強さ見せるクロアチア、ダークホースの予感=イタリア 1−1 クロアチア

ワールドクラスはモドリッチのみ

高い技術でクロアチアをけん引するモドリッチ(左) 【Getty Images】

 ユーロ(欧州選手権)2012の開幕数日前、わたしはインターネットでクロアチアの大会前最後の親善試合となるオスロでのノルウェー戦を見た。とても低調な出来だったが、それでも1−1(前半0−0)という見栄えは悪くない結果だった。試合を中継していたESPNのアルゼンチン人コメンテーターは、現在のクロアチア代表を、ユーロ1996で8強、98年W杯フランス大会で3位に入った当時のチームと比較した。シューケル、ボバン、プロシネツキ、アサノビッチ、ヤルニ、スタニッチ、ビリッチ、シュティマッチといった偉大な選手をそろえていた時代のクロアチア代表と。そして、コメンテーターの1人は現代表チームについて、爆発力を持った攻撃的なスタイルから「Vatreni(炎)」と称された当時のチームには到底およばないと言い切った。確かに、コメンテーターを務めたこのアルゼンチン人の意見も一理ある。現在のクロアチア代表にワールドクラスの選手は1人、ルカ・モドリッチしかいないのだ。

 それでもフットボールは予測不能な結果をもたらすことがあり、スラベン・ビリッチ監督率いるチームは、ユーロ2012のダークホースになるかもしれない。ご存じだと思うが、同指揮官は大会後にロコモティフ・モスクワ(ロシア)の監督就任が決まっている。クロアチア代表は、もしかするとこのまま最後まで勝ち上がり、チームを6年間率いてきた指揮官に最も美しいお別れのギフトを贈ることができるかもしれない。

マンジュキッチ「大きなことを成し遂げる」

 現チームを、92年のデンマークや、04年のギリシャのように大きなサプライズ(優勝)を起こす大会のダークホースに挙げるのは、わずか2試合を終えた時点では時期尚早であり、大胆すぎる予想かもしれない。しかし、クロアチアは3−1で勝利したアイルランド戦と、後半だけだが1−1で引き分けたイタリア戦で、どんな相手も恐れる必要がないほどのパフォーマンスを見せたのだ。スペインのスタイルがクロアチアにとって相性がいいことを考えると、前回覇者相手にも引き分け以上の結果を残せるとわたしは信じて止まない。

「われわれは何か大きなことを成し遂げるためにここに来た」と、FWマリオ・マンジュキッチはアイルランド戦後に話したが、現段階では、本当に大きなことをしでかす気配を醸し出している。

 試合を観戦した人は分かると思うが、ビリッチ監督は4−4−2を採用している。前線には2人の典型的なストライカー、エバートンで絶好調だったニキツァ・イエラビッチと今大会2試合で3ゴールのマリオ・マンジュキッチを並べている。中盤のサイドには、イバン・ラキティッチとイバン・ペリシッチという、両サイドをこなせる攻撃的なウインガーを配置。中盤の中央には、チームの攻撃を操る司令塔モドリッチがおり、彼もまた敵陣深くまでボールを運び、ラストパスやボックスの外からのミドルシュートで相手ゴールを脅かすことができる。そして右サイドバックのダリヨ・スルナは、幾度となくウイングの働きをこなし、質の高いクロスを供給する。クロアチアは、間違いなく攻撃的なチームなのだ。

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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