引退撤回の石川直生「勝ってすべての辻褄を合わせる」

Krush実行委員会

引退を撤回しKrush−60kg王座に挑戦する石川 【Krush実行委員会】

 1月9日(月・祝)、「Krush.15」後楽園ホール大会にて−60kgタイトルマッチに出場する石川直生に直撃インタビュー! 衝撃の引退発言から約3カ月、王者・卜部弘嵩の持つベルトに挑戦する石川はどんな想いを持って、今回のタイトルマッチに挑むのか? 

■JBスポーツで練習を始めて、3分3R用の戦い方に変わった

――試合に向けての仕上がりはいかがでしょうか?

「すごくいいですね。今は追い込みと減量で疲れている時期なのですが、コンディションはいいので、試合に向けた調整が上手くなっているんだと思います」

――前回の試合が終わってからJBスポーツボクシングジムで練習するようになったそうですね

「僕とJBスポーツの山田(武士)さんの間に入ってくれた人がいて、山田さんを紹介していただきました。初めて山田さんと会った時に、僕の方は山田さんに対して心がつながった感じがしたんです。それで約1カ月くらいですが、練習させてもらうようになりました。すごくキツい練習なんですけど、充実感がありますね」

――DREAMで活躍する川尻達也選手や高谷裕之選手など、様々なジャンルの選手が山田トレーナーの下でトレーニングしていますが、石川選手にとってはどういった場所ですか?

「山田さんは男が男に惚れる、すべてに付いて行ける、そういう人物なんです。僕には見事にハマりましたね。あそこで練習しているメンバーは、みんな自分のジャンルや団体を背負っている人間ばかりで、でも練習している時はただのオス。練習中はオス同士が黙々と競い合っているだけで、本当にみんなギラギラしています。練習がハードで他の選手たちとゆっくりコミュニケーションをとる余裕はないんですが、同じ場所にいて、同じ練習をしているだけで、僕にとっては大きな刺激です」

――技術的な部分ではどういう部分に成長を感じていますか?

「今までの石川直生は倒れてから焦るように巻き返すタイプの選手だったと思います。だから逆転勝ちすることもあれば、そこまで辿りつかない事もある。簡単に言うと3分5Rのキックボクシング的な戦い方です。でも今回はそれを変えてきました。自分がキックボクサーだというベースを変えるつもりはないですが、3分3Rで自分を出し尽くす、そういう戦い方を極めてきました。試合を見てもらえれば、僕が3分3R用のファイトスタイルに変わったことが分かりますよ」

――ファイトスタイルそのもの変化があったということですね。卜部選手対策はいかがでしょうか?

「ミットの持ち方、距離感、癖など、JBスポーツに行く度に山田さんが卜部弘嵩になって指導してくれるんですよ。そういう細かい部分でも僕が試合でやりたいことを山田さんが現実に近づけてくれています」

今まで以上に石川直生らしい試合をする

昨年9月の“狂拳”竹内裕二戦後に突然、引退を表明した石川 【t.SAKUMA】

――昨年9月の“狂拳”竹内裕二戦後に突然の引退宣言があり、それを撤回する形で今回のタイトルマッチが組まれました。どういった心境でこの試合を受けたのですか?

「竹内戦後の『引退する』という発言は、あの時の僕の本当の気持ちでした。試合の前後に人間・石川直生にとって色んなことがあって、それを考えて出した答えです。でもあれから時間が経ち、僕の中で見えてきてことがあって、それは自分自身が辞めることに執着していたんだなということ。でもその執着を外して客観的に自分のキャリアや人生を振り返った時に、辞めるのは今じゃないだろうと思ったんです。

 どこかで死ぬことを覚悟している人間と、前だけを見ている人間を比べたら、極限の状態になった時、前だけを見ている人間の方が強い。だからもう死ぬことを考えるのはやめました。それを考えるのは死ぬ瞬間だけでいいんです。そう考え方が変わってからは気持ちが軽くなって、青春塾の竹島(伊佐夫)会長とKrushに『また試合をさせてください』という話をしたんですね。ちょうどその後にタイトルマッチのオファーがあって、オファーを受けました」

――石川選手の心境が変わった一方で、引退を口にした人間がすぐにタイトルマッチはおかしいだろう?という意見もあると思います

「確かに卜部選手も『引退を口にした人間に負けるわけにはいかない』と言っていましたよね。でも俺の今の気持ちは変わっているし、引退した選手が復帰するのとは違うと思うんですよ。開き直るつもりはないですけど、引退を撤回したことでより一層、自分のキャリアに胸を張れる力強さが加わりました。相手がどう俺のことを思っているかは分からないし、失礼な気持ちにさせたかもしれない。でもリングに上がったら勝ち負けしかないわけで、勝てばいいんですよ。俺は勝ってすべての辻褄を合わせます」

――卜部選手は2010年12月に石川選手に判定勝ちしてから負けなしで、KrushのチャンピオンとしてKrushを引っ張る選手の一人になりました。卜部選手にはどんな印象を持っていますか?

「本当に素晴らしい選手だと思います。20代前半であれだけ安定感があって気持ちのレベルも高い。自分の20代前半と比較したら比べものにならないし、彼らの世代は時代が生んだ格闘技界の宝物だと思います。でも俺は彼らからすればデタラメなキャリアを積んできた選手かもしれないけど、だからこそ得てきたものがたくさんあるんです。今回もし卜部選手が俺をKOしてベルトを防衛したら“本物”だと思います。でも俺はその卜部選手を倒しに行ってベルトを獲るつもりです」

――前回の竹内戦の前に、石川選手は「俺が見せられるのは熱い試合しかなくて、熱い試合をしてお客さんを総立ちにすることだけ」と話していました。今回はどんな試合を見せたいですか?

「あの試合から3カ月ちょっとしか経っていなくて、俺が劇的に大きく変わることはないと思います。相変わらずベテランらしい試合は出来ないし、今更、技術で見せるようなことも出来ません。やっぱり俺が出来るのは熱い試合を見せることだけです。でも今回は必死にその精度を上げてきました。必ず今まで以上に石川直生らしい試合をします」
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