強さ見せるクロアチア、ダークホースの予感=イタリア 1−1 クロアチア

全選手が献身的にプレー

先制を許したが、マンジュキッチ(下)のゴールでイタリアと引き分けた 【Getty Images】

 とはいえ、このチームの最大の特徴は、全選手が圧倒的な運動量で守備に貢献する規律である。最前線のストライカーも、常に相手チームの最終ラインにプレスをかけ続ける。それから、このチームは柔軟性にも富んでいる。必要とあらば、中盤をコンパクトにして堅固な守備からカウンターアタックという戦い方に専念することもできる。もちろんボールを支配して主導権を握るスタイルも得意だ。

 それはまさに、「攻撃的なフットボールが好きだが、堅い守備があってこそ」というビリッチの信念を忠実に体現している。06年の夏にビリッチが代表監督に就任して以降、勝率70パーセントという代表戦の戦績も納得できる。

逆境が選手たちに火をつけた

 それから、クロアチア好調の要因をもう1つ挙げるのであれば、それは選手やコーチングスタッフの高いモチベーションにあると言えるだろう。予選での精彩を欠く内容や平凡な結果により、ファンやマスコミは、こぞってこの代表チームを見限ろうとしたのだ。

 ユーロ2008では、予選でイングランドに2戦2勝し、ロシアとイングランドを抑えて首位で予選突破を果たしたため、大会前から代表チームに大きな期待が寄せられていた。だが今大会前は、国民の間では期待よりも懐疑心の方が強かったと言っていい。追い打ちをかけるかのように、クロアチア・サッカー協会は、リーグ戦の不正問題や会長の辞任騒動などにより、大きく揺れていた。

 そうした代表チームを取り巻く環境が、逆にクロアチアの選手たちに火をつけた。彼らは、自分たちの力を証明したいという、並々ならぬ思いで今大会に臨んでいる。ビリッチ監督もアイルランド戦後に、「大会前、クロアチア国内の雰囲気は、真のフットボールの雰囲気とは程遠かった」と認めると共に、それがチームという船の帆に風を送り込んだと話している。そしてその船は今、ユーロという大海で、栄光に向けて順風満帆な航海を続けているのだ。

<了>

翻訳:田島大(フットメディア)

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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