棚橋弘至が描く「2012年の新たな野望」=独占インタビュー

茂田浩司

連続ドラマでありつつ1話完結、「仮面ライダー」のようなプロレスを

連続ドラマでありつつ1話完結、棚橋が目指すのは「仮面ライダー」のようなプロレスだ 【t.SAKUMA】

――ところで1.4東京ドームを見るとお客さんの中に、最後に「愛してま〜す!」と叫ぶまでが新日本の大会、というのが確実にあるなと思いました。

「ふふふ、僕が形を作っちゃったんで(笑)。あれは新日本の形というよりも僕の形です。最後、エアギターを弾いて、お客さんとハイタッチして『愛してま〜す!』を言う、という」

――つまり、棚橋選手からIWGP王座を奪うということは「愛してま〜す」をやりたいお客さんの期待感まで奪ってしまう、という。

「そうですよ、これはハードル高いですよ(ニヤリ)。ただ、あくまで試合ありきなんで」

――はい。

「いつも『試合を盛り上げるぜ!』と思ってやり続けてきたらこうなっていたんですけどね。ただ、俺はそれだけでは終わりたくなかったんですよ」

――ほお。

「特にビッグマッチだけじゃなくて、地方会場で俺がいつも思っているのは『いつも見てくれてるファン』を相手に試合を始めるんじゃなくて、初めて来た方でも分かるように、初めて来た方も楽しめる『丁寧なプロレス』をしたいんですよね」

――ああ〜。

「例えば携帯やインターネットでずっと追ってる人は今こいつとこいつが抗争してて、とか知ってますから試合中に突然喧嘩したり、バチバチにやり合い出しても分かると思うんです。でも、初めて見た人は『なんであの二人、急に怒ってるんだろ?』って思いますよね。そうならないように、初めて見た人も楽しめて、ずっと見てる人はもっと楽しめて、っていうことを心がけてます。ちょっと説明が難しいんですけど……(苦笑)。連続ドラマでありつつ、1話完結である『仮面ライダー』のような(笑)」

――なるほど! 分かりやすいです。

「それが一番大事だと思うんです。『俺たちはタイトルマッチに向けて前哨戦をやってんだ。そんなの知らねえよ』って、それはプロとしてダメだと思うんですね」

やっぱりライブ! AKBもプロレスもライブが一番面白い

プロレスはやっぱりライブでしょ! 【t.SAKUMA】

――その「分かりやすさ」でいえば、棚橋選手の体はどんな場に出ても「プロレスラーは凄い体だな」と思わせる武器ですね。昨年は「年間300ワークアウト」を達成して。

「302回行きました!(笑) 試合して、全力でプロモーションして、それで月25回、週6トレーニングです!(笑)」

――完全休養日がほとんどないんですよね(苦笑)。「年間300回」はプロ13年目で初の達成だとか。

「いや〜、後半は『今年出来ないと絶対に出来ない!』と思いながら意地だけでやりました(苦笑)。鍛える場所を変えていくんでオーバーワークになることはないんですけどね」

――ボディビルダーがやる「夜中に起きて栄養補給」もされるんですか?

「若手の頃にやってました。寝る前に水分とプロテインを大量に飲むと、3時4時にトイレで起きますからその時に枕元に作り置きしたプロテインを飲むんです。その代わり結構虫歯になりました(苦笑)。体作りの代償はデカかったです(苦笑)」

――現在も?

「いえ、今は寝る前に吸収がゆっくりなプロテインを飲んでおくので、夜中に起きることはしてないですね。でも、まだまだ鍛えていきますよ」

――えっ、もっとですか?

「やっぱりたまに誘惑に負けてジャンクフードとか食べてしまうので(苦笑)。今、体重は100kgちょうどで、一番大きな時は110kg。ただそれだとポチャっとしたので絞ったんですけど、腕がまだ細いし、背中ももっと広げてデカくしたいですね」

――そのデカい体と現在のシャープな動きは両立できるんですか?

「出来ます(キッパリ)。ボディビル的な造形美を求めつつ、実際の動きに対応しながらやってるので。練習をして、体の柔軟性を高めながらトレーニングすれば」

――ハードルが高いですね。

「でも『プロレスのチャンピオンってどんな体してるんだ?』という目で見られますし、その時にその辺にいるような体ではダメだし、プロレスの名誉に関わりますから」

――人前に出る職業の人は「常に見られている意識」って大事ですね。

「そうですね。今年はもっとメディアに出たいですし、もっと有名になりたいです。プロレスでいくら盛り上げても響く範囲は限られているんで、全くプロレスに関心のない人が『こいつ誰だ?!』って思って貰えるように。それにはメディアなんですよね」

――常々おっしゃってますけど「一度会場に来て貰えば『面白い!』と思わせる自信があるんだ」と。

「はい、試合には自信を持ってますから。やっぱりライブなんですよね。この前、AKBのコンサートにいって一発で好きになりました、特にチームBが(笑)。それまでも好きだったんですけど、やっぱりライブを見ると本当にいいんですよね〜。ぜひ『新日本プロレス』もライブで見てほしいと思ってます」

昔はテレビがゴールデンであったから? だからなんだよ!

昔はゴールデンでTV放送があったから……そんなのはただの言い訳なんだ 【t.SAKUMA】

――1.4の鈴木みのる戦はこれまでのIWGP戦とはまた違って、緊迫感がありましたね。

「違った感じでしたね。でも、俺としてはちょっと盛り上げ切れなかったな、というのがあります」

――1.4で一番盛り上がったのが「武藤敬司選手の『トライアンフ』での入場シーン」と言われてます。それについては?

「ひたすら悔しいですね。でもあきらめないですよ。俺、あきらめることが一番嫌いで。『こういう時代だから』とか『昔はテレビがあったから』とか聞くと、だからなんだよ、って思います。今はあきらめろ、っていう風に聞こえるんですけど、そういうのは言い訳なんです」

――なるほど。

「時代が違う、とか、何かのせいにするのが一番嫌いです。それだったら自分の力不足、俺のせいなんだ、と思った方が納得いきます」

――他人のせいにしてるうちは自分の成長はないですもんね。

「それが言いたかったんです(ニッコリ)。そればっかり考えてますよ。『昔はテレビがあったから』『ゴールデンだから』って、それで納得してしまったら負けですから」

2.12“レインメーカー”オカダ戦ではパーフェクトピッチングを見せる!

まずは2.12大阪、オカダを完ぺきに封じ込める! 【t.SAKUMA】

――2月12日(大阪府立体育会館)にはIWGP王座防衛戦が控えてます。相手は「レインメーカー」オカダ・カズチカ選手。当初、挑戦者がオカダ選手であることに強い不満を持っていたわけですけど。

「いや、変わってきましたよ。タイトルマッチの盛り上がりは『挑戦者ありき』のところがあるじゃないですか。『どんな凄いヤツが来るんだろう?』って。その挑戦者として2011年は凄いメンバーと闘ってきたんですけど、1.4のお客さんの反応を見てもオカダは未知数の部分が多くて、それでこのカードが組まれるということは『チャンピオンありき』になってきたな、と。フフフ」

――おお!

「未知数の相手だから一人で盛り上げないといけないんでキツいですけど(苦笑)これは燃えますね。俺に対する『棚橋、頼むぞ!』という期待以外の何物でもないわけですから。ここ数年、IWGPではなかったことですね。『IWGPは刺激的なマッチメイク』ではなくて『棚橋が王者ならやってくれる!』っていう強い信頼感ですから! これは団体が力を付けないと出来ないカードなんですよ」

――実際にオカダ選手と肌を合わせていかがですか?

「アイツ、若いですけど(24歳)中学校卒業してすぐこの業界に入ってるからキャリアは7、8年あるんで落ち着いてます。ただ、こなれ過ぎてるんですよ。だから、手も足も出させないような試合をして『うぎゃー!』って悲鳴でも上げさせてやろうかなって思ってます(ニヤリ)。そうしたらアイツの本当の感情、悔しさとかが出てくるんじゃないかな。初回から1点もやらずにパーフェクトピッチングを見せつけてやろうかと思ってます」

――おお、それは「2011年の棚橋弘至」にはなかったバージョンですね。

「ないですね。ただ、もうすでに結構な先制打は喰らってるんですけどね(苦笑)」

――前哨戦のタッグで連日喰らってますよね(苦笑)。

「完封してやろうと思ってたら、気づいたら先制されてて今も首がすごく痛いですけど(苦笑)。でもタイトルマッチではあいつとの違いを見せつけてやりますよ」

――では最後に、スポーツナビ読者に向けてメッセージをお願いします。

「今年、俺のテーマは『ジャンルを飛び越えろ!』なんです。プロレスというジャンルを飛び越えて、いろんなところに出て行きますので、スポナビ読者の皆さんの力をお借りして棚橋弘至をもう一つ上のステージに連れていってください。そして会場で待ってます。スポナビ読者の皆さん、愛してま〜す!!」
■新日本プロレス「THE NEW BEGINNING」
2月12日(日)大阪・大阪府立体育会館 開始17:00

<第8試合 IWGPヘビー級選手権試合 60分1本勝負>
[王者]棚橋弘至
[挑戦者]オカダ・カズチカ
※棚橋は12度目の防衛戦

<第7試合 スペシャルシングルマッチ 30分1本勝負>
内藤哲也
中邑真輔

<第6試合 IWGPインターコンチネンタル選手権試合 60分1本勝負>
[王者]田中将斗
[挑戦者]後藤洋央紀
※田中は4度目の防衛戦

<第5試合 IWGPタッグ選手権試合 60分1本勝負>
[王者組]天山広吉、小島聡
[挑戦者組]ジャイアント・バーナード、“ザ・マシンガン”カール・アンダーソン
※天山&小島組は初防衛戦

<第4試合 イリミネーションマッチ 時間無制限>
真壁刀義、永田裕志、井上亘、タイガーマスク、KUSHIDA
鈴木みのる、高山善廣、ランス・アーチャー、TAKAみちのく、タイチ
※第4試合にて行なわれるイリミネーションマッチは通常のタッグマッチ形式で試合を行ない、敗れた選手から退場。最後まで一人でも残ったチームを勝ちとする。また試合権利のあるものがトップロープを超え、場外に着地した場合は退場となる「オーバー・ザ・トップロープ」ルールを採用とする。

<第3試合 IWGPジュニアタッグ選手権試合 60分1本勝負>
[王者組]プリンス・デヴィット、田口隆祐
[挑戦者組]デイビー・リチャーズ、ロッキー・ロメロ
※デヴィット&田口組は初防衛戦

<第2試合 6人タッグマッチ 20分1本勝負>
獣神サンダー・ライガー、キャプテン・ニュージャパン、タマ・トンガ
矢野通、飯塚高史、石井智宏

<第1試合 タッグマッチ 20分1本勝負>
本間朋晃、キング・ファレ
高橋裕二郎、YOSHI−HASHI

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著者プロフィール

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

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