ジャマイカvs.米国 短距離王国の座を懸けた戦い=陸上

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ボルトが9秒82でシーズンイン

ボルトは自身今シーズン初戦で、世界最高の9秒82をマーク。今季も好調だ(写真は昨年の世界選手権時のもの) 【Getty Images】

 今年もトラックシーズンが本格的に始まり、世界の陸上界で一番に話題をさらったのは、やはりウサイン・ボルト(ジャマイカ)だった。5月5日のジャマイカ国際男子100メートルで個人種目のシーズン初戦を走り、9秒82の今季世界最高をマークしてみせた。

 昨年は、2010年の腰の故障が尾を引いたこともあり、シーズン初戦は5月末にずれ込んだ。タイムも9秒91。それと比較したら、今年は上々のシーズンインだ。ボルト自身、「やりたいことが完璧にできたわけではないが、シーズン初戦としては良かったと思う」とレース後にコメントした。

 ジャマイカ国際の200メートルではヨハン・ブレーク(ジャマイカ)が19秒91と、こちらも今季世界最高で優勝。昨年のダイヤモンドリーグ最終戦では、19秒26の世界歴代2位という大記録をたたき出した選手である。昨年の世界選手権(韓国)では、ボルトがフライングで失格した100メートルを、ブレークが史上最年少の21歳で制した。

 ほかにも100メートル前世界記録保持者のアサファ・パウエル(ジャマイカ)をはじめ、世界歴代リスト上位に入るスプリンターが何人も現れている(表1参照)。ロンドン五輪でジャマイカ選手が、短距離だけで何個のメダルを獲得するか。陸上競技の注目点の1つとなっている。

04年からジャマイカが台頭、08年に逆転

表1:2011年末の男子100m世界歴代10傑 表2:2004年末の男子100m世界歴代10傑 【(C)WOWOW】

 今やジャマイカが完全に短距離王国に成長したが、少し前まで短距離王国といえば米国ではなかっただろうか? カール・ルイス(※1)やモーリス・グリーン(※2)の伝統はどうなっているのかと、そんな疑問を感じている方も多いと思う。

 そこでデータを整理してみたのが表1から表4である。じっくり見ていただけると、非常に面白いことが分かるはずだ。

 まずは表1と表2を見比べてほしい。04年末時点の世界歴代リスト(表2)では、グリーンを筆頭に米国4選手が10傑入り。それも上位5人中3人を占めるレベルの高さである。ジャマイカは10番目に、パウエルがかろうじて名前を連ねているだけだった。

 それが昨年末時点(表1)では、ボルト以下ジャマイカ選手5人が歴代10傑入りしている。すべて08年以降に出された記録だ。

表3:五輪男女100m、200、400mリレーにおける獲得メダル数 【(C)WOWOW】

 表3は男女ショートスプリント種目の五輪メダル数の推移である。1984年のロサンゼルス五輪はルイスの3冠(走り幅跳びも含めると4冠)があった大会で、ショートスプリント全種目を米国が制した。女子100メートルでバルセロナ、アトランタと五輪で連続金メダルのゲイル・ディーバースや、アトランタ五輪の男子200メートルで世界記録をマークしたマイケル・ジョンソンらスター選手も続々と誕生。シドニーでの落ち込みはマリオン・ジョーンズのドーピング違反(2種目で金メダル取り消し)が響いたからだが、04年のアテネ五輪まではショートスプリントの覇権は米国が握っていた。

 それが北京五輪で形勢が一気に逆転。ボルトの3冠に加えて女子100メートルと200メートルも、ジャマイカ人のシェリー・アン・フレイザーとベロニカ・キャンベル=ブラウンが制した。ジャマイカが5個の金メダルを獲得し、陸上界を騒然とさせたのである。

表4:男子100m世界記録変遷 【(C)WOWOW】

 そして、電気計時のみが公認されるようになって以降の男子100メートル世界記録変遷が表4である。ドノバン・ベイリー(カナダ)を除き、20世紀の世界記録すべてが米国選手によって打ち立てられた。それが05年以降はパウエルとボルト、2人のジャマイカ選手で世界記録が更新されている(ちなみにベイリーもジャマイカ生まれの選手である)。

※1 カール・ルイス:100メートルで83〜91年の間の世界選手権3連勝(当時は4年に1回開催)、ロサンゼルス&ソウル五輪連続金メダル。人類初の9秒8台をマーク
※2 モーリス・グリーン:100メートルで97〜01年の間の世界選手権3連勝(2年に1回開催)、シドニー五輪金メダル。人類初の9秒7台をマーク

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