ミルコ・クロコップが全てを語る=UFC137直前ロングインタビュー

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「プロ意識を高く持つことに、幸せと誇りを感じるんだ」

ミルコはこれまでプロ意識を持たず試合に臨んだことは1度もない 【t.SAKUMA】

 ファイターの心理に迫るのはじつに興味深い。ミルコのような、20年近いキャリアを持つファイターは、特にそうだ。
「軍人みたいな、教科書通りの生活をしている。アルコールは飲まないし、いつも同じ時間にベッドに入って、同じ時間にベッドから出る。全てのファイターには良い日もあれば悪い日もある。もちろん私だって試合に敗れることがある。ただし、試合への準備を怠ったことは、これまでに一度だって無い。たるんだ身体で試合に臨んだことはないし、伸びきった髪の毛のまま闘ったこともない。試合前にはきちんとヒゲも剃っている。プロ意識を高く持つことに、幸せと誇りを感じるんだ」

 規則正しい、お手本のような生活をすることで、ミルコは格闘家としての鋭気を養っている。「毎朝6時に起床する」と彼は言う。
「午前10時まで寝ていいと言われても、夜中の2時までコーヒーを飲んでいたとしても朝の6時に起きる。昼寝をしようと思えばできるし、その後に仲間とカードゲームに没頭する時間だって作れる。だが、それは私の望む生活ではない。この6週間、私はスパーリング漬けだ……」。ここで、彼は突然話すのを止めた。考えをじっくりとまとめた後で、「もしもそんな規則的な生活が私にどうしても必要かと問われたら」と彼は続けた。
「生きるために必要なことではない。だが、こんな生活しか私は知らないし、こんな生活にしか幸せを感じることができない。それだけのことだ」

「勝ったときの、あの瞬間を味わいたい。今ではそれが全てのモチベーション」

すべては勝利の瞬間を味わうために 【Zuffa LLC via Getty Images】

 ここ最近のミルコは負けが続いているが、スピリットは失っていない。最近の試合でもそうだ。UFC128(3月20日)の最終ラウンドでブレンダン・シャウブ相手にTKO負けを喫したミルコは、試合後にクロアチアに帰ると、翌日にはジムでトレーニングを開始した。もしも彼がお金欲しさにオクタゴンに上がっていると思う人がいるのなら、それは間違いだ。

「試合で勝利を決めた直後のあの瞬間、私は地球上で最も幸せな男になっている。なにも考えられなくなる。誰が見ているとか、誰が見ていないとか、そんなことは全く考えられない。試合後に支払われるファイトマネーのことも頭にない。勝利の余韻にひたすら浸っているんだ。もちろん、負けたときは真逆の気持ちになる。考えられる限りで最低の時間だ。勝ったときの、あの瞬間を味わいたい。今ではそれが全てのモチベーションになっている」

「唯一、今の私の頭のなかにあるのは、ロイ・ネルソンをどのように倒すか」

UFC137は復活の舞台となるか 【Zuffa LLC via Getty Images】

 次のロイ・ネルソン戦でUFCとの契約を満了するミルコだが、オクタゴンで闘う最後の試合となる可能性はある。もしも負けたら、彼になにが起こるのだろう。
「UFCが再び私を呼ぶとは考えていない」とミルコは断言する。「私に限ったことではないが、ファイターはいつでも引退と隣合わせだ。選択肢のひとつになる。だが、敗北は選択肢の中にない、今回の試合ではそう言い切れる。別にロイを見くびっているわけではない。まさか! 彼は危険なファイターだし、世界中のファイターの脅威になりうる存在だ。私は勝つことを確信しているが、これは総合格闘技というスポーツだ。2人のファイターが金網に入ると、1人は必ず負けることになる。だから相手を侮辱したり、見くびったりはしない。本気で勝つとひたすら信じている。ロイが自分の勝利を信じているように、私も信じている。唯一、今の私の頭のなかにあるのは、ロイ・ネルソンをどのように倒すかということだけだ。それだけしか考えていない。そこから先のことを話そうというなら、ロイを倒してからだ」

 大会前にも関わらず、長時間にわたるインタビューに、真摯な態度で応じてくれたミルコ。試合中と同じように、ほとんど表情を変えることのなかった彼だが、最後にようやく笑みがこぼれた。

「なにもかもを話したよ。牧師に打ち明けるみたいにね。これがありのままの私だ」

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