全日本女子、負けから見えた追求すべき点 残り8試合を戦うために=バレーW杯

田中夕子

ワールドカップで、早くも2敗を喫した全日本女子。負けパターンを露呈した 【坂本清】

 4日に開幕したバレーボール女子ワールドカップ(〜18日、東京など)。第1ラウンドの3戦を終えて全日本女子の成績は1勝2敗。

「正直、厳しいとは思う。この3戦は、とにかく全部勝ちたかったです」

 第3戦(6日)の中国戦後に木村沙織(東レ)が発した、率直な思い。苦しい状況になることはわかっていたし、まだ残りは8試合もあるのだから、悲観してばかりはいられない。それでも、この2敗が重くのしかかるのはなぜか。

 中国を相手に、ミスによる自滅に近い展開と、2−1とリードしたところからの逆転負け。大枠だけを見れば、第1戦のイタリア戦の負け方とは違うように見える。だが、負けを招いた理由をよく見ると、敗れた2試合はこれ以上ない形で日本の負けパターンを露呈させるものであったことは否めない。

イタリアの戦略、“木村封じ”にはまった日本

木村を徹底的に封じたイタリア。ほかの選手のミスも誘発し、日本は自滅した 【坂本清】

 昨年のワールドグランプリ決勝ラウンド以降、ここ4試合、日本に負け続けていたイタリアは、攻守において日本の要である木村を封じることを第一の策として位置づけた。そのために、まずはサーブで徹底して木村を狙ってプレッシャーをかけ、攻撃に入るリズムを崩す。
 木村本人も「自分が対戦相手なら、絶対に(自分を)サーブで狙うはず」と言うように、サーブレシーブ、攻撃の中心でもある木村を標的にするのは決して想定外ではない。だが、自国開催のワールドカップとはいえ、エースであり、若手選手をけん引する立場として重責を担う木村に、イタリアが講じた策は見事なまでに悪影響を及ぼす引き金となった。

「コンビが合わないとか、調子が悪いわけでもない。相手のブロックもレシーブも見えていたけど、『まずはサーブレシーブを返さなきゃ』と気持ちばかり先行してしまって硬くなりすぎました。上がってくるトスに対して工夫もなく、ただ打つだけ。考える余裕がありませんでした」

 対角に入った江畑幸子(日立)はイタリア相手にチーム内最多の19得点を記録したが、これも江畑の調子が格別によかったからというわけではない。
「自分がバックにいる時、これまでの対戦ではバックアタックに対しても(相手が)多少はブロックに飛んできていたのに、今回は全部サオリさんについていた。そこで自分がもっと積極的に仕掛けていけばよかったけれど、そこまで持っていけないうちにミスで自滅してしまいました」

 決して特別なことではない。イタリアは「苦しい時、日本は木村で得点する」という、これまでの日本の勝ちパターンを封じただけだった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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