンバー選考に見られた2つの特徴=ロンドン五輪での戦い方に変化はあるのか

小澤一郎

気になる選手選考はあるが

OA枠で招集された吉田にはリーダーとしての役割も期待される 【Getty Images】

 U−23日本代表の関塚隆監督は2日、ロンドン五輪(男子サッカーは7月26日開幕)に臨むメンバー18名を発表した。冒頭に関塚監督は、「ピッチで選手たちが生き生きと躍動し、一体感のあるサッカーができる18名を今から発表したい」と前置きした上で、GKのポジションから1人ひとりメンバーを読み上げた。昨日から繰り返し報道されてはいるが、あらためてU−23日本代表のメンバー18名とバックアップメンバー4名は次の通り。

GK:権田修一(FC東京)、安藤駿介(川崎フロンターレ)

DF:徳永悠平(FC東京)、吉田麻也(VVV/オランダ)、山村和也(鹿島アントラーズ)、鈴木大輔(アルビレックス新潟)、酒井宏樹(ハノーファー96/ドイツ)、酒井高徳(シュツットガルト/ドイツ)

MF:清武弘嗣(ニュルンベルク/ドイツ)、村松大輔(清水エスパルス)、東慶悟(大宮アルディージャ)、山口螢(セレッソ大阪)、扇原貴宏(セレッソ大阪)、宇佐美貴史(ホッフェンハイム/ドイツ)

FW:永井謙佑(名古屋グランパス)、大津祐樹(メンヘングラッドバッハ/ドイツ)、齋藤学(横浜F・マリノス)、杉本健勇(東京ヴェルディ)

バックアップメンバー
GK:林彰洋(清水エスパルス)
DF:大岩一貴(ジェフユナイテッド千葉)
MF:米本拓司(FC東京)
FW:山崎亮平(ジュビロ磐田)

 ポジションごとの内訳は、GK2名、DF6名、MF6名、FW4名でバックアップも各ポジションに1名ずつ。アジア最終予選同様に基本システムが1−4−2−3−1であることを踏まえればFWは3枠でもよかったかもしれないが、永井、大津、齋藤はいずれもサイドハーフとしての起用もできる選手たちでありポジション別の人数配分は申し分ない。

 会見で関塚監督は、18名のメンバー選考の基準とポイントについてこう説明した。「現在のコンディション、パフォーマンス、こういったところが非常に大事になってくる。18名というメンバーは、本大会でいろいろなケースが想定される中で、チームとして機能するであろうメンバーを選考しています」。五輪が18名という絞られた登録メンバーの大会であり、関塚ジャパンの目指すサッカーの1つのキーワードが「流動性」である以上、選考における大きなポイントはさまざまな状況、相手、試合時間に応じて複数のポジションをこなせる選手だ。予備登録に入った35名はいずれもマルチタスクをこなせる顔ぶれではあったが、35名から18名への絞込みではそれがより鮮明となった印象を受ける。

 会見における質疑応答でも選考から漏れた選手の個人名を挙げて「今回外れた理由は?」という質問が出ていた。実際、アジア最終予選の主力メンバーとして戦ってきた選手、トゥーロン国際大会で光るプレーを見せた海外組の落選の理由は誰もが気になるところ。しかし、関塚監督の肩を持つわけではないのだが、18名のメンバーが決まった段階で周囲が落選の理由を聞き、監督が悠長にその理由を語ることは百害あって一利なしだと考える。代表チームの監督にとってメンバー選考は戦略や戦術の決定以上に重要な仕事であるのと同時に、「このメンバーで結果を残せなければ批判や責任を一手に引き受けます」という意思表示のようなもの。確かに気になる選手選考はあるが、ここでメンバーから外れた選手の落選の理由を探ることや、関塚監督に対して「なぜあの選手を選ばない」と不毛な議論をけしかけることはしない。

吉田を招集した意図

 さて、今回のメンバー18名の特徴は2つある。まずは、オーバーエイジ枠(以下、OA枠)の吉田麻也、徳永悠平の2選手が入ったディフェンスラインだ。関塚監督が「5月にトゥーロンを戦って、やはりディフェンスラインは補強が必要だろうと強く感じた」と説明した通り、同世代のトルコ、エジプトに敗れグループリーグ敗退を喫したトゥーロン国際大会が決定打となった。2日の会見に同席した原博実・技術委員長も「後ろの方がこの年代は弱い部分がありますので、そこに吉田、徳永の2人を入れて前の方はこの年代の選手たちが伸び伸びやってくれれば、良さが出るんじゃないか」とディフェンスラインのテコ入れについて感想を述べている。

 特に関塚監督が期待をかけるのが吉田麻也で、「吉田は前回の大会に出場しているし、年齢的にも近いということも含めて、後ろでしっかりとリーダーになってもらいたい」とコメントしている。酒井宏樹、酒井高徳の両サイドバックが海外組になったとはいえ、2次予選も含めたアジアでのアウエーゲームやトゥーロン国際の初戦トルコ戦など、U−23日本代表のウイークポイントは単純に守備、ディフェンスラインという表現ではなく、「押し込まれた時の対応」にあった。つまり、相手に押し込まれた状況、押し込まれた時間帯にディフェンスラインから苦し紛れのクリア、ロングキックが多く、せっかく奪ったボールを簡単に相手に渡してしまうため押し込まれた局面の打開ができない点だ。吉田に向けて関塚監督が「リーダーになってもらいたい」という言葉を発した裏には、そうした意図があると推測する。

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著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

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