全日本女子、負けから見えた追求すべき点 残り8試合を戦うために=バレーW杯

田中夕子

中国戦で露呈したさらなる弱点

中国戦では、最終的に相手のペースに乱され、ミスを招いた 【坂本清】

 何が何でも初戦に勝ちたいと意気込みながら敗れたイタリア戦もショックは大きかったが、それ以上に大きなダメージとなったのは第3戦の中国戦だ。昨秋の世界選手権(東京)、今秋のアジア選手権(台北)で中国に敗れた日本は、イタリアが「対日本」に行ってきたのと同様に、徹底した中国対策、分析をしてこの試合に臨んだはずだった。

 まず両ミドルのクイックとそこに絡ませたライトからの攻撃を封じ、サーブで崩したら二段トスを打つ両サイドに2枚、3枚のブロックをつける。日本のサーブが走っている時には描く理想に近い展開に持ち込めていたが、攻めている時には見えずにいる弱点は、一度リズムを失うだけで簡単に露呈する。

 たとえば第2セット、15−12と日本が先行しながら、中国・王一梅のジャンプサーブ時に7連続失点を喫し、15−18と逆転された場面。コンビバレーを生命線とする日本は「サーブレシーブをセッターに返して、そこから攻撃を展開する」のが理想ではある。だが、男子選手のようなパワーを誇る王の、バックアタックさながらのジャンプサーブを「正確に返す」作業は言うほど容易ではない。見方を変えれば「サーブレシーブを正確に」ではなく、「サーブレシーブが崩れたらどうする」を追求すべきなのだが、今の日本はどうか。

 真鍋政義全日本女子監督はこう言う。
「日本には中国のように、乱れた状況で打ち切れるような絶対エースはいない。木村、江畑はよく頑張ったが、最終的に相手のブロックに捕まるか、ミスにつながる展開を招いてしまいました」

残り8試合、日本に欠けていたもの

 昨秋の世界選手権では主力であった山本愛(JT)、井上香織(デンソー)がケガで今大会に出場できないことは確かに大きな痛手ではある。だが、それだけがこの2試合の敗因ではない。決め切れない時にも「何とかしてくれた」木村が封じられた時、サーブレシーブで乱された時の攻撃の選択肢。そのどちらも、日本には欠けていたと認めざるを得なかった。
 
 とはいえ、まだ3試合を終えただけ。繰り返すようだが、残り試合は8つもある。世界ランクで上回るブラジル(世界ランク1位)、米国(同2位)との対戦を残していることを単純に考えれば、「正直厳しい」のが現実ではあるのだが、だからといって「もうダメだ」と諦めることも、悲観する理由もない。うなだれることなく、真っ直ぐ前を向いて、木村が言った。

「苦しい時だからこそ、今のメンバーでどうしたら勝ち切れるか。これからどう戦うかが、チームとしても、個人的にもすごく大事なことだから、このメンバーで頑張りたいです」

 崩れた後どう戦うか、チームのオプションを増やすための、絶好の機会だととらえればいい。

<了>

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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