ジャマイカvs.米国 短距離王国の座を懸けた戦い=陸上

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ジャマイカ台頭の皮肉な要因

 ジャマイカ台頭の背景は何か。多くの説が提示されているが、そのうちの1つが米国に留学する選手が少なくなったことだと指摘されている。

 以前は優秀な高校生のほとんどが米国の大学に進学し、奨学金を受けながら競技を続けた。しかし、米国留学が必ずしもプラスに働かなかったようだ。米国側に反論もあると思われるが、試合数の過多、勉学との両立の難しさなどが理由に挙げられている。北京五輪女子400メートルハードル金メダリストのメイレーン・ウォーカーら、米国に留学しながら拠点をジャマイカに戻した選手もいる。

 近年はジャマイカのトレーニング施設も徐々に整ってきた。パウエルやボルトといったスター選手が国内でトレーニングをして結果を残し、若い世代の国内残留傾向が大きくなっている。短距離王国だった米国に留学する選手の減少が、ジャマイカが短距離王国に成長した一因となった。ちょっと皮肉な一面である。

ダイヤモンドリーグでも両国が対決

 1976年モントリオール五輪男子200メートルで金メダルのドン・クォーリー、女子では五輪と世界選手権で13個のメダルを取ったマリーン・オッティなど、ジャマイカにも先駆者はいた。だが、近年のジャマイカ勢の躍進は、パウエルが先陣を切ったと言っていい。

 そのパウエルがダイヤモンドリーグ開幕戦ドーハ大会(5月11日)の男子100メートルに出場。米国からはジャスティン・ガトリンがエントリーした。04年アテネ五輪の100メートルで金メダルを取った選手だ。しかし06年に2度目のドーピング違反が発覚。4年間の出場停止期間を経て2年前に復帰し、今年3月の世界室内60メートルに優勝するなど力を取り戻しつつある。

 結果、ガトリンが9秒87で優勝。パウエルは0秒01差の2位だった。ともにボルトがジャマイカ国際で出した9秒82の今季世界最高を上回ることはできなかった。

 ジャマイカ躍進のきっかけとなったパウエルと、8年前の五輪金メダリストのガトリン。短距離王国を争う両国の歴史を踏まえて見ると、この2人の対決がより面白く感じられる。

 また、女子100メートルでもジャマイカのキャンベル=ブラウンと、米国のアリソン・フェリックスが対決し、フェリックスが10秒92で優勝。キャンベル=ブラウンは10秒94で2位に終わった。
 主戦場は2人とも200メートルで、キャンベルがアテネ&北京両五輪と昨年の世界世界選手権で金メダル、フェリックスが05〜09年の世界選手権で3連勝。ジャマイカ、米国対決の女子バージョンを繰り広げてきた2人だ。

 短距離王国の座を懸けた両国の対決。それを繰り返し見られるのは、ダイヤモンドリーグならではの醍醐味(だいごみ)である。

文・寺田辰朗

<了>
◆◆◆WOWOW ダイヤモンドリーグ放送予定◆◆◆
第2戦 上海(中国) 5月19日(土)夜8:50[WOWOWライブ]※生中継
第3戦 ローマ(イタリア) 5月31日(木)深夜2:50[WOWOWプライム]※生中継
第4戦 ユージーン(米国) 6月2日(土)深夜3:20[WOWOWプライム]※生中継
第5戦 オスロ(ノルウェー) 6月8日(金)午前6:00[WOWOWライブ]
第6戦 ニューヨーク(米国) 6月10日(日)午前8:10[WOWOWライブ]

第7戦 パリ(フランス)(現地7月6日開催)
第8戦 ロンドン(英国)1日目(現地7月13日開催)
第8戦 ロンドン(英国)2日目(現地7月14日開催)
第9戦 モナコ(現地7月20日開催)
第10戦 ストックホルム(スウェーデン)(現地8月17日開催)
第11戦 ローザンヌ(スイス)(現地8月23日開催)
第12戦 バーミンガム(イギリス)(現地8月26日開催)
第13戦 チューリッヒ(スイス)(現地8月30日開催)
最終戦 ブリュッセル(ベルギー)(現地9月7日開催)

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