ジュニア世代が露呈した、今後の女子バレーに迫る危機とは?

田中夕子

エースの堀川は、徹底的なマークをされ、今までのプレーでは通用しなくなってしまった 【田中夕子】

 7月22日から31日まで、ペルーにてバレーボール20歳以下を対象とした世界女子ジュニア選手権が開催された。出場した女子ジュニア日本代表チームは、ユース年代(18歳以下)から苦楽をともにしてきた仲間たち。2008年のアジアユース選手権では優勝、翌09年の世界ユース選手権でも5位入賞を果たすなど、常に結果を残してきたメンバーで構成されていた。

ユースでの自負を打ち砕かれる敗戦

 ユースの経験を経て、ジュニアでも――。選手たちの中には「ユースでも勝っているから大丈夫」とこれまでの経験で培った自信があった。しかし、フタを開けてみれば4チーム総当たりによる1次リーグは3戦全敗。経験も自信も、すべてが打ち砕かれた。

 中でも、シニア代表にも選出されたチームのエース、堀川真理(東レ)が受けたショックは大きかった。
「ユースのころと比べて、同じポジションの選手はものすごく打てるようになっているのに、私はどうやっても決まらない。もう、打ち方がわからなくなっちゃいました」

 優勝したアジアユースでMVPを獲得した堀川に対して、相手国は完ぺきな対策を練ってきた。相手が変化しているのに対し、かつての残像をもとに「いける」と堀川が真っ向勝負を挑んだ結果、試合を重ねるごとに日本の被ブロック数が加算されていく。顕著だったのは、2試合目の中国戦。同じアジア勢同士の対戦で、日本は1試合で29本という屈辱的なブロック数を中国に献上した。

曖昧な戦略では、強豪国には勝てない

 ただ結果ばかりを羅列すれば、堀川に非があるように思えるが、焦点はそこではない。なぜそれほどブロックをされたのか。1つ1つ紐(ひも)とけば、そこにはいくつもの理由があらわになる。

 たとえば、シニア代表がアイパッドを導入してまでこだわった、データのフィードバックのスピード化。相手チームの戦術、戦略だけでなく自チームの戦い方を明確にするためにも不可欠であるはずのデータが、ジュニア世代ではパソコンを通してではなくアナリストがメモ書きにしてトランシーバーでコーチに指示を送る。当然、そこにはボール支配率や効果率など、現在のバレーボール界に置いて不可欠とも言える数値は反映されていない。
 堀川の場合も、相手のブロックが高いという情報、どのコースが止められているという客観的な情報は得られても、それがどのコースならばどれほどのパーセンテージで止められているのか、抜けているのかという詳細は伝えられないため、最後は「アタッカー勝負」という曖昧な結論を招かざるを得ない。

 国内ならば、諸外国を相手にしても技術が成熟していないユース世代から、シニア代表候補にも選出されるほどの堀川の高さを生かしたスパイクで得点を加算することは可能かもしれないが、ドミニカ、中国などシニア代表も擁するジュニア世代では同じことが通用するはずはない。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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