変ぼうを遂げたダニッシュ・ダイナマイト=デンマーク 2−3 ポルトガル

鈴木肇

将来性ある若手や中堅が台頭

デンマークは敗れたが、ベントナー(写真)のゴールで終盤に追いつくなどを粘りを見せた 【Getty Images】

 2年前のワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会。デンマークは日本に1対3で完敗し、グループリーグ敗退という結果で大会を去った。当時の印象が強い日本のサッカーファンの方々にとって、ユーロ(欧州選手権)2012におけるダニッシュ・ダイナマイト(デンマーク代表の愛称)の躍進を予想する人は少ないのではないか。実際、4日前にオランダと対戦したときのデンマークは、まさに2年前のイメージそのままだったかもしれない。確かに、優勝候補の一角を破るという大金星を挙げた。守護神ステファン・アンデルセンやシモン・ケアーを中心としたディフェンス陣の奮闘は目を見張るものがあった。ただ、どちらかというとオランダの拙攻に助けられた感は否めず、「デンマークが勝った」というよりも「オランダが自滅した」というゲーム内容だった。

 だが、南アフリカの地で日本と対戦したときのデンマークと、今大会のチームは大きく異なるということをここで強調したい。それは、2対3で敗れはしたものの、13日に行われたポルトガルとのグループリーグ2戦目で証明された。

 では、どこが違うのか。

 まず1つ目は、チームが若返りに成功した点だ。南アフリカW杯におけるデンマーク代表選手の平均年齢は28.3歳だったが、今大会のそれは27.1歳。この数字は、ユーロに限定すれば1964年大会に参加したチームの平均年齢26.2歳に次いで低い。ただ、当時は経験豊富なプロ選手の代表チーム参加が認められていなかったため、実質的には今大会のチームが史上最年少といえるかもしれない。2年前はヨン・ダール・トマソンやマルティン・ヨルゲンセン、イェスパー・グロンケアといったベテランがまだ主力を担う一方、若手や中堅選手の台頭がほぼ皆無だった。

 しかし、オランダのアヤックスで攻撃を指揮する弱冠20歳のクリスティアン・エリクセン、ドイツのシュツットガルトでレギュラーを務めるウィリアム・クビストといった選手がチームの主軸を担うまでに成長。控えにも、ダニエル・バスやラッセ・シェーネら将来性ある若手や中堅が構え、日本と対戦したときのチームと比較すると選手の質・量ともにアップした。モアテン・オルセン監督も「わたしが選出したメンバーの平均年齢が史上最年少であるという事実はほんの偶然かもしれないが、いまのチームには将来性があるということを示している」と現代表に対して自信をのぞかせる。

ボール支配率でポルトガルを上回る

 2つ目は、デンマークの代名詞ともいえるサイドアタックの復活だ。南アフリカW杯の欧州予選と本大会における戦いぶりを振り返ると、娯楽性溢れるサイド攻撃は鳴りを潜め、どちらかというと堅守速攻が主体だった。だが、広い視野と展開力を持つクビストとニキ・ジムリング、それにヤコブ・ポウルセンが代表に定着したことにより、広くピッチを使う攻撃が可能になったのだ。

 ポルトガル戦での2つのゴールシーンを振り返ってみたい。1点目は、まず左から右へサイドチェンジがなされ、ヤコブ・ポウルセンによる右からのクロスをミハル・クローンデリが中央へ折り返し、エースのニクラス・ベントナーが頭で押し込んだ。2点目は、まず左から中央へ、そして右サイドをオーバーラップしてきたヤコブセンにボールが渡り、ヤコブセンのクロスをベントナーがヘディングで決めた。いずれのゴールも、効果的なサイドチェンジからポルトガル守備陣のマークの意識が薄くなったことによって生まれたといえるだろう。まさにデンマークの特長が凝縮された2得点だった。

 また、左右のサイドハーフとサイドバックの連係が非常にスムーズであることも、切れ味鋭いサイド攻撃を可能にしている。とりわけ右のヤコブセンとデニス・ロンメダールは6年にわたってコンビを組んでおり、ベテラン同士による息の合ったつなぎは円熟味を感じさせる。鋭いカウンターはそのままに、速攻が無理と分かれば丁寧にボールを回して相手を崩すというポゼッション型サッカーが可能になった。ちなみに、ポルトガル戦のボール支配率は59対41でデンマークが上回っている。

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著者プロフィール

1978年生まれ。埼玉県出身。1994年米国W杯で3位入賞したスウェーデン代表に興味を持ち、2002年日韓W杯ではデンマーク代表の虜になり、スカンジナビアのサッカーに目覚める。好きな選手はイェスペア・グロンケア。自身のブログ(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/swe1707/)でスカンジナビアのサッカー情報を配信中。

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