トーレスの復活でスペインにうれしい悩み=スペイン 4−0 アイルランド
悩める「9番」トーレスの先発起用が結実
センターFW争いを繰り広げるトーレス(左)とセスク(右)。起用された選手が結果を残すことが、スペインの強みとなっている 【Getty Images】
その際に順位を決めるのは、第一に直接対決の結果、次に直接対決の得失点差、そして同総得点、最後に全試合の得失点差。つまりスペインが引き分けでもOKな立場で第3戦を迎えるためには、クロアチアがアイルランド戦で挙げた3−1以上の点差で勝利しなければならなくなったわけだ。
ノルマは最低3ゴール。幸いにも第1戦で選手たちが不満を漏らし、スペインサッカー協会が大会の組織委員会に抗議文を提出するに至った乾いたピッチの問題は、降りしきる小雨のおかげで解決した。ゆえに試合当日の注目点は、第1戦と同じくセンターFWの人選に集中することになった。
イタリア戦では「偽センターFW」として予想外の先発起用をされたセスク・ファブレガスが先制点を決めた一方、後半に途中出場したフェルナンド・トーレスはことごとく決定機を外して勝ち点2を失った原因とされた。
他方、ルイス・アラゴネス前代表監督やジョゼ・モリーニョといった識者が「9番」不在のメンバーでスタートしたビセンテ・デル・ボスケ監督のさい配に批判的な発言を行ったことも話題となった。さらには練習で強烈なボレーシュートを決め、両者の先発争いに割って入るべく猛アピールを続けるネグレドの起用論も現地紙では報じられていた。
連日にわたり加熱し続けるセンターFW論に対し、「誰もが意見を発する権利がある。だが、決断を下すのはわたしだ」と前日会見で語ったデル・ボスケは、果たしてトーレスの先発起用を決断。そして、その決断は開始早々に実を結ぶことになる。
開始早々の先制点により理想的な展開へ
最もゴールを必要としていた男が決めた、早々の先制点。願ってもないスタートを切ったスペインは、その後も理想的な内容でゲームを進めていく。
イタリア戦ではキープ力の高い相手の2トップに手こずるジェラール・ピケとセルヒオ・ラモスをフォローすべく、右サイドバックのアルバロ・アルベロアが攻撃参加を自重していた。そのため後半途中にヘスス・ナバスを投入するまで右サイドからの切り崩しがほとんどなかったのだが、この日はアルベロアが左のジョルディ・アルバと共にタッチライン沿いの高い位置に張り出し、ピッチの横幅を広くキープすることができた。
さらには前線のトーレスがセンターバック2人との駆け引きを繰り返すことで、相手ディフェンスラインの押し上げを阻む。これも純正FWを1人も起用しなかったイタリア戦の前半に欠けていた動きだ。
こうして確保した中央のエリアでは、3人のMFに「偽ウイング」のシルバとイニエスタを加えた5人が流動的に動きながらボールを動かし、果敢にボールを奪いにかかるアイルランドの猛者たちを軽々といなしていった。