若手が台頭し、新陳代謝が進むIT’S SHOWTIME 活きのいい無名選手が活躍したベルギー大会

J SPORTS

若手にチャンスがあり、次世代のスターが育つ環境

最高齢31歳のギダ(写真左)が2Rで決着をつけた 【(c)Ben Pontier / EFN】

 最初に念のために言っておくが、IT’S SHOWTIMEのブランド性とは「IT’S SHOWTIME」そのものにある。出場する選手にあるわけではない。選手は時間とともに世代交代する存在だからだ。大会そのものの質を維持発展させながら選手に華やかな活躍舞台を提供しているのがIT’S SHOWTIMEだ。上位に置かれる価値は選手にではなく、大会そのものにある。一つ一つの大会を精密に作り上げ、旬の選手をリングに上げて観客に楽しんでもらう。運営側が最も大切にしているのは、IT’S SHOWTIMEのブランド維持であり、観戦に訪れる観客である。

 IT’S SHOWTIMEには、活きのいい無名選手が毎回登場する。若手にチャンスが与えられる舞台。大化けする選手が無理なく育つ。1999年にスタートしたIT’S SHOWTIME。現在のリングにその当時活躍した選手は、当然ながら誰一人存在しない。新陳代謝は絶えず進んでいるし、世代交代も早い。考えてみるまでも無く、総合格闘技ならまだしも、打撃格闘技界で十年一日の如(ごと)く同じ選手がリングに君臨しているとしたら、やはりそれはかなり妙なことではないのか。今ベルギー大会も、日本のファンにとっては無名選手が多かったが、内容は濃かった。

驚異の軽快さを披露した新星ダグレクト

ダグレイド(写真左)はもう一試合こなせるのではないかと思わせるほどの軽快さを見せた 【(c)Ben Pontier / EFN】

 第1試合。メーンであるパート2のオープニングマッチは、フランスからのシェイック・シディベが5−0の判定でオランダのジェイソン・ウィルニスを下した。シディベのワンサイド展開にウィルニスも逆転KO狙いでパンチを繰り出すが、ベテランのシディベの経験と技量が勝った。
 
 第2試合。73kgのソニー・ダグレイド(ベルギー)がどのような選手なのか、知る人は少なかったはずだ。切れ味の良さと集中力そしてスタミナ。さらにフットワークとコンビネーションと攻撃角度。3ラウンドを終えて、もう1試合できそうな軽快さ。とはいえIT’S SHOWTIME73kg世界王者のローシン・”オーシー”・オズニとタイトルマッチを行うには、もう少し経験が必要だろう。

賭け勝負に敗れたテイト、1000ユーロ支払う

賭け勝負対戦に勝利したパーパリアン(写真右)は、テイトに1000ユーロを支払わせた 【(c)Ben Pontier / EFN】

 第3試合。マイクスジムで練習を続けるウクライナのセルゲイ・ラシュシェンコは、選手アパートに住み込んでいる。4月には日本の軽量級トップ選手の闘魔も、ラシュシェンコと2週間ほど同居した。こんな言葉がオランダではよく使われる。「リングでは自分のケツは自分で拭け。この世で最も孤独な場所がリングだ」と。試合は攻防の末、ラシュシェンコが左右のクリーンヒットで19戦無敗のサラ・エディン・カンドゥッシ(モロッコ)を倒した。カウント10までに立ち上がったカンドゥッシだったが、レフェリーは試合を止めた。
 
 第4試合。ここ1カ月ほど、賭け勝負論争で互いに挑発しあったサハーク・パーパリアン(アルメニア)とアンドリュー・テイト(米国)の難民vs.ナルシスト対決。試合開始から前半は良かったテイトだが、徐々にグダグダに。変則スタイルのテイトの出自は空手とフルコンとMMAの混合。序盤に勢いで勝負をかける速攻タイプとなった。ラウンドが進むごとに攻守が逆転し、テイトは失速し、自滅していった。在ベルギーアルメニア人来場者は、「Yes, we can!」コールで打倒米国を叫んだ。アメリカは欧州ではさほど好かれていない。少なくともオランダでは多くが嫌っている。賭け勝負対戦はパーパリアンが防衛し、テイトは1000ユーロを払うハメとなった。

予言通りの2R、KO勝利を飾ったギダ

勝利を挙げたクレシュニク(写真右)は6月末のバンナ戦にも期待がかかる 【(c)Ben Pontier / EFN】

 第5試合。「3週間しか練習ができなかった」と、計量時に調整不足を嘆いたルステミ・クレシュニック(アルバニア)。ところが試合は1Rで片がついた。マイケル・ドゥート(オランダ)の圧力がクレシュニックに試合勘を取り戻させた。強烈なフックで3ダウン奪っての勝利。これを機に、6月末のジェロム・レ・バンナ(フランス)戦に向けて調整を続けることになる。クレシュニック28歳。今から脂の乗り切った時を迎える。

 第6試合。パート2のメーンを飾り、大声援を受けるダニエル・ギダ(ルーマニア)は、まさにヘビー級の世界トップファイターとなった。1Rから対戦相手のブライアン・ダウエス(オランダ)は、怖れることなく前に出た。セコンドのハンス・ナイマンが2R前に「接近しろ」と指示。しかし、皮肉なことにアドバイスされた至近距離戦は、ギダの左ショートフックがダウエスのアゴを打ち抜く、失神KO決着となった。前日の計量でギダは、「2Rに終わる」と予言。その通り実行したギダの背中が「言っただろ」と語っていた。面白いことに、今大会は31歳のギダが最高齢。パート2に出場した12選手の年齢平均は25歳だ。やはりIT’S SHOWTIMEのリングには勢いがある。

 今大会で主催者枠のパート1のメーンは女子だった(IT’S SHOWTIMEの大会は、通常開催国主催者枠のパート1の6〜8試合程度と、国際配信するメーンのパート2の6試合が行われている)。試合はIT’S SHOWTIMEルールだが、ウエイトカテゴリーに捉われず、さまざまなウエイトの試合も組まれていたことに注目した。つまり、9月の日本大会も主催者枠パート1ではIT’S SHOWTIMEルールを遵守(じゅんしゅ)しながらも、ウエイトカテゴリーには捉われない自在なマッチメイクを組めばいいだろう。新K−1をも手助けしながら、着実に維持発展を遂げるIT’S SHOWTIME。次世代選手は必ずここから出るだろう。

(テキスト:遠藤文康)


■IT’S SHOWTIME56 ベルギー大会結果

<第1試合 85kg 3R>
○シェリック・シディベ(フランス)
(3R 判定)
●ジェイソン・ウィルニス(オランダ)

<第2試合 73kg 3R>
●エリック・デニス(フランス)
(3R 判定)
○ソニー・ダグレド(ベルギー)

<第3試合 ヘビー級 3R>
●サラ・エディン・カンドゥシ(モロッコ)
(1R KO)
○セルゲイ・ラシュシェンコ(ウクライナ)

<第4試合 IT’S SHOWTIME World Title 85kg 5R>
[挑戦者]●アンドリュー・テイト(米国)
(5R 判定)
[王者]○サハーク・パーパリアン(アルメニア)
※パーパリアンが防衛

<第5試合 ヘビー級 3R>
●マイケル・ドゥート(オランダ)
(1R TKO)
○ルステミ・クレシュニク(アルバニア)

<第6試合 ヘビー級 3R>
●ブライアン・ダウエス(オランダ)
(2R KO)
○ダニエル・ギタ(ルーマニア)


〜最強打撃格闘技〜 IT’S SHOWTIME
2012・5・12 ベルギー大会
J SPORTS 3にて再放送
05月19日(土)16:30〜
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