タイトルマッチは3王者が揃って防衛に成功!=アウトサイダー

茂田浩司

宿敵・佐野との3度目の勝負を制し王座を防衛した吉永だったが納得はいかず 【田栗かおる】

 11月13日、横浜文化体育館でFIGHTING NETWORK RINGS主催「THE OUTSIDER 第19戦」が開催された。
 アウトサイダーの顔、吉永啓之輔や“ミスターアウトサイダー”黒石高大といった人気選手が顔を揃え、対抗戦も対日系ブラジリアン、対ロシア特殊部隊、そして3階級タイトルマッチと盛り沢山の内容に会場は3685人(主催者発表)の観客で埋め尽くされた。

吉永vs.佐野 3度目決着戦も僅差の内容に…

左ハイをヒットさせる吉永だが決着は判定に 【田栗かおる】

 メーンを飾ったのはキング・オブ・アウトサイダー吉永啓之輔の65ー70kgタイトルマッチ。挑戦者・佐野哲也とはこれまで1勝1敗で「しつこい。これで終わり。力の差を見せる」(吉永)とすっきりした決着を狙ったが……。
 吉永のプレッシャーに対して佐野はステップで距離を取ると、吉永がパンチやヒザで攻撃を仕掛けると組みついてテイクダウン。しかし吉永はすかさずフロントチョークを試みたり、下からプレッシャーを掛けるために佐野はテークダウン後にほとんど有効な攻撃ができないままブレイクが掛かりスタンドから再開。
 試合は「テークダウン」で見れば佐野だが、吉永のスタンドでのパンチやヒザ、そして2Rのフロントチョークと左ハイが有効なポイントとカウントされたようで判定は3−0で吉永。これには会場もザワついた。
 マイクを持った吉永は「みんなの言いたいことは分かるんで。アウトサイダーは判定じゃダメですよね。みんなの応援がある限り頑張るんで。アウトサイダー、最高!」と締めくくり、観客を納得させたが……。

 問題はタイトルマッチが「3分2R」ということだと思われる。王者、挑戦者ともに慎重な立ち上がりになる上に、今回はプロで試合をしている吉永と、アマチュアで豊富な経験を持つ佐野という実力者同士の対決。しかも3度目とあって手の内は知り尽くしており、二人が計6分間で完全決着させているシーンがイメージできない。
 試合後、この点を前田日明代表に聞くと「選手のレベルが上がってきてるからね。タイトルマッチではどちらかのラウンドを5分にするか、両方5分にするか。これは考えます」という答えだった。

対抗戦は好対照。ロシア特殊部隊の壁は高し

今回も圧倒的な力の差を見せつけたロシア軍 【田栗かおる】

 今回は二つの対抗戦が組まれた。一つは浜松の日系ブラジル人たちが作ったブラジリアン柔術チーム「HARD COMBAT」との対抗戦。前田代表自身「1つ勝てればいいと思ってた」というが、フタを開けてみればアウトサイダー軍の活きの良さが目立ち3戦全勝。中でも自衛隊出身のソルジャーボーイ一樹は力強いパンチとパウンドで相手の体力を削り、最後もパワフルなパウンドでフィニッシュ。前田代表も「パワーとスタミナがあるし、何よりも若さ(24歳)があるね」とソルジャーボーイを高く評価した。

 今回も圧倒的な強さを発揮したのがロシア特殊部隊「スペツナズ」養成ジムの選抜チームだ。前回3戦全勝でアウトサイダー軍を叩きつぶし、今回も2連勝を飾った(1試合はロシア人選手が負傷欠場)。特に、前回黒石をフロントチョークで破ったキリーフ・コンスタンティンは今回も左フックでわずか56秒の秒殺勝利。パンチの質が一人だけ違う、異次元の強さだった。前田代表も「全部のパンチは真っ直ぐに打っているようで“ストレートフック”で打ってくる。あれをやられるとその辺のプロもやられてしまうだろうね」と感心しきりだった。

来年1月「リングス出場者選考試合」を

自衛隊出身のソルジャーボーイ一樹はブラジリアン柔術軍を圧倒 【田栗かおる】

 アウトサイダーは埋もれている才能を発掘し、磨き上げる場。その先には「プロ」という目標があるが、アウトサイダーの選手たちには今、明確に見えている目標がある。それは「来年3月9日に再始動するリングスのリングに上がること」で何人かの選手がマイクで「リングスに上がりたい」とアピールした。
 アウトサイダーから何人の選手が3.9リングス再始動の大会に選ばれるのか。この出場選手について前田代表は「1月22日のバトルジェネシス(新宿FACE)でZSTとかいろんな選手を集めてやるんで」と現時点でのアウトサイダーからの「出場当確者」については明言を避けた。
 また、リングスでも活躍しそうな「ロシア特殊部隊養成ジム「スペツナズ」の面々だが問題も一つある。それは「体格」だ。
「みんな大きくて、ジムの中で一番軽いのが70kg。今回はその軽い選手たちを呼んだんですけど、それぐらいの体格の選手は他にいないですよ。ヘビー級はたくさんいるけど、日本人選手がいないからね(苦笑)。まず90kgぐらいの選手を呼んで、なかなか活躍の場がない大山峻護君とか重量級の選手にチャンスをあげたい。あとは宮田(和幸)とか、いろいろと声を掛けようかと思っていますよ」
 なお、次回のTHE OUTSIDER第20戦は来年2月12日、ディファ有明で開催される。

■THE OUTSIDER 第19戦
11月13日(日)神奈川・横浜文化体育館

【主な試合結果】

<第30試合 65−70kg級チャンピオンマッチ 3分2R>
“キング・オブ・アウトサイダー 格闘彫師”
[王者]○吉永啓之輔
(判定3−0)
“アウトロースナイパー リアル神代ユウ”
[挑戦者]●佐野哲也(同級1位)
※吉永が初防衛に成功

<第29試合 70−75kg級チャンピオンマッチ 3分2R>
“アブダビコマンダー”
[王者]○伊澤寿人
(延長判定3−0※本戦0−0)
“鳳凰天女 チームWEEDの斬込み隊長”
[挑戦者]●谷博幸(同級1位)
※伊澤が2度目の防衛に成功

<第28試合 60−65kg級チャンピオンマッチ 3分2R>
“寝ても立ってもフルボッコ 取手の拳帝”
[王者]○幕 大輔
(1R1分49秒 フロントチョーク)
“沖縄道場チーム 荒ぶる闘心”
[挑戦者]●安谷屋智弘(同級1位)
※幕が初防衛に成功

<第27試合 プロフェッショナルワンマッチ 65kg契約 5分2R>
“北九州 小倉の拳神”
△アパッチ小次郎
(判定0−0)
“キック名門・東海大学 ZSTのデスサイズ”
△金井塚信之

<第26試合 日本vs.ロシア対抗戦 3分2R> 
“コマンドサンボ提督技のマトリョーシカ”
○クラット・ピターリ(ロシア) 
(2R2分55秒 レフリーストップ)
“柔道四段 格闘技界のトリッキー・ガチャピン ”
●RYO

<第25試合 日本vs.ロシア対抗戦 3分2R>
“あまり私を怒らせない方がいい  シベリアの狂犬”
○キリーフ・コンスタンティン(ロシア)
(1R56秒 TKO)
“マッスルクールガイ”
●依光健太郎(パンクラスP’s LAB)

※日本vs.ロシア対抗戦 70kg契約 山本勇気(ZST)vs.ニコバガマエフ・バガマ(ロシア)はニコバガマエフの負傷により中止

<第24試合 日系ブラジリアン柔術軍団対抗戦 75kg契約 3分2R>
“法曹界の最強戦士 人権派 柔術弁護士”
○堀 鉄平
(判定2−0)
“ブラジリアン柔術 カルナバルボンバー”
●ウィリアム・オナヤ(ブラジル)

<第23試合 日系ブラジリアン柔術軍団対抗戦 77kg契約 3分2R>
“神速”
○ソルジャーボーイ一樹
(2R51秒 レフリーストップ)
“TEAM COMBATの若きプリンス”
●チアゴ・シオカワ(ブラジル)

<第22試合 日系ブラジリアン柔術軍団対抗戦 70kg契約 3分2R>
“沖縄道場 闘心の毒蛇”
○熊澤伸哉(闘心/第12回パンクラスネオブラッドトーナメントウェルター級準優勝)
(1R2分46秒 アームロック)
“ブラジリアン柔術セレソン”
●ヘンリ・カキウチ・ヴォルベリン(ブラジル)

<第21試合 シングルマッチ 65kg契約 3分2R>
“横浜義道会初代総長 濱の狂犬”
○黒石高大
(1R1分58秒 三角絞め)
●滝沢雄太
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著者プロフィール

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

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