2冠王・神村エリカが夢ののWBC王座へ前進

長谷川亮

現役ムエタイ世界王者に完敗を喫した大和 【t.SAKUMA】

 WBCムエタイ実行委員会が主催する「The Path to the World Champion−WBCムエタイ世界王者への道2011−」が2日、東京・後楽園ホールで開催された。

 ダブルメーンイベント第2試合には昨年のK−1 MAX63キロ級王者である大和哲也が登場。ノンタイトル戦ではあるものの、現役のWBCムエタイ世界スーパーフェザー級王者で、ラジャダムナン・スーパーフェザー級王者でもあるジョムトーン・チューワッタナと対戦した。
 これが3度目の来日となるジョムトーンだが、なんと前回は今年2月にプロボクシングでの来日。日本スーパーフェザー級7位の杉崎由夜と対戦すると、左ストレートで2度のダウンを奪い、最後は連打で3RTKO勝ちを収めている(ジョムトーンはサウスポー)。

現ムエタイ王者に歯が立たず

【t.SAKUMA】

 ボクシングよりムエタイの方が真の力を発揮できるというジョムトーンは、初回から最短距離で放たれるかの左ミドル、前蹴りを飛ばして大和を近づかせない。
 上体を振ってかく乱し、ミドルにはローを返して何とか懐に入らんとする大和だが、ジョムトーンは前蹴りをボディーと足に打ち分けて止め、大和の奥足に強烈な左ローを打ち込み効かせていく。
 そして3Rに入るとジョムトーンは圧力を増し、大和が左ローに体勢を崩すと、これまで蹴り中心の攻めであったのから得意の左ストレートを出し始め、これで再三大和をとらえる。
 4R、完全に距離感を掌握したジョムトーンは大和のパンチをバックステップとスウェーで空を切らせ、逆に左ストレート、左フックと大和にクリーンヒットを重ねる。
 4R後半と5R、大和は被弾しながらも強引に距離を詰め左ボディーを振るっていくのだが、ジョムトーンはこれを食らってもすぐに距離をあけ再びジャブ&前蹴り、そして左ミドル。
 結局大和は前蹴りとミドルで距離を取られ、ローで意識が下に落ちたところを左ストレートで打たれるという展開で、判定は3者50−47でジョムトーン。

 世界王者ジョムトーンを下し世界タイトル戦への大きなアピールとしたい大和だったが、その目論見を外される完敗となってしまった。

3本目のベルト奪取でRENA戦へ弾み

3本目のべるとを手に入れた神村は夢野WBC世界王座へ前進 【t.SAKUMA】

 ダブルメインイベントの敷かれた今大会で、もう1試合に登場したのはWPMFとWMCのミニフライ級世界2冠王・神村エリカ。さらなるベルト獲得を目指し、デニス・メラー(イギリス)とのWBCムエタイ女子インターナショナル・ライトフライ級王座決定戦に臨んだ。

 本国で“ダイナマイト”の異名を取る強打を持つデニスだが、神村は序盤の交錯のあと、左フックを当てこれでデニスの足をフラつかせる。デニスは首相撲に活路を見出さんと組みつきに来るが、神村はその腕の上からクロスさせる形で左フックをヒット。
 ここから神村は攻勢に入ると止まらず、左ミドルをデニスがキャッチしても構わす左ストレートを突き刺し、そこからの左右ストレートと左フックで滅多打ちにしてダウンを奪取。
 すでに勝負ありと思われる倒れ方のデニスだったが立ち上がり、ファイティングポーズを取って試合続行。しかし神村は左フックを連打で浴びせてスタンディングダウンへと追い込み、ここでレフェリーが試合をストップ。1R1分49秒の速攻KOで、神村が新たなベルトを腰にした。

 歓声や応援団に笑顔で手を振り応えた神村は「WBCは何としても獲りたいベルトだったので、KOで獲れてうれしいです。来月もタイトルマッチが決まってますが、自分が持ってるチャンスを全部つかんで女子で最強と言われるように頑張ります」とマイクであいさつ。
 この後WBCムエタイの役員から神村の世界タイトル挑戦を確約するコメントも聞かれ、神村は来月RISEで行われるRENAとの女子頂上対決に弾みをつけた。

 そのほか、大会の全試合結果は以下の通り。

■WBCムエタイ・ジャパン第2回大会「The Path to the World Champion−WBCムエタイ世界王者への道2011−」
10月2日 東京・後楽園ホール

<ダブルメインイベント第2試合 WBCムエタイ・スーパーファイト>
○ジョムトーン・チューワッタナ(タイ/WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王者)
(5R判定3−0)
大和哲也(大和/K−1 MAX −63kg 2010日本王者)
※3者50−47

<ダブルメインイベント第1試合 WBCムエタイ女子インターナショナル・ライトフライ級王座決定戦>
○神村エリカ(TARGET/Girls S−cup2011トーナメント王者)
(1R1分49秒 KO)
●デニス・メラー(イギリス/元WBCムエタイ女子インターナショナル・ミニフライ級王者)

<セミファイナル WBCムエタイ日本ライト級タイトルマッチ>
○羅紗陀(キング/WBCムエタイ世界ライト級13位)
(判定3−0)
●増田博正(スクランブル渋谷/WBCムエタイ世界ライト級14位、元全日本ライト級王者)
※48−47、49−47、49−46
※羅紗陀が初防衛に成功

<第5試合 WBCムエタイ日本フライ級タイトルマッチ>
○加藤竜二(橋本/MA日本&WPMF日本フライ級)
(5R判定3−0)
●大槻直輝(OGUNI)
※49−46、50−47、50−47
※加藤が新王者に輝く

<第4試合 WBCムエタイ日本スーパーライト級タイトルマッチ>
○高橋誠治(東京町田金子)
(5R判定2−0)
●菅原勇介(TARGET/J−NETWORKスーパーライト級王者)
※50−47、48−48、50−47
※高橋が防衛に成功

<第3試合 WBCムエタイ日本バンタム級王座決定戦>
○闘魔(新宿レフティー/WPMF日本&M−1&J−NETWORKスーパーフライ級王者)
(5R判定3−0)
●幸二郎(OGUNI/NJKFバンタム級2位)
※50−46、50−46、50−47
※闘魔が新王者に輝く

<第2試合 WBCムエタイ日本スーパーバンタム級王座決定戦>
○日下部竜也(OISHI/元シュートボクシング日本スーパーバンタム級王者)
(5R2分30秒 KO)
●新人(E.S.G/NJKFスーパーバンタム級1位)
※日下部が新王者に輝く

<第1試合 WBCムエタイ日本ライト級次期挑戦者決定戦>
○宮越慶二郎(拳粋会/NJKFライト級王者)
(5R判定2−1)
●黒田アキヒロ(フォルティス渋谷/J−NETWORKライト級王者)
※49−48(宮越)、50−47(宮越)、49−48(黒田)
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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