スペインが負けることは想像しがたい=奥寺康彦のユーロ準々決勝展望
得点量産の可能性を秘めるトーレス、フランス戦できっかけをつかむことができるか 【写真:AP/アフロ】
スペイン攻略法は素早い寄せを徹底してからのカウンター
イタリア戦のゼロトップが話題になっていたようだけど、バルサ中心のスタイルでやってきたチームだから特に驚きはなかった。それより個人的にはフェルナンド・トーレスが乗り切れてない、というのが気になった点かな。それでもデル・ボスケ監督が彼を使い続ける理由はメンタル的な部分をケアしてのこと。2戦目(vs.アイルランド)で結果(2得点)が出てトーレスもデル・ボスケも安心しただろう。大会が進むにつれてどんどん余裕はなくなっていくからね。
ただ、トーレス本人には、中盤にあれだけのパサーがそろっているんだから、もう少し自分で受ける工夫が必要かもしれない。それができてよりバルサ組にフィットすれば、一気に得点を量産する爆発力を秘めている。ユーロのような短期のトーナメントを制するには突然変異ともいえるスターの出現が伴うことがある。その大当たり男にもっとも近いのがトーレスか、マリオ・ゴメス(ドイツ)だろう。
王者スペインを優勝候補に推す声が多いのは僕も知っているし、反論はしないけれど、4年前のユーロ、2年前のW杯のような圧倒的な支配はおよばなくなっている。というのは、決してスペインのサッカーが衰えたわけではなく、やはり他国が研究し、彼らのサッカーに慣れてきた部分が大きいだろう。「何としても最優先にボールに寄せる」というような、イタリアやクロアチアがやったサッカーを徹底できれば、決して難攻不落ではないことが証明されつつあるね。
加えて最終ラインがバタバタしている印象が強かった。スペインは狭いエリアで細かくボールを動かしてグループで攻めていくサッカーだから、ボールを失うと中盤を飛ばして一気に早い攻撃を受けてしまう。カシージャスが救ってくれた場面も多く、他のGKだったらトーナメントの組み合わせが違ったんじゃないか、と思うくらいだ。不安がないわけではない。
卓越した個人技でも埋まらないコミュニケーション不足
グループリーグの最終戦(vs.ウクライナ)がすべてを象徴しているけど、フランスはコミュニケーションが決定的に不足している。「ここにボールを送り込めば」、「あそこにフリーランニングをしておけば」という場面が片手では足りないほど露見していた。
それでもリベリーあたりは必死になって突破を試みている。ただ、それが散々(ボールを)こね回して最終的に1タッチ2タッチでメリハリをつけて突破するための伏線であればいいのだけど、やはり単発で終わってしまう。ナスリ、ベンゼマら能力のある選手が前線に配置されているのだから、連動すればより危険な状況に相手を陥れることができるのに残念でならない。
逆にいうと、彼らを分断することに成功したスウェーデンのやり方がスペインは大いに参考になるはずだ。ただ中盤に運動量の多い選手を並べているので、容易なタスクかもしれないが。
サッカーは何が起こるか分からないゲームだけれど、このゲームに限ってはこれまでのフランスを見る限り、スペインがやられるのはちょっと想像しにくい。どっちかといえばスペインが複数点を記録して楽にゲームを決める可能性が高いんじゃないかな。
<了>
WOWOW番組情報
6月8日(金)〜7月1日(日)全31試合を完全生中継!
・準々決勝−3「スペインvs.フランス」
6月23日(土)深夜3:30[WOWOWプライム]
・準々決勝−4「イングランドvs.イタリア」
6月24日(日)深夜3:30[WOWOWプライム]
・準決勝−1「準々決勝1の勝者vs.準々決勝3の勝者」
6月27日(水)深夜3:30 [WOWOWプライム]
※ゲスト解説:宮本恒靖氏
・準決勝−2「準々決勝2の勝者vs.準々決勝4の勝者」
6月28日(木)深夜3:30 [WOWOWプライム]
※ゲスト解説:宮本恒靖氏
・決勝「準決勝1の勝者vs.準決勝2の勝者」
7月1日(日)深夜3:20 [WOWOWプライム]
※ゲスト解説:宮本恒靖氏
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