「リラックス・ベイビー」ローズキングダム=乗峯栄一の「競馬巴投げ!」GI天皇賞・秋編
「あなたがイシノアラシを買ったのも、つまり愛の迷いだったんですね?」
[写真3]音無2騎、滑り込み出走のミッキードリーム(左)の方が怖い気が……(右はダノンヨーヨー 【写真:乗峯栄一】
「だめだ、あんたの××は」などと、少なくとも松本留美は決して指で弾いたりしないぞと、どんどん「花王・愛の劇場」に入っていく。
「あなたがイシノアラシを買ったのも、つまり愛の迷いだったんですね?」と松本留美はさらに聞く。「うむ」と曖昧な返事しか出来ない。
「あなたいまどこなの?」と留美はなおもこちらを心配する。「いま新宿百人町の公衆電話だ。これから北へ行かないといけない。……お前には、お前には苦労ばかりかけた、幸せになってくれ」
「え? 北? 北って、どこへ行くの? 外は雨なんじゃない?」
「うん」と答えようとしたところで、公衆電話が切れる。
青函連絡船を下りたところで、もう一度だけ電話を掛ける。
「あんた? あんたなのね? また電話してくれたのね。心配してたの。いまどこ、どこまで行ったの?」
「夜汽車に乗ってうずくまっていた。津軽海峡を越えるころには、小糠雨はすっかり吹雪になっていた」
「あ、オホーツクね、あんたの好きだったオホーツクなのね、流氷の軋む音が聞こえてくるわ」
「うむ」と竜崎勝は声にならない声を出す。ほんとは淀の京阪電車のすぐそばで、季節はすっかり春だけど、そこにオホーツクの流氷音が響いていて何が悪い!
日本馬たちよ、あのツッコみを外国人騎手にも言いなさい
あなたのこれは偶然なのね? 愛の迷いじゃないですか?
つまめば、その先、気になーるーの
歌いながら淀から家まで帰ったが、でもひょっとしたら、これが欧米騎手と日本騎手の違いなのかもしれない。
ゲートの中で欧米騎手は「リラックス ベイビー」と言って馬の首筋を叩き、日本騎手は「リラックス マイベイビー」と言って自分の股間を見る。二人(あるいは人馬)合同作業ではこの掛け声の違いが結果に表れる。
しかし対策はある。欧米騎手も日本馬に乗る。今回の天皇賞でもヨーロッパの競馬が暇になったからかどうなのか、天皇賞に合わせるように来日して、日本の有力馬に4人ものヨーロッパ騎手が乗る。そのヨーロツパ騎手が、いつものようにゲートの中で「リラックス、ベイビー」と馬の首筋を叩いたとき、日本馬が、ちょうどあの30年前の川崎堀之内の“指弾きネエちゃん”のように、顔振り向けて「リッラクスするのはお前の方やろ、外国人騎手」とツッコめばいい。面食らったままゲートが開いて、これなら十分勝負になる。30年前にぼくが泣いたあのツッコみを外国人騎手にも言いなさい、日本馬たち!
◎ローズキングダム、前走の勝ち方は復活を予見させるもの
[写真4]小牧太が絶好調宣言、土曜スワンSはリディルでいく! 【写真:乗峯栄一】
今週は“マイクロ一眼”とかいう、ちょっと高い目のカメラを買って、水曜朝イチの暗いうちから栗東トレセンで写真撮ったから、ほかにも色々あるよ。
[写真2]は金曜売りでは圧倒的1番人気になっているアーネストリー。鞍上はまだ肋骨骨折が痛いだろうに、素振りも見せずに追い切っていた佐藤哲三だ。でも、金曜オッズはいくら何でも、これは高過ぎじゃないか?
[写真3]は朝イチ、まだ暗いうちに追い切られたダノンヨーヨー(前)とミッキードリーム(後)の音無勢。特に滑り込みで出走となったミッキードリームの方は怖い気がするが。
[写真4]は土曜スワンS出走のリディルの追い切り直後の写真だ。下馬した小牧太に「どうだった?」と聞くと「完璧!」とひと言。ぼくの前を通って坂路を降りるとき、もう一度振り返ってまた「完璧!」と言い残して去った。ここまで言う小牧太は珍しい。エーシンフォワード、グランプリボス、ジョーカプチーノとGI馬がゾロゾロ出るので、そんなに人気はかぶらないだろう。土曜スワンSも橋口のリディルでいく。