経験の差が出た隣国対決=ポルトガル 0(2PK4)0 スペイン

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動いたスペインと動けなかったポルトガル

PK戦の末にポルトガルを下し、歓喜するスペインの選手たち 【Getty Images】

 後半に入ってもお互い攻め手を見いだせない停滞した状況が続く中、先に動いたのはスペインのビセンテ・デル・ボスケ監督だった。大方の予想を裏切り先発に抜てきしたものの不発に終わったアルバロ・ネグレドをあきらめ、結果を出しているセスクを「偽センターFW」に投入。さらに疲労の色濃いシルバ、シャビを下げて両ウイングにヘスス・ナバスとペドロ・ロドリゲスを入れ、前線のスピードを強化した。

 対照的に、90分を終えるまでベント監督の交代策がセンターFW1人の入れ替えのみにとどまったのは、選手たちがまだ走れると判断したからとも考えられるが、実際はスペインほどベンチに使える駒がなかったからではないか。

 こうしてポルトガルは、後半も半ばを過ぎると次第にファウルが増え、90分を終えるころには4人のDFとベローゾの5人が警告を受けるに至った。それでもスペインを枠内シュート1本、CK3本に抑え込んだことは十分に評価できる。90分にカウンターからゴール前左でメイレレスのパスを受けたC・ロナウドがビッグチャンスを生かしていれば、ポルトガルとしては完ぺきなシナリオだったはずだ。

 だが、この最初で最後のビッグチャンスを決められず、延長戦に突入した時点でポルトガル勝利の可能性は小さくなった。100分を迎えたあたりから、とうとう選手たちの足が止まってしまったからだ。

 逆にスペインはペドロ、イニエスタ、アルバの左サイドが立て続けにジョアン・ペレイラの裏をとり、あとは決めるだけという一方的な展開に持ち込んでいく。だが、結局フィニッシュの精度を欠き、120分の間に試合を決めることはできなかった。

経験の差が出たPK戦

 迎えたPK戦では、両者の精神力、経験の差がはっきりと出た。1人目のシャビ・アロンソがいきなり失敗したにもかかわらず、動揺のかけらも感じさせなかったGKイケル・カシージャスは直後にモウチーニョのキックを完全に読んでストップ。4人目のセルヒオ・ラモスはチャンピオンズリーグ準決勝バイエルン戦で失敗した影響もなく、先日イタリア代表のピルロが決めたばかりのチップキックを再現。そして、デル・ボスケ監督から2本目のキッカーに指名されたセスクは、前回大会の準々決勝イタリア戦と同じ5人目を任せてほしい進言し、見事に大役を果たした。

 対するポルトガルは、トップクラブでプレーするペペとルイス・ナニが冷静に決めた一方、これほどの大舞台はあまり経験したことがない2選手が失敗している。何より自身の順番を間違えてしまうほどナイーブになっていたブルーノ・アウベスのキックがわずかにズレたという結末は、すでに延長戦の時点で力尽きていたこのチームの限界を示していたように思えてならない。

<了>

文/工藤拓、提供/WOWOW

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