被災地を支え、被災地に支えられるベガルタ仙台=東北の「光」から「シンボル」へ

小林健志

被災地から勇気をもらい、団結の大事さを知った選手たち

ベガルタは震災を通じて地域の支えを実感し、もらったパワーをチームの力に変えて快進撃を見せる 【Getty Images】

 シーズン中にスタッフや選手全員がボランティア活動を行うというのは極めて異例と思われるかもしれないが、手倉森誠監督は「われわれは地域に生かされている」という話をしたことがある。こうした復興支援活動を通して、スタッフや選手に「地域に生かされている」ことを実感させることにより、地域のためにプレーで全力を尽くそうというモチベーションにもつながっているのだろう。そして、良い試合をして勝利すれば、被災地の人々に大きな勇気を与えるという良い循環が生まれる。

「自分たちの方が勇気をもらった」というのは多くの選手がボランティア活動を通して語る言葉である。くしくも今シーズン全員で七ヶ浜を訪れて以降の公式戦は全勝。あらためてスタッフ、選手全員で被災地を訪れたことで、チームは大きなエネルギーをもらっているのだろう。

 第13節、アウエーの等々力陸上競技場で行われた川崎フロンターレ戦。ベガルタは敗れはしたものの、攻撃的なサッカーでチームが立ち直りつつある川崎を相手に打ち合いを演じ、堂々たるサッカーを見せた。これに驚いた関東のメディアから手倉森監督へ「この団結力からは『自分たちが地域を代表するんだ』というものが感じられるが、どう思われているのか」という質問があった。

 手倉森監督は「昨年の『希望の光になりたい』というところから、今年は『東北のシンボルになりたい』という合言葉でやっている。サッカーは1人じゃできないということを、みんな本当に強く思ってくれているし、震災の後も希望の光になるためには1人だけが輝いていてはダメなので、チームとして、いかに輝けるかというところをみんながよく理解していると思う」と、震災を通じて団結することの大事さを選手たちがあらためて知ることができたことの大きさを語った。

 そして「チームだけでは成長し得ない部分に気づかされて、われわれは強くなってきたのだろう」と、この質問の答えを締めくくった。ベガルタはクラブを挙げて被災地支援をしてきたが、実はチームの監督、スタッフ、選手たちは被災地から大きなパワーをもらっており、被災地の方々の大きな支えがあったからこそ、ここまでの快進撃があるのかもしれない。

 東日本大震災はとても悲しい出来事であったことは間違いない。しかし、ベガルタはこの震災を通じ、より地域とのつながりが強まった。そして地域の支えを実感でき、地域からもらったパワーをチームの力に変えることができたという点で、非常に大きなものを得た1年3カ月だったのではなかろうか。今後も継続的な被災地支援活動を行っていくベガルタが、ますます団結力を強め、被災地のために全力プレーを見せ続けることを期待したい。

 また、7月21日の「東日本大震災復興支援2012 Jリーグスペシャルマッチ」では、ベガルタと鹿島アントラーズの選手や東北出身選手、海外招待選手からなる「Jリーグ TEAM AS ONE」の監督を手倉森監督が務めることになった。手倉森監督、そして出場する選手たちにはスペシャルマッチでもリーグ戦同様、躍動感溢れる試合を見せてもらい、被災地に元気を与えてほしいと願っている。

<了>

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著者プロフィール

1976年、静岡県静岡市清水区生まれ。大学進学で宮城県仙台市に引っ越したのがきっかけでベガルタ仙台と出会い、2006年よりフリーライターとして活動。各種媒体でベガルタ仙台についての情報発信をするほか、育成年代の取材も精力的に行っている

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