棚橋弘至が描く「2012年の新たな野望」=独占インタビュー

茂田浩司

棚橋弘至に独占インタビュー! “プロレス界の顔”が描く2012年の野望とは!? 【t.SAKUMA】

 2011年の「プロレスの顔」は間違いなく棚橋弘至である。プロレス大賞MVPを始め、アメリカのレスリング業界紙「レスリングオブザーバー」で年間最優秀レスラーなど、国内外の賞を総なめ。そして1.4東京ドームでは挑戦者・鈴木みのるに勝利し、連続11回というIWGP王座防衛新記録を達成した。

 1月31日にオーナー会社がカードゲームメーカー大手のブシロードグループパブリッシングに交代。突然の発表に業界は騒然としているが、棚橋はこのことも「チャンス」と捉えている。
「苦しい時期を支えていただいたユークスさんには感謝しかないです。今年の僕のテーマは『ジャンルを越える』。これからどんどんメディアでの露出を増やしていきたいです」

 「2011年プロレス界の顔」棚橋弘至が描く「2012年の新たな野望」とは何か。

(インタビュー日:1月23日/インタビュアー:茂田浩司)

昨年2月、仙台サンプラザホールで流した涙の理由とは?

1.4東京ドームでIWGP連続防衛を達成し今年もますます絶好調の棚橋、昨年2月の仙台大会に秘められた思いを今明かす 【t.SAKUMA】

――まず、2011年はプロレス界の賞を総なめしましたね。

「ありがとうございます! お客さんといろんな方に支えて貰ってのことなので嬉しいです。スポナビさんにも『楽しいことがなかった日は俺を見てください』を強く推して貰いましたし(笑)」

――名言だと思いますよ。「一日1回笑えばグッスリ寝られる」というから棚橋選手のブログ(「棚橋弘至のHIGH−FLY」)を見たら、棚橋選手自身はイメージを守りつつ、高橋広夢選手や渡辺高章選手に変顔をさせて笑いを取る、というシステムも素晴らしいです(笑)。

「ははは」

――ところで、棚橋選手自身は昨年の印象深い試合というと何になりますか?

「うーん……(考えて)、仙台ですかね」

――仙台ですか。

「口では『日本全国にプロレスを広めるんだ!』『盛り上がってるぜ!!』って言い続けてきたんですけど、唯一、僕の中で不安な土地が仙台だったんですよ」

――そうなんですか。それはなぜ?

「宮城県スポーツセンターが取り壊されてから、Zepp Sendaiというライブハウスを借りてやっていたんですね。確かにパンパンに入って、じっと真剣に見てくれてるお客さんたちなんですけど、盛り上がりは今一つない感じで。そういう土地で昨年2月のサンプラザは満員になってすっげえ盛り上がったんですよ。それが本当に印象深くて、お客さんの歓声を聞いてリング上で泣きましたね」

――小島選手相手にIWGP王座を初防衛して、試合後に流した涙はそういうことだったんですね。

「そうですね。僕、本当に若手とか中堅の頃、試合で何をやってもウンともスンともお客さんの反応がない時代があったんです(苦笑)。すっげえ落ち込んで、試合後に『お通夜みたいな試合をしてしまった』と、とても不謹慎な発言をしてしまった土地なんですよ」

――ああ……。それだけ絶望的な気持ちになっていたんですね。

「はい。その時は『お客さんは何を見にきているんだろう?』『俺は何も悪くないぜ』的な言い方をしてしまって。でも、それは『自分の盛り上げる能力が足りなかったんだ』と思い直して、昨年は仙台で『全力プロモーション』(※)をして、超満員の客席が盛り上がっているのを見たら自然に泣けてきましたね」
(※棚橋自ら巡業先の様々なメディアやイベントに出演して「会場に見に来て下さい!」とPR。休日返上で奮闘する様子は公式ブログ『棚橋弘至のHIGH−FLY』にて)

マイナスからの逆転人生、明かされる結婚秘話

プロレスも、人生も、いつだってマイナスから大逆転してきた 【t.SAKUMA】

――いい話ですね。棚橋選手の場合、そういう感動ストーリーが必ず「やらかしたこと」から始まってるのがいいですね(笑)。

「僕、いっ〜ぱいやらかしてるんですよ(苦笑)。マイナススタートからマクるのが好きなんです。プロレスもそうだし、人生もそうだし」

――ああ〜。

「試合中もね、ずっと攻め続けることをしたってクソ面白くないし。こう駆け引きがあって、ピンチがあって、そこからの逆転があるのが面白さ、醍醐味だと思うんです。……ま、知らない間にピンチに陥ってることが多いんですけどね(笑)」

――(笑)学校では勉強もスポーツも「勝ち方」ばかり教えますけど、人生で本当に大事なのは「負けた時にどう立ち上がるか」を知ってるかどうかだと思うんですよね。

「まさにそうですね。挫折はいっぱいありますからね。高校とか中学の受験で不合格だったりとか、失恋とか。そこからいかに立ち上がるかなんですよね」

――10代での失恋は心に刺さりますねえ。

「そのことが頭の中の8割、9割を占める時期ですからね(笑)。僕、中学校の時にどうしても好きな子がいて、2か月に3回ぐらい告白して」

――おお〜。

「で、フラれて、フラれて、フラれて(苦笑)。高校は別になっちゃって」

――あらら。

「で、社会人になって、プロレスラーになって、地元に帰った時にまた出会って」

――ええ〜!?

「今、俺の嫁さんです(ニッコリ)」

――おおお〜!!

「やりましたー!(両手を突き上げて) こんだけ好きだったら浮気しないだろうな、と思って(笑)」

――凄いな〜。ん?

「ま、ヤンチャな時期もありましたけど(苦笑)いろんなことがあったからこそ今の自分がいるのかなとも思いますし」

思い出の仙台防衛戦から丸1年、今年はALL TOGETHER

昨年8月27日のALL TOGETHERはプロレス界が1つになった日だった 【前島康人】

――そうですね。ツイッター等でも本当にネガティブな言葉や情報で溢れてますけど、そこをどう乗り越えるかが真の人間力かな、と。

「それはありますね」

――特にプロレスはこれまで散々言われ続けてきましたね。

「そうなんですよね。パワーのある言葉を使いたいですね。そういう言葉を選んで」

――プロレスの持つパワーを見せつけたのが昨年8月の「ALL TOGETHER」でしたね。各団体にそれぞれスケジュールがある中でよくぞここまで揃った、という。

「震災を受けてみんなが何かをやらなくてはいけないという思いを持っていた時に、新日本の対応がすっごい迅速だったんですね。今だから言えますけど、すぐ他の団体にバッバッと声をかけて『テーマ曲を作るからすぐ集まりましょう』と呼びかけて」

――なるほど。「王者トリオ」でリングに上がった時、満員の観客を見て感慨深いものはありましたか?

「ありましたね。コンセプトがプロレスを見ることによって義援金が発生するという。好きなものにお金を使って、それがみんなの助けになるということがよかったですね。今年も2月19日に仙台でありますから」

――仙台サンプラザホールでの「ALL TOGETHER2」ですね。

「ちょうど1年前ですね。小島選手とのIWGP戦が2月20日だったんで。丸1年ですね……」

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著者プロフィール

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

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