新王者に輝いたトヨタ自動車の強さの要因=バスケ

松原貴実

優勝を決め、喜ぶトヨタ自動車の選手たち。連日熱戦が続くファイナルとなった 【写真は共同】

 トヨタ自動車アルバルクvs.アイシンシーホースの対戦となったJBL2011−12シーズンファイナルは3勝1敗でトヨタ自動車が初優勝に輝いた(※前身のスーパーリーグを含めると5シーズンぶり4度目の優勝)。レギュラーシーズンは4勝2敗でトヨタ自動車に勝ち越して1位通過を決めたアイシン、1月の全日本総合選手権でそのアイシンを破り王座に就いたトヨタ自動車。互角のチーム力と言われ下馬評も大きく2つに分かれた両者の対決は、予想にたがわず連日の熱戦となった。そのなかで勝敗を分けたもの、アイシンの勝利を阻んだものは何だったのか? このファイナル4戦を振り返りながら、新王者トヨタ自動車の強さの要因を探ってみたい。

最大19点をひっくり返し、初戦を制したアイシン

 初戦を制したのはアイシンだった。トヨタ自動車のスタートダッシュで最大19点のビハインドを背負う展開となったが、3クォーターの後半から押し戻し、勝負所での粘り強いディフェンスでトヨタ自動車のオフェンスリズムを狂わすと、攻めてはアンソニー・リチャードソンの力強い1on1から流れをつかんで逆転。最後は3ポイント攻勢に出たトヨタ自動車をかわし73−71で大逆転勝利を収めた。
「あまりにも点差が開いたので思い切って早い時間にベンチメンバーに切り替えたのが功を奏したと思う」という鈴木貴美一ヘッドコーチ(以下HC)の言葉どおり、疲れが見えたスタートメンバーを下げた時間帯を控えの喜多川修平、高島一貴がよくつないだ。「おかげでスタートメンバーのスタミナが温存でき、終盤の激しいディフェンスからうちのペースに持ち込むことができた。非常に価値のある大きな1勝だと言える」(鈴木HC)
                    
 JBLの『王者』として君臨していたチームから佐古賢一(引退)、網野友雄(現・リンク栃木)、竹内公輔(現・トヨタ自動車)が抜け、新生チームとしてスタートした今季のアイシンには、当初戦力低下を懸念する声も聞かれたが、レギュラーシーズンが終わってみれば31勝11敗で1位をマークした。鈴木HCが「軸となる柏木(真介)、ジェイアール(桜木)に加え、成長著しい古川(孝敏)の存在が大きかった」というチームには、さらにシューター朝山正悟が定着。即戦力としてポイントガードの橋本竜馬も加入するなど明るい材料がそろい、以前の圧倒的な強さの代わりに「コツコツ努力してみんなで成長していこうというチーム」ができあがった。それだけに、この第1戦は新生アイシンの意地に懸けてどうしても勝ちたいゲームだった。前半の流れから見ればミラクルに近い大逆転劇は、チームの底力を示したまさに『価値ある1勝』だったに違いない。

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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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