鹿島に帰ってきたジョルジーニョ“監督”=その情熱が鹿島に変革をもたらすか!?

田中滋

「現役のとき以上の結果を残したい」

鹿島に復帰したジョルジーニョ新監督(右)と川崎から移籍したジュニーニョ。二人のブラジル人が鹿島を変えられるか 【写真は共同】

 1月30日、県立カシマサッカースタジアムで行われる新加入記者会見には多くの報道陣が詰めかけていた。普段の試合開催日であれば、来賓・関係者用の入り口となる天井の高いロビーには、深紅のカーペットが花道をつくっている。壇上のテーブルを鹿島アントラーズのチームカラーが彩り、その背後にも大きなエンブレムがそびえるなか、たくさんのTVクルーや記者たちが新監督の登場をいまか、いまかと待っていた。

 そして、この日の主役が定刻通りに姿を現す。袖から壇上に登るとき、報道陣にチラリと視線を向けたが、その視線は驚くほど柔らかく、余裕さえ感じさせる。

「まず、自分がここにいることを光栄に思っています。現役のときには、鹿島とともにいい歴史を刻むことができましたので、また新たな立場で同じような、あるいはそれ以上の結果を残すことができればと思います」

 ジョルジーニョが、監督として鹿島に戻ってきた。

すべてをサッカーにささげる覚悟を

 監督としての初日は、所信表明を告げるには絶好の機会だ。前任者であるオズワルド・オリベイラは、得意のビデオ編集技術を生かし、自分がやりたいサッカーがイメージできるような映像を過去のチームなどから集め、選手たちに示した。そして、そのイメージ通りの攻守の切り替えの早い自身の理想とするチームをつくりあげ、5年間で国内タイトルを6度も獲得する、黄金時代を築き上げたのである。
 ジョルジーニョは選手たちに何を求め、何をもたらそうとしているのか。一番強調したのは、“情熱”だった。

「それぞれの監督や指導者には、それぞれに好きな指導やシステムがあると思います。当然ながら、選手の状態、出場できる選手を見極めなければなりませんが、われわれブラジル人監督は4−4−2からのスタートになります。あとは選手の配置をいろいろな状況に合わせて変えることもあるかと思います。ただ、一番のベースというのはサッカーに対する情熱です」

 サッカー選手が現役生活を送れるのはごく短い期間だ。主な選手であれば10年から15年くらいプレーできるだろう。しかし、それもごくごく限られた人数だ。さらに、そのなかで勝者でいられるのはほんの数パーセントに過ぎない。しかし、ジョルジーニョはプロサッカー選手であるだけでなく、勝者であることも選手たちに求めた。

「ただサッカー選手であるのと、サッカー選手であるのと同時に勝者でもあり、多くのタイトルを獲得したというのとでは、大きく違ってきます。いかに現役生活を密度の濃いものにするか、結果を多くして生きるか、というのは大切なこと。今日の午前中にも選手たちに話しをしました」

 その象徴が集合時間の変更だ。オリベイラ体制のときには練習開始時刻にクラブハウスに到着していれば問題なかったが、ジョルジーニョは練習の30分前に集合することを課した。いい練習をするためには、いい準備が必要ということだろう。そのためには前日の夜からいい睡眠をとらなければならず、単に時間を早くしたわけではなく、すべてをサッカーにささげる覚悟を選手たちに問うたのだった。

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著者プロフィール

1975年5月14日、東京生まれ。上智大学文学部哲学科を卒業。現在、『J'sGOAL』、『EL GOLAZO』で鹿島アントラーズ担当記者として取材活動を行う。著書に『世界一に迫った日』など。

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