【NHKマイルカップ】川田騎手が明言「日本で一番強いマイルの馬になれる」、ジャンタルマンタル3歳最強マイラー襲名

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NHKマイルカップは2歳王者ジャンタルマンタルが快勝、3歳最強マイラーの座に就いた 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 春の3歳マイル王決定戦・NHKマイルカップが5月5日(日)、東京競馬場1600m芝で行われ、川田将雅騎手騎乗の2番人気ジャンタルマンタル(牡3=栗東・高野厩舎、父Palace Malice)が優勝。好位5番手の外追走から最後の直線で堂々抜け出す横綱相撲で3歳最強マイラーの座を手中に収めた。良馬場の勝ちタイムは1分32秒4。

 ジャンタルマンタルは今回の勝利でJRA通算6戦4勝、重賞は2023年GI朝日杯フューチュリティステークス、同GIIデイリー杯2歳ステークスに続く3勝目。騎乗した川田騎手は22年ダノンスコーピオン以来となるNHKマイルカップ2勝目、同馬を管理する高野友和調教師は同レース初勝利となった。

 なお、1番人気に支持されていたクリストフ・ルメール騎手騎乗のアスコリピチェーノ(牝3=美浦・黒岩厩舎)は最後の直線で進路が狭くなりながらも猛追して2馬身半差の2着。さらにクビ差の3着には戸崎圭太騎手騎乗の10番人気ロジリオン(牡3=美浦・古賀厩舎)が入った。

2歳チャンピオンにふさわしい競馬を

ウイニングラン後に笑顔で喜びを分かち合った川田騎手と厩舎スタッフ、2歳チャンピオンにふさわしい完勝劇だった 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 NHKマイルカップ史上初めてとなった2歳王者と2歳女王による頂上決戦。軍配が上がったのは無敗で朝日杯FSを制しJRA最優秀2歳牡馬に輝いたジャンタルマンタルだった。しかも、最優秀2歳牝馬アスコリピチェーノが直線でゴチャついたとはいえ、つけた着差は決定的とも言える2馬身半。2歳王者の称号に続き、文句なしの3歳最強マイラー襲名だった。

「2歳牝馬チャンピオンが出走することばかりが取り上げられていましたが、この馬自身も2歳のチャンピオンですから。なので、この馬にふさわしい競馬を、と思っていました」

 表彰式後の共同会見で語った川田騎手の言葉から感じられる2歳王者としての確固たるプライド。そして、単勝2番人気に甘んじたことへの反骨心。前評判では一歩下がる立場となったが、マイルなら誰にも負けない――そんな思いを抱いてのレースだったか。

 一方で、勝利まであと一歩と迫った激戦の皐月賞から中2週。このタイトなローテーションと2回の長距離輸送は馬にとって楽なはずはない。川田騎手が返し馬の感触を振り返って、こう話した。

「正直、やはり少ししんどかったです。前回の皐月賞で適性外の長い距離を全力で走り切っての中2週。また、その間で中山、東京と2往復ですから。その点も含めて疲れを抜くようにと過ごしてもらった2週間でしたが、返し馬でやはりしんどいなと感じました」

3、4コーナー地点で勝利確信「もう負けることはない」

直線豪快に突き抜けたジャンタルマンタル、ライバルのアスコリピチェーノを内に封じ込めた川田騎手の騎乗もさすがだった 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 120%万全の出来ではなかったかもしれない。それでもジャンタルマンタルは頭一つ飛び出すくらい絶好のスタートを切ると、課題だった折り合いにも進境を見せスムーズに鞍上と折り合う。これも皐月賞の2000m対策で講じた調整が身になっている成果の一つだろう。そして、レースの前半をリズム良く運べたことで返し馬で感じた不安は一掃、むしろ「これなら大丈夫」と、川田騎手には早くも勝利の予感が到来していたという。

「この馬が気持ち良く走りさえすればと思っていましたが、前半はあのような形で走ってくれたのでもう大丈夫だなと思いました。3、4コーナーでもう負けることはないと思っていましたし、あとはリズム良く、気持ち良く動いてくれる形にするだけでした」

 最後の直線で堂々と先頭に立ち、後続をグングンと突き放す走りはジョッキーが感じた通り“もう負けようがない”というパフォーマンス。しかし、素晴らしかったのはジャンタルマンタルの脚だけではなかったことは、レース映像を見たファンならば分かっているだろう。4コーナーから直線入り口、残り400m地点ほどまで内にアスコリピチェーノ、外にジャンタルマンタルと並走だったが、川田騎手がルメール騎手の外への進出を許さず封じ込めたことでアスコリピチェーノの行き場がなくなってしまった。この時点で勝負は決したと言っていい。いわばジャンタルマンタルの脚と川田騎手の好騎乗、この2つが見事に合わさった人馬一体の完全勝利だった。

自信深める川田騎手「古馬相手でも頂点を取れる」

「日本で一番強いマイルの馬になれる可能性がある」と川田騎手も太鼓判、国内マイル路線はジャンタルマンタル時代到来か 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 これで朝日杯FSに続き、マイルGIを2勝。しかも内容、着差ともに完ぺきな形での勝利だっただけに、川田騎手の中でのジャンタルマンタルに対するマイル路線での絶対的な自信はますます深まったようだ。

「体の成長を伴って心身ともに成長してくれれば、日本で一番強いマイルの馬になれる可能性があると思います。今回、この世代で頂点を取りましたが、古馬を相手にしてでも頂点を取れるレベルのポテンシャルを持っている馬だと思います」

 これまで世界レベルの力を持つ馬の背中に何度もまたがってきた名手だからこそ、この言葉の持つ意味は大きい。日本のマイル路線はジャンタルマンタル時代へと一気に移ったと言っていいのかもしれない。

やはりベストはマイル、調教師は中距離再挑戦に含みも

この後は休養に入るジャンタルマンタル、秋はさらにパワーアップして帰ってくることを期待したい 【photo by Kazuhiro Kuramoto】

 一方、ホースマンの夢である日本ダービーへの出走権利を持ちながらもNHKマイルカップを選択し、未練を一切残さず「だからこそ勝たなきゃいけない。ここで結果を出す、その一点でやってきました」と高野調教師。皐月賞から中2週の過程でつかんだGIタイトルは騎手、厩舎スタッフの努力はもちろん、「ジャンタルマンタルに関わってくれたみんなの勝利です」と笑顔を浮かべた。

 今後に関しては皐月賞、NHKマイルカップと全力投球だったためにいったん休養に入り、次走のターゲットはオーナー関係者とゆっくり協議していくとのことだ。ただ、距離に関しては「今のところメンタル的に1600mがピッタリであることは間違いない」と認めているものの、「馬の本質的にはもう少し長い距離でもこなすと思っています」とトレーナー。「距離を延ばしたところにもビッグレースはたくさんありますから、そこを狙っていくかどうかは馬の成長次第で考えていきたいと思います」と、再びの中距離挑戦にも含みを持たせている。

 そして高野調教師いわく、ジャンタルマンタルの一番の長所は「生まれ持った能力」。この底知れないポテンシャルのもと、新たなマイルの絶対王者として君臨していくのか、それとも中距離との2階級制覇を目指すのか――この秋、さらにその先の歩みが楽しみで仕方がない。(取材:森永淳洋)
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