鹿島に帰ってきたジョルジーニョ“監督”=その情熱が鹿島に変革をもたらすか!?

田中滋

大迫ら若手選手の台頭に期待

ジョルジーニョ新監督が期待を寄せる大迫(右)と興梠。得点力不足解消には彼らの成長が必要不可欠だ 【写真:徳原隆元/アフロ】

 しかし、選手と接する姿を見ていると厳格なだけではない。47歳とまだ若く、現役を引退してから10年しかたっていないこともあって、体も動くせいか、選手との距離感は非常に近い。小笠原満男や岩政大樹ら、中心選手と積極的にコミュニケーションを図ってチームの実状を把握しただけでなく、空き時間には他の選手たちと一緒になってボールを追いかける姿も見られている。

 監督自身も、チームはファミリーであることを強調する。

「この鹿島アントラーズというのは、昔から“ファミリー”という言葉を常に掲げてきました。ファミリーというのは、ただクラブハウス内での出来事だけでなく、それ以外の部分でも関わることであって、互いに気を遣いながら、支え合いながらできれば、と思っています」

 とはいえ、鹿島は世代交代に直面し、チームを再建している真っ最中だ。近年、ずっと悩まされている決定力不足に解決策を見いださなければならない。昨季のリーグ戦を振り返ってみると、レギュラー格だった興梠慎三がシーズン4点、大迫勇也が5点と全く振るわず、ベンチからのスタートが多かった田代有三が12点と気を吐いたものの、出場機会を求めて神戸へ移籍している。ジョルジーニョ新監督もその問題点については、十分に認識していた。
 「サッカーの醍醐味(だいごみ)のひとつはゴールを獲ることです。昨年の鹿島の試合を11試合ほど見ましたけれど、チャンスをつくる創造性というのは非常に高いものを持っています。しかし、最後の得点のところで、落ち着きだったり自信だったりというものが足りない。そのせいでなかなか得点に結びつけることができませんでした」

 しかし、その表情は明るい。「FWの選手の能力が低いと考えてはいません」と、選手たちへの信頼を示す。

「大迫選手は高い能力を持っていますし、もっと成長できるものを持っています。興梠選手についても運動量が豊富で、縦にも横にも多彩な動きを持つ選手だということも分かっています。そしてジュニーニョが加入したことで、彼の得点力がチームの力になってきます。その他の新加入の選手も含めて、僕は大いに期待しています。前の選手というのは自信を持っているか持っていないかで大きな差があります。自信を持たせる作業が大事になりますし、それは練習の積み重ねになると思います」

 FW陣で鍵を握るのは、川崎フロンターレから移籍したジュニーニョだろう。しかし、クラブとしてはエースFWとしての活躍を期待しているわけではない。それは、託された背番号が18番ではなく8番であることからも分かる。8といえば野沢拓也が付けていた番号だが、その後継者として期待したのではもちろんなく、かつてジョルジーニョとともにプレーしたマジーニョが、当時売り出し中だった柳沢敦(現・ベガルタ仙台)を支えゴールを量産させたことをイメージしてのものだ。つまり、J1で通算110ゴールをあげたジュニーニョには得点の量産というよりも、興梠や大迫といった若手の覚醒(かくせい)を手助けする役割が期待されている。

 もう一つの問題点である野沢が抜けた中盤についても、新監督は痛手は感じていたが、システム変更や選手のポジションを動かすことで対応できると自信を示した。
「確かに彼が出ていったことで質が落ちることを懸念されるかもしれません。ほかにいる選手たちが補っていかないといけません。システムでも4−4−2だけでなく4−3−3も考えられるし、いまは小笠原選手がボランチをやっていますがもともとはハーフの選手でしたので、そこに戻してプレーすることもできます。それに本山選手もいますし、遠藤(康)選手もだいぶ成長してきました。あとは安定して力を発揮することができれば、野沢選手の変わりも務めることができると思いますし、その他の若い選手の台頭にも期待してます」

チームには活気が満ちている

 チームが始動したとはいえ、現在の練習内容は体力測定が主。新進気鋭の若手監督の手腕が本格的に披露されるのは、2月6日から始まる宮崎合宿となるだろう。具体的な戦術面での変更や、戦い方が見えてくるのもまだまだ時間がかかるはずだ。
 しかし、監督が代わり、ポジションの序列が白紙になったことでチームに活気が満ちている。今季はアジアチャンピオンズリーグに出場することもないため、日程的には十分に余裕もある。毎日の練習を勝ち抜いた選手がピッチに立つことになるだろう。

 かつてジョルジーニョが選手として在籍したときは、毎日の練習がその積み重ねだった。その激しさを経験し、競争を勝ち抜いてきた選手が、小笠原であり、本山、中田浩二なのである。ベテランが再び輝きを取り戻し、期待を背負ったFWが覚醒し、若手選手が躍進を遂げる。ジョルジーニョがいたのはそういう時代だったのである。

 ジョルジーニョの情熱がもたらすものは、監督になっても変わらないはずだ。

<了>

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著者プロフィール

1975年5月14日、東京生まれ。上智大学文学部哲学科を卒業。現在、『J'sGOAL』、『EL GOLAZO』で鹿島アントラーズ担当記者として取材活動を行う。著書に『世界一に迫った日』など。

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