逆転優勝のアロンソが魅せた“引き出しの多さ”=F1 シューマッハ、復帰3年目で悲願の表彰台

吉田知弘

スタッフに対する感謝の気持ちは、昔と変わらず

現役復帰後初の表彰台に上ったシューマッハ 【Getty Images】

 アロンソの母国優勝で地元スペインのファンが盛り上がる中で、もう1人の“ヒーロー”が誕生していた。3位に入ったミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)だ。通算91勝、ポールポジション68回、7度のチャンピオンと数々の歴代記録を持ち、フェラーリ在籍時代は“皇帝”と呼ばれるほど絶対王者としてF1界に君臨していた。2006年に一度現役引退を決意するが、2010年に再び現役復帰を決意する。

 しかし、いくら皇帝と言われていたシューマッハも、すでに40歳を迎えており、以前よりレベルが上がったF1で好結果を残すことは、そう簡単なことではなかった。

 この困難な状況をファンも理解しているものの、昔から比べるとふがいないレースが続くシューマッハに対し、気が付くと否定的な声が上がり始めていた。さらに後輩で僚友のニコ・ロズベルグが第3戦中国GPで初優勝。一方、不運なアクシデントに見舞われ、結果が残らない日々が続いていたシューマッハだったが、じっとチャンスが来るのを待ち続けた。

 今回、12番手からスタートしたシューマッハはミディアムタイヤを先に選択。前半は中団グループの中で我慢する展開だったが、ライバルたちがミディアムタイヤを履くレース終盤で、逆にソフトタイヤを選択。怒とうの追い上げで順位を上げていく。そして残り2周という段階でルイス・ハミルトン(マクラーレン)とパストール・マルドナード(ウィリアムズ)が接触。その直後にポール・ディ・レスタ(フォースインディア)を自らかわし、残り1周で3位に浮上。優勝したアロンソ同様に大逆転で、復帰後では初の表彰台に上った。

 パルクフェルメに帰ってきたシューマッハは、出迎えたメカニック1人ひとりとがっちり握手。「自分が好結果を残せた影には、日夜努力してくれたメカニックたちがいる」。彼のチームスタッフに対する感謝の気持ちは、昔と全く変わっていなかった。

<了>

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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