女子短距離、急成長の市川華菜が秘めた可能性とは!? =陸上日本選手権・第2日

高野祐太

日本選手権100メートル初出場で2位に入った市川(写真)。福島に敗れたものの、その可能性は未知数だ 【photo by 原田亮太】

 陸上の日本選手権第2日が11日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われ、女子100メートル決勝では、北京五輪出場のエース・福島千里(北海道ハイテクAC)と20歳のニューヒロインの市川華菜(中京大3年)という、注目の女子短距離のガチンコ勝負が日本最高峰の舞台で実現した。

 結果は福島の貫禄勝ち。「世界選手権(8月・韓国)に向けて良いスタートが切れたと思う」と言う11秒39の会心の走りで2年連続3回目の優勝を果たした。
 市川は、得意の後半から福島を追いかけたが、差を詰めることができず、11秒61で2位のフィニッシュ。それでも「福島さんが思った通りの走りをして下さったので、楽しかったです。落ち着いていつもの走りができたと思う。集中して出られました」と、堂々たる言葉を語った。

後半の伸びを武器に世界を目指す

 敗れはしたが、市川は8月27日に開幕する世界選手権に向けて、要チェックの1人だ。今季序盤戦で快走したとたん、週刊誌の美人アスリート特集に登場するほどの整った顔立ちが魅力的なこともあるが、一級品のスピードを持った走りそのものにこそ、アスリートとしての輝きがある。

 最大の武器は、後半に伸びて行く爆発力だ。切れのあるダイナミックなストライドと、それを可能にする強靱(じん)なバネを内蔵している。市川は「アップのときなんかも“バネバネしい”感じがするときがあります。そういうときは調子がいいんです」とユニークな表現で自分の中にある感覚を語る。

 強さを裏付けるデータもある。ある専門家によると、市川は100メートル種目において60メートル地点からゴールまでのタイムが日本女子の中で過去最高との分析結果があるという。ただ、そのエネルギーが「上の方に飛び跳ねてしまうときがある」のが課題で、暴れ馬をうまく御(ぎょ)して、前方への推進力に変えられれば「理想の走りに近づける」のだ。

 こうして見ると、ピッチ型のスピードスターの福島とはかなりタイプが違う。“世界”との差が大きい女子短距離種目にあって、異なるアプローチで照準を合わせる2人目が出現したという観点からも、市川の存在意義は大きいと言える。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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