U−22日本、五輪予選へ真価を問われるオーストラリア戦

小澤一郎

特徴が違うクウェートとオーストラリア

選手に指示を与える関塚監督(左)。五輪予選前の最後の試合で、チームの真価が問われる 【小澤一郎】

 関塚隆監督率いるU−22日本代表は、1日に東北電力ビッグスワンスタジアムでU−22オーストラリア代表と国際親善試合を戦う。3月に日本で予定されていたU−22ウズベキスタン代表との親善試合が東日本大震災の影響で中止となったため、この日がロンドン五輪出場を目指す日本のホームでのお披露目試合となる(編注:ウズベキスタン戦は敵地で2試合を開催)。A代表のペルー戦と同じ会場で行うため、前座試合のような見方もあるかもしれないが、「前座」と呼ぶのは失礼なほどすでにJリーグで活躍しているタレントが多い五輪代表だ。

 関塚ジャパンにとって、6月はU−22クウェート代表とのロンドン五輪アジア2次予選(19日、23日)を控える重要な月。ホーム&アウエーで2試合があるとはいえ、2次予選はノックアウト方式で、負ければ即座に五輪出場への夢が絶たれることになる。そのクウェートとの大一番にどうつなげるかという意味でも、オーストラリアとの試合は重要なのだが、他方でクウェートとオーストラリアではチームの特徴もサッカーのスタイルも異なる。

 そのため個人的には、関塚監督がオーストラリア戦を前にしたトレーニングやミーティングで、選手にどこまでクウェートを意識させるのかが気になっていた。31日に行われた前日練習の様子や練習後の選手のコメントを聞く限り、今回は「対オーストラリア」に集中させているようだ。ミーティングでクウェートの話やビデオが出ることもなかったという。当たり前のことかもしれないが、目の前の試合に集中させる、無駄にクウェートの情報を与えて、今から選手を力ませないという2点において、関塚監督のチームマネジメントは評価しておきたい。

 オーストラリアについて、31日の練習前のミーティングでスカウティングビデオを見た選手たちからは口々に「つないでくるチーム」という印象が出ていた。大柄な選手がそろうオーストラリアだが、前線の1トップに長身FWを置く場合は、その選手をターゲットとして比較的早いタイミングでロングボールを入れてくる。ただし、最終ラインからの単純な放り込みやアーリークロスよりも一度中盤センターでためを作り、展開力のあるアンカーを経由させる形が多いようだ。

 関塚監督が守備面で一番強調していた点も、アンカーへのプレッシャー。ボランチの山村和也、山口螢がプレッシャーを掛けて自由に蹴らせないよう気をつけながらも、前線の永井謙佑、東慶悟がプレスバックしてはさみ込んだり、時にアンカーへの落としのインターセプトを狙う動きが求められていた。

不安材料は鈴木が離脱したセンターバック

 攻撃面では1トップの永井が中盤に引いてポストプレーをする機会が多く、センターバックが彼に食いついたギャップを使って、右サイドハーフの清武弘嗣がディフェンスラインの裏を狙う形が何度か見られた。マイボール時にはボランチの山口が最終ラインからのボールを引き出し、両サイドに展開する丁寧な組み立てが目立っていた。一方で、前線に圧倒的なスピードを持つ永井が控えるため、1本のパスでカウンター攻撃を仕掛けることもでき、オプションは多彩。特に、相手コーナーキックはピンチでありながら日本のチャンスと言えそうで、紅白戦でもGK権田修一のキャッチから素早く永井を狙うカウンターのイメージ構築ができていた。

 紅白戦を見る限り、この試合の予想スタメンはGK権田修一、DFは右から酒井宏樹、濱田水輝、村松大輔、酒井高徳、中盤ダブルボランチは山村和也と山口蛍、サイドハーフは右に清武弘嗣、左に原口元気、トップ下に東慶悟、1トップに永井謙佑という4−2−3−1。しかし権田も語るように、選手の中には「誰がスタメンで誰がサブというのはない」という。

 不安材料として挙げられるのは、人材難のセンターバック。最終ラインの中心として期待され、直前のJ1リーグの浦和戦では得点を奪うなど調子を上げていた鈴木大輔がケガで離脱したことで、いつも以上にセンターバックが注目されることになる。先発はチームでの出場機会が少ない濱田と、ボランチが本職の村松のコンビになりそうだが、濱田自身は「誰と組んでもやることは変わらない」と冷静。練習での村松の動きや濱田とのコンビネーションも特に問題はなかった。

 紅白戦では彼ら2人が大迫勇也に競り負ける場面もあったが、放り込まれた時に重要なのは、競り勝つこと以上にセカンドボールを拾うこと。その意識はチームに浸透しており、だからこそ、関塚監督も流通経済大ではセンターバックを務める山村をそのままボランチで起用するようだ。6人までの交代が認めれるとのことで(※GKの負傷があった場合には7名まで)、関塚監督の交代策や途中出場の選手のプレーも含めて、あくまでU−22日本代表というチームとして今日のオーストラリア戦をチェックしてみたい。

<了>
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント