ミルコ・クロコップが全てを語る=UFC137直前ロングインタビュー
「プロ意識を高く持つことに、幸せと誇りを感じるんだ」
ミルコはこれまでプロ意識を持たず試合に臨んだことは1度もない 【t.SAKUMA】
「軍人みたいな、教科書通りの生活をしている。アルコールは飲まないし、いつも同じ時間にベッドに入って、同じ時間にベッドから出る。全てのファイターには良い日もあれば悪い日もある。もちろん私だって試合に敗れることがある。ただし、試合への準備を怠ったことは、これまでに一度だって無い。たるんだ身体で試合に臨んだことはないし、伸びきった髪の毛のまま闘ったこともない。試合前にはきちんとヒゲも剃っている。プロ意識を高く持つことに、幸せと誇りを感じるんだ」
規則正しい、お手本のような生活をすることで、ミルコは格闘家としての鋭気を養っている。「毎朝6時に起床する」と彼は言う。
「午前10時まで寝ていいと言われても、夜中の2時までコーヒーを飲んでいたとしても朝の6時に起きる。昼寝をしようと思えばできるし、その後に仲間とカードゲームに没頭する時間だって作れる。だが、それは私の望む生活ではない。この6週間、私はスパーリング漬けだ……」。ここで、彼は突然話すのを止めた。考えをじっくりとまとめた後で、「もしもそんな規則的な生活が私にどうしても必要かと問われたら」と彼は続けた。
「生きるために必要なことではない。だが、こんな生活しか私は知らないし、こんな生活にしか幸せを感じることができない。それだけのことだ」
「勝ったときの、あの瞬間を味わいたい。今ではそれが全てのモチベーション」
すべては勝利の瞬間を味わうために 【Zuffa LLC via Getty Images】
「試合で勝利を決めた直後のあの瞬間、私は地球上で最も幸せな男になっている。なにも考えられなくなる。誰が見ているとか、誰が見ていないとか、そんなことは全く考えられない。試合後に支払われるファイトマネーのことも頭にない。勝利の余韻にひたすら浸っているんだ。もちろん、負けたときは真逆の気持ちになる。考えられる限りで最低の時間だ。勝ったときの、あの瞬間を味わいたい。今ではそれが全てのモチベーションになっている」
「唯一、今の私の頭のなかにあるのは、ロイ・ネルソンをどのように倒すか」
UFC137は復活の舞台となるか 【Zuffa LLC via Getty Images】
「UFCが再び私を呼ぶとは考えていない」とミルコは断言する。「私に限ったことではないが、ファイターはいつでも引退と隣合わせだ。選択肢のひとつになる。だが、敗北は選択肢の中にない、今回の試合ではそう言い切れる。別にロイを見くびっているわけではない。まさか! 彼は危険なファイターだし、世界中のファイターの脅威になりうる存在だ。私は勝つことを確信しているが、これは総合格闘技というスポーツだ。2人のファイターが金網に入ると、1人は必ず負けることになる。だから相手を侮辱したり、見くびったりはしない。本気で勝つとひたすら信じている。ロイが自分の勝利を信じているように、私も信じている。唯一、今の私の頭のなかにあるのは、ロイ・ネルソンをどのように倒すかということだけだ。それだけしか考えていない。そこから先のことを話そうというなら、ロイを倒してからだ」
大会前にも関わらず、長時間にわたるインタビューに、真摯な態度で応じてくれたミルコ。試合中と同じように、ほとんど表情を変えることのなかった彼だが、最後にようやく笑みがこぼれた。
「なにもかもを話したよ。牧師に打ち明けるみたいにね。これがありのままの私だ」