石川遼がマスターズへの過程で得たもの 広がった米ツアー参戦のチャンスと今季のスイング
マスターズ自力出場へ、ボーダーライン上の戦い
3月のプエルトリコオープンで2位に入り、米ツアーの特別一時会員資格を得た石川遼。しかし、マスターズまでに世界ランキング50位に入ることはできなかった 【Getty Images】
石川自身は、昨年度の日本ツアー終了時点では、「ワールドランキングは気にしていない」と発言していたものの、12月のタイゴルフ選手権(15日〜18日・アマタスプリングス)、そして3月のプエルトリコオープン(8日〜11日・トランプインターナショナル)への出場などは、やはり50位というマスターズ行き切符を無条件で手にできるワールドランキングをにらみつつの戦いだったのは明らかだ。
日本ツアー終了後の過密スケジュールを押してのタイゴルフ選手権は、石川にとってアジアンツアー初挑戦でもあった。この大会で36位以内に入れば、自動的にマスターズに招待される昨年末時点でのワールドランキング50位以内は確保できると試算されていたのだ。しかし、結果は58位に終わり、ワールドランキングを1つ落とし51位で年末を迎えてしまった。
1月に開催されたソニーオープンinハワイ(12日〜15日・ワイアラエCC)に石川は初参戦。予選落ちながらもワールドランキングは48位にアップ。しかし、次の週には試合に出ていなかった石川はランキングを3つ落とし51位で同月のファーマーズ・インシュアランスオープン(26日〜29日・トーリーパインズCC南C)を迎えた。ここで13位タイと健闘し石川のワールドランキングは50位に再び返り咲いた。
ランキングを落とすも「特別推薦」でのマスターズ出場が決まる
しかし、マッチプレーでは2回戦敗退。ワールドランキングは2つ上がっただけで54位。そこでWGCの同週、裏トーナメントとも言うべきプエルトリコオープンに急きょ出場を打診したのだ。上位選手はことごとくWGCに出ているため、同オープン出場選手の中で石川はトップランカーだ。上位フィニッシュの可能性は高い。だがワールドランキングの同オープンへのポイント配分はキャデラックの3分の1程度。その開幕直前の3月6日にマスターズ委員会が石川遼の「特別推薦」を決めた。推薦の理由をオーガスタナショナルGCのビリー・ペイン会長は「石川の出場が日本だけではなく、アジアでのゴルフへの関心が高まりつながる」と語ったが、つまり、石川は日本ばかりではなく、アジアの期待も背負って戦うことになったのである。
これまで日本ツアーの賞金ランキング上位の日本人選手が「特別招待」された例は過去にもあった。昨年の石川の賞金ランキングは3位でも、常にワールドランキングは日本人トップをキープしてきたというのも推薦される要素にはなっていたのであろう。
プエルトリコオープンで単独2位になった石川のワールドランキングは47位。そして、PGAツアーメンバー以外の選手は年間出場試合数を12試合に制限されているが、昨年の賞金ランキング150位(約41万ドル)を上回る58万8000ドルを稼いだ石川は推薦さえもらえれば無制限にPGAツアーに出られる「特別一時会員」の資格を得られることになった。また今季さらに10万ドルほど上積みすれば、賞金ランキング125位以内に入り、PGAツアーのシード獲得も夢ではなく、現実に手が届くものになったのだ。