ネイマール依存症にかかっているブラジル代表=逆風の指揮官に未来はあるのか
1年前のような期待感はなくなりつつある
内容はもちろん、結果にも不満が残るメネーゼス監督への風当たりは日を追うごとに強まっている 【Bongarts/Getty Images】
しかし現在では、ドゥンガ時代を懐かしむ声まで出るほど、セレソン(ブラジル代表の愛称)に対して1年前のような期待感がなくなりつつある。内容はもちろんのこと、結果にも不満が噴出しているからだ。
7月にアルゼンチンで行われたコパ・アメリカ(南米選手権)では、まさかの準々決勝敗退。親善試合でも強豪国との対戦では思わしい結果を残せていない。8月のドイツ戦(親善試合)でも2−3と完全なる敗北に終わり、メネーゼスに対する風当たりは一層強くなった。
メネーゼス就任以降のセレソンの成績は、17試合で9勝5分け3敗とそれほど悪いものではない。問題は9勝している相手が強豪国ではないことだ。ブラジルにとって真の敵と一目置くアルゼンチン、フランス、オランダ、ドイツには勝てていないのである(編注:9月のアルゼンチン戦には勝利を収めたが、両チームともに国内組のみの編成で主力選手を欠いていた)。
もちろん、だからといって「即クビ!」という騒ぎにまでは発展していない。人気が下がっているのは間違いないが、メネーゼスが現在取り組んでいるのは「革新」という難しい仕事だ。時間が掛かるのはある意味仕方がないと言えるだろう。
チーム作りの真っ最中だということは、招集選手の数にも表れている。ドゥンガは4年間で85人の選手を招集してチームを作ったが、メネーゼスはわずか1年で既に60人を試している。国内や欧州の主要リーグは言うに及ばず、欧州の強豪リーグ以外のクラブでプレーする選手にも目を向けた。チームには、ロナウジーニョのような31歳のベテランもいれば、U−20W杯の優勝メンバー、ウクライナのクラブでプレーする選手もいる。
ロナウジーニョの帰還
こうした状況を打破するために、指揮官が白羽の矢を立てたのがロナウジーニョだった。現在行われているブラジル全国選手権で、フラメンゴは優勝争いをしており、ロナウジーニョも得点ランキングで2位タイにつけている(10月9日時点)。ロナウジーニョを呼んだのはすぐに結果を出すためのその場しのぎではなく、2014年W杯に向けてのプロジェクトを完成させるためには、彼の力が必要だと指揮官が感じたからだ。メネーゼスは信頼を込めてこう語っている。
「ロナウジーニョがすごいのはケガ知らずということだ。2014年のW杯を戦えるだけのコンディションを維持しており、若い選手たちをリードするキープレーヤーになってくれると思う。今、セレソンにはFKの名手が不足している。ロナウジーニョが加われば、FKのバリエーションも増え、得点力のアップにつながる。ロナウジーニョがこの先ずっとスタメンかどうかは、ほかの選手の調子も関係するため、今の時点では何とも言えない。だが、チームになくてはならない存在になるだろう」
名前だけで呼ばれたのではなく、フラメンゴで再びサッカーをする喜びを取り戻し、結果を出しているロナウジーニョの復帰には世論も歓迎ムードだ。