ジュニア世代が露呈した、今後の女子バレーに迫る危機とは?

田中夕子

世代の区別が、日本バレーを脆弱化させる!?

ユース時代の自信と経験を打ち砕かれたが、その悔しさを糧に、これからどのような進化を遂げるのか!? 【田中夕子】

 さらに、もう1つの問題が露呈する。

 シニアがスピードを生かし、数カ所から同時に攻撃を仕掛けられるバレースタイルを構築しようとしている中、ジュニアはと言えば、高校からの延長で高いトスに合わせて打つオープンバレーを展開するのが現状だった。
 同じ「日本代表」であるにも関わらず、シニアとジュニアでこれだけスタイルが異なるのはなぜか。今大会、監督としてチームを指揮した東レアローズコーチ、福田康弘氏の見解はこうだ。

「Vリーグのチームスタッフや、高校教諭などほかにフィールドがある指導者が、ジュニアのトップに立つには限界があります。本当の意味で強化を図るならば、ジュニアとシニア、どちらも精通した指導者、強化体勢を整えることは絶対に必要です」

 現にドミニカはシニア代表のスタッフがジュニア代表のスタッフでもあり、3名の選手がシニアとジュニアを兼務した代表選手でもある。つまり「ドミニカのバレー」をシニア、ジュニアのカテゴリーに問わず、代表選手ならば誰もが理解して動いている。

 では日本はというと、ゼロではないとはいえ、シニアのスピードがジュニアに反映されているとは到底言い難い。シニアはシニア、ジュニアはジュニア、と別物で考えているうちは残念ながらドミニカ、はたまた優勝を遂げたイタリアとの差は埋まらない。
 そしてその差は、近い将来シニア代表により、大きな差となって現れるのは間違いない。
 
 “なぜ勝てないのか”と模索しながら10日間で8試合を戦った選手達は、11位決定戦でキューバを3−0(25−19、25−13、25−22)で下した後、全員で抱き合い涙した。その苦しみを、その涙の意味を生かさなければ、取り返しがつかないことになる。

 昨秋の世界選手権でシニア女子代表が3位という好成績を残した今だからこそ、着手すべき強化策があることを忘れてはならない。そのことを、今回の11位という成績に苦悩し、涙し、歓喜したジュニア世代の選手たちが身をもって示したのだから。

<了>

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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