石川遼がマスターズへの過程で得たもの 広がった米ツアー参戦のチャンスと今季のスイング

今年は大きなスイング改造なし 完成度に自信も

マスターズ本番では練習ラウンドの時の安定感を失って良いところなく予選落ちとなった 【写真は共同】

 3月15日から開催されたトランジションズ選手権で予選落ちした石川のワールドランキングは50位に後退。続くアーノルド・パーマー招待(22日〜25日・ベイヒルC&L)では、練習日から父の勝美氏と一緒に中学時代から付き合いがある女性が会場に現れ、石川が報道陣に「紹介します」という一幕もあったが、それはともかくとして、「特別一時会員」の意思表示をPGAツアーに対して行い、その権利を行使することが明確にした。そして「この試合とマスターズでシード獲得を決めたい」と石川は決意を口にしていた。それだけ昨年後半戦から、とりわけ今季に入ってからスイングも安定し「戦える」(石川)確信を持っていたと言えるだろう。

 これまで、常に何らかのスイング改造に取り組みつつ石川は試合を戦ってきた。それはマスターズも例外ではなく、マスターズ初挑戦の2009年には、「何もこの時期に改造をしなくてもいいのではないか」との批判さえ受けるほどだった。しかし、今回のマスターズは少々様子が違っていた。「この1年、とりわけ今年に入ってソニーオープンからの3カ月は特別な改造はしていません。ここまでやって来た延長線で臨みます」と言う石川の言葉からも、完成度への自信がうかがえた。

ポイントは左ひざの動き

 アーノルド・パーマー招待の練習日に昨年と今年のスイング連続写真を石川に見せて、その違いを尋ねると「ほらここですよ」とインパクトからフィニッシュの左足つま先を石川は指さした。「以前は左のつま先がめくれ上がっていましたけど、今はそれが抑えられているんです」とのことだ。さらにその点について勝美氏に解説をお願いしたところ、「以前は、左ひざが飛球線方向へ曲がる打ち方になっていました。曲がっても、常に同じ曲がり方ならいいのですが、なかなかそうはなりません。左ひざを曲げなくても打てる筋力がついてきたら曲げないほうが同じ動きができてスイングは安定するのです。その結果として左のつま先がめくれ上がらなくなったと言ったほうが正解ですね」とのことだ。
 石川は、昨年後半戦あたりから、ドライバーの安定感に定評があるベ・サンムン(韓国)や武藤俊憲のひざの動きに注目していたが、それを自分のものにしたということであろう。

練習ラウンドでは「十分に戦える」雰囲気もあったが……

 アーノルド・パーマー招待は最終日に失速して53位に終わり、ワールドランキングも52位に後退。マスターズ出場選手は1〜19まである出場カテゴリーのいずれかに当てはまり、出場者リストの名前の後ろにはその番号が記してあって、複数の番号が記入されている選手も少なくない。19番目のカテゴリーは3月25日現在のワールドランキング50位以内。石川遼のところだけその番号が記入されず、マスターズ出場選手にリストアップされることになったのだ。

 「特別枠」という立場。そして日本だけではなく、アジアの代表としてオーガスタナショナルに立つということも石川の心理に微妙な変化を与えていたことは想像に難くない。とは言え、月曜から水曜までの練習を見る限り、ドライバーからパターまで「十分に戦える」(石川)雰囲気はあった。変化があるとすれば、ドライバーの長さを0.5インチ短くし、44.5インチに仕様を変えていたことぐらいだ。
「3番ウッドからの流れからして、このほうがタイミングが合うんです」(石川)という理由でのチェンジで、その通り練習ラウンドではほとんどミスらしいミスもなく、石川も初日を前に「出だしが重要。1番、2番をバーディ、バーディ、もしくはパー、バーディでスタートしたい」と意気込みを語っていたものだ。

 だが、いざふたを開けてみると、その信頼していたドライバーが左に曲がり1番はボギー。2番では3パットのボギー。そんなゴルフが立て直せないまま石川のマスターズは予選2日間で終わってしまった。

国内ツアーが12日に開幕 今季は“大暴れ”できるか

「残念は残念ですけど、しょうがないですね、終わってしまったことは。いい準備をすることに努力を注いで来たし、それができて木曜日のティーに立ったと確信しています。結果の部分ではダメでしたけど、それまでのプロセスというか、どういうふうに努力してこの試合に臨んだかというのは凄く大事なことだと思います」と言う石川は、続けて「マスターズに向けてピークを持っていくという努力をしたし、次にこういう機会があれば、今度こそいいパフォーマンスが出せるように、また努力するしかないと思います」と敗戦の弁を語った。

 前述の女性との婚約を公にして臨む日本ツアー開幕戦が12日からスタートするが、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。今回のようにワールドランキングで苦労しないためにも、国内ツアーでも大暴れする石川遼を見たいものだ。

<了>

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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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