逆転優勝のアロンソが魅せた“引き出しの多さ”=F1 シューマッハ、復帰3年目で悲願の表彰台

吉田知弘

重要なポイントで的確に攻める

11番手からのスタートで大逆転優勝を果たしたアロンソ。母国でのうれしい勝利となった 【Getty Images】

 2012年F1世界選手権第8戦ヨーロッパGPは24日、スペインのバレンシア市街地サーキットで開催され、11番手スタートのフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が大逆転で今季2勝目を飾った。予選では0.004秒差でQ2敗退。母国レースで厳しいポジションからのスタートを余儀なくされたアロンソだったが、レースの要所となるポイントで効率よく順位を上げていった。

ポイント(1)スタート

 今季のフェラーリF2012は、ライバル勢と比べるとタイヤを長く持たせられる分、走行し始めた序盤はタイヤに熱が入らず、100パーセントのパフォーマンスを発揮しきれないことが多い。そのため、タイヤのパフォーマンスが大きく関わってこないスタート直後に着目した元チャンピオンは、レース中の走行ラインとなるコースのイン側からスタートという利点も生かし、1周目で順位を3つ上げ、8位でレースを進めていく。その後はニコ・ヒュルケンベルグ(フォースインディア)の背後から様子をうかがいながら周回を重ねていった。

ポイント(2)1回目のピットイン直前のラップタイム

 12周目にヒュルケンベルグをかわし、7位に浮上したアロンソ。ちょうど上位陣の1回目のタイヤ交換が始まるタイミングということもあり、一気に勝負をかける。ここでも“フェラーリマシンの特性”が役に立つことになった。

 ピットイン直前のラップタイムを比較してみると、ソフトタイヤの消耗が進んでいた小林可夢偉(ザウバー)は1分47秒904、キミ・ライコネン(ロータス)は1分47秒182で両者ともに14周目でタイヤ交換を行う。一方のアロンソは彼らより1周遅い15周目でタイヤ交換。タイヤの消耗を抑えられていた分、彼らより1周長く持たせられた上に直前のタイムも1分46秒435と速かった。

 これでアロンソがタイヤ交換を済ませてコースに戻ると、ライコネン、可夢偉をかわし5番手に浮上した。

ポイント(3)リスタート時のわずかなチャンス

 ポールポジションからスタートしたセバスチャン・ベッテル(レッドブル)の独走状態が続くレース中盤、再びアロンソにチャンスが訪れる。22周目にポール・ディ・レスタ(フォースインディア)をかわし4位に浮上。その後コース上に落ちたパーツの破片回収のために28周目にセーフティーカーが導入される。この間を利用して上位陣が一斉に2回目のタイヤ交換を済ませる。この時に同時にピットインしたルイス・ハミルトン(マクラーレン)が作業に手間取り、アロンソは3位でコース復帰を果たすことになった。

 そして34周目のリスタート。スタート同様に、新品タイヤの使い始めのペースが良くないだろうと予想していたアロンソは、すぐに勝負を仕掛けた。首位ベッテルの攻略で頭がいっぱいだったロメ・グロジャン(ロータス)のすきをつき、2位に浮上。残るは現王者のベッテルのみとなったが、なんとマシントラブルでリタイアし、トップ浮上を果たした。

 その後、追ってきたグロジャンもトラブルでリタイアするなど、後半はアロンソに流れが傾いたレース展開となり、そのまま通算29勝目のトップチェッカーを受けた。これでトータル111ポイントを獲得し、再びポイントランキングで首位に躍り出たアロンソ。以前は「スタートからトップに立って、後続の追撃を抑え込む」というレース展開を得意としていたが、今回は重要なポイントで的確に攻めて順位を上げていくという展開でトップを奪った。名手アロンソの“引き出しの多さ”が光ったレースだった。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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