バルサ指導者が語る最強の理由=世界最高の下部組織が生んだ究極のサッカー
後半開始前、シャビが守備陣に「10メートル下がれ」と指示
カンテラでセスクやピケを指導したカルレス、プジョルのパーソナルコーチのダビッドにバルサ最強の理由を聞いた 【イースリー】
カルレス それは非常に難しい質問です。バルサは20年の年月をかけて、すべての選手が同じビジョンでプレーする方法を学んできました。もしバルサに勝ちたいのなら、同じように時間をかけて、ある1つのコンセプト、哲学のもとに、すべての選手がそのプレーをできるような下部組織を作ることです。バルサと同じプレーモデルを採用する必要はありませんが、すべての選手が同一のコンセプトでプレーできるチームを作るのです。バルサの選手たちは「チームとしてプレーすること」について、子供のころから学んできています。ほかのチームにも素晴らしい選手はたくさんいますが、試合の中で選手がどこにポジションをとって、どう動かなければいけないかに関して、共通理解を持つチームはほとんど存在しません。そこにバルサのストロングポイントがあるのです。
――バルセロナのカンテラで育ったグアルディオラ監督は、チームに何をもたらしていると考えますか?
カルレス ペップはバルサのサッカーにおけるプロフェッショナルで、選手よりも豊富なアイデアを持っています。もしペップが監督を辞めることがあれば、今のように勝てるかどうかは分かりません。ペップの後を継ぐ可能性が高いのがシャビです。バルサにはタレントがそろっていますが、サッカーを深く理解していて、味方に指示を出してチームを操っているのはシャビです。クラブW杯決勝でも、後半が始まる前にシャビがディフェンスの選手に「10メートル下がれ」と言いました。シャビはディフェンスラインを下げさせることで生まれる、ブスケツとの間のスペースを使いたかったのです。ペップはシャビが味方に指示を出すことを容認していますし、チームメートもシャビの指示を尊重しています。シャビは現役時代のペップと同じように、ピッチ上の監督なのです。スペインでは、シャビが試合中、周りの選手に絶え間なく指示を出している動画が出回っているほどです。
対策を講じられても先へ先へ進むことができる
バルサのカンテラで育った選手たちは、トップチームに昇格した時に、どんなプレーをすればいいかが分かっています。ほかのチームとの違いはそこにあります。多くのチームは選手を集めて、そこからプレースタイルを構築します。一方、バルサは選手が集まった時には、みんなが同じ価値観を持っています。ほかのチームは「こういう方法でプレーをしましょう」と全員に伝えて、そこから始まるのですが、バルサはすでに全員が理解しているので、それをやる必要がありません。チームとしての土台ができているので、一般的なチームが3年かけて築き上げることに、最初の時点ですでに到達しています。そのため、次のステップに先回りして進むことができるのです。ほかのチームがバルサのサッカーに対して策を講じてきても、その先へ先へと進むことができます。これは20年かけて培ってきたアドバンテージです。
――クラブW杯優勝で名実ともに世界ナンバーワンのクラブになったわけですが、バルセロナの時代はしばらく続くのでしょうか?
ダビッド バルサがタイトルを取り続けることができるか、それは誰にも分かりません。ただ1つ言えることは、クラブW杯やチャンピオンズリーグ(CL)など、タイトルを獲得することだけを目指しているのではなく、バルサの哲学を世界中に発信していることが重要なのです。来シーズンのCLやクラブW杯でどこのクラブが優勝するかは分かりません。しかし、下部組織出身の選手を使って、世界で最もいいサッカーをしているチームがバルサであることは変わらないでしょう。バルサが世界で最高の下部組織を持つクラブと知られ、自分たちが作り上げてきたものが、世界のナンバーワンであると認められること。カタルーニャの人たちにとって、最も誇りに思うのはそのことなのです。
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