長いトンネルから抜け出したカカ=2年間の苦悩と復活への道のり

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けがさえ疑われた屈辱の1年目

カカは過去2シーズンを振り返り、相次ぐけがに「モチベーションを見失っていた」と明かした 【Getty Images】

「失望に支配された時期もあった。コンディションは最悪で、まるで足枷を付けてプレーしているようだった。体は重いし、股(こ)関節やひざなど、あちこちが痛む。当時の自分は、見え見えのプレーをする“並みの選手”になっていた。練習と治療に明け暮れても、一向に痛みは消えない。なぜなのか分からなかった。何度も泣いたよ。時に一人で、時に家族とともに。悲しくて、気力を失い、モチベーションを見失っていたんだ」

 レアル・マドリーのカカが先日、ブラジルのスポーツ番組「カジュル・プレグンタ」に出演し、相次ぐけがと不調に苦しんだ過去2シーズンを振り返るとともに、当時の心境を包み隠すことなく語った。

 09年夏、3年ぶりに会長に復帰したフロレンティーノ・ペレスの手により6800万ユーロ(約92億円)の移籍金で念願のレアル・マドリー移籍を実現したカカは、同夏に加入したクリスティアーノ・ロナウドとともに「新銀河系軍団」の象徴として新天地でのキャリアをスタートさせた。

 しかし、初年度からリーガとチャンピオンズリーグ(CL)で計33ゴールと孤軍奮闘したC・ロナウドとは裏腹に、カカのパフォーマンスは周囲の期待を大きく裏切るものとなる。原因はレアル・マドリー移籍前から抱えていた腰痛の悪化だった。

 シーズン序盤こそ攻撃の中心として存在感を示したものの、徐々に悪化する痛みに耐えられなくなったカカは11月末より約1カ月の離脱を余儀なくされた。復帰後もなぜか一向にコンディションは上がらず、徐々にファンとメディアから疑問の目を向けられ始めた矢先、今度は練習中に内転筋を負傷。その後2カ月近く戦列から離れると、徐々にファンの間では「カカは本当にけがをしているのか?」と疑う声まで聞かれるようになった。

「長いことサッカーを続けてきたけど、自分のけがを疑われた時ほど心が痛んだことはなかった」

 サッカー選手として初めて味わった屈辱についてカカが口を開いたのは、ようやく復調の兆しを見せ始めたシーズン終盤のことだった。

さらなる試練が待っていた2年目

 雪辱を期した翌10−11シーズンはさらなる試練とともに幕を開けた。ひざに痛みを抱えたままワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会に強行出場した代償として、チームの合宿に合流した直後に半月板と軟骨を手術する必要に迫られたのだ。

 半年にわたるリハビリを乗り越え、ようやく復帰を果たしたのは年明け早々の1月。その後は1年目と同じ状況が続いた。復帰2試合目のビジャレアル戦では途中出場で1ゴール1アシストと結果を出すも、初先発した翌週のアルメリア戦では判断の遅さや不用意なボールロストなどが目立ち、優勝が遠のく痛恨ドローの戦犯としてたたかれた。

 その後も好不調の波が激しいプレーが続く中、3月初旬にカカはある決断を下す。100%のコンディションに戻るまで試合には出ないと、自らモリーニョ監督に進言したのである。

「まるでロボットのように動きが硬かった」と本人が振り返る最悪のコンディションを改善すべく、カカは1カ月近く個人トレーニングに専念した。復帰後は徐々に復活を印象付けるプレーを見せ始めたものの、ほどなく始まったバルセロナとの4連戦ではリーガ、スペイン国王杯決勝、CLの第1レグまで全く出番なし。先発出場のチャンスを得たCL第2レグでも決定的な仕事は果たせず、最後まで先発組を休ませるためのローテーション要員という立場を変えることはできなかった。

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